天気予報で「高気圧に覆われて、あすは晴れるでしょう」とよく聞きます。
なぜ高気圧に覆われると晴れるのでしょうか。今一度復習していきましょう。
高気圧とは
高気圧とは、周囲よりも気圧が高く、閉じた等圧線で囲まれたところをいいます。そのため、気圧が○○hPa以上であれば高気圧というわけではありません。
周囲よりも気圧が高いものの、閉じた等圧線がかけないところは高圧部といいます。
高気圧の言葉の定義はこちら(コトバンクにリンク)
高気圧の風の仕組み
高気圧に覆われている所では、上空から地上に空気が移動する「下降気流」が発生して「晴れます」
…と言われても、なぜ高気圧になると風が下向きに吹くのでしょうか。そこから考えていきましょう。
高気圧のところは気圧が高い=空気がたくさんあって、重たくなっています。
一方、低気圧は気圧が低い=空気が少なく、軽くなっています。
ただ、こうなると、高気圧のところで言うと、空気は満員電車に乗っているようなものなので、自然に空いている空間(電車)に乗り換えようとします。
この空気が移動することで「風」が生じます。
高気圧から低気圧に向かって空気が移動することで風が生じますが、その風はどうなるでしょうか。
いろいろな方向から風は吹いてくるので、風がぶつかることになります。
では、その風はどこに向かうのか。
低気圧の空間でも高気圧の空間でも、私たちは地表にいるので、風は地表よりも下に向かっていくことができません。
低気圧のところに風が集まると、自然と風がぶつかって、その風は上昇するしかなくなります。
一方で、高気圧はどんどんと空気が移動していくので、それを補充しようとします。
そうなると、地表から風が吹いてくることはできませんので、上空から空気が移動してきます。
これが下降流となります。
なぜ下降流だと晴れるのか
では、なぜ下降流だと晴れるのでしょうか。
風が下向きに吹くということは、上空にあった雲や水滴も一緒に下降します。
同じ地点の上空と地表付近だと、地表付近のほうが気温が高いです。
雲粒である氷の粒は気温が高くなると、溶けて雨になり、その雨もさらに気温が高くなると水蒸気になって目に見えなくなります。
つまりは雲や水滴は蒸発して消えてなくなるため、晴れます。
気象予報士試験の学科一般ではそういった天気の「理屈」の理解を求められていきます。
日本付近の高気圧の種類
日本付近によくあらわれる高気圧は4つあります。それぞれ、暖かい空気でできていたり、冷たい空気でできていたり、気質が違います。高気圧に覆われるのか、その縁に当たるのか、その高気圧との距離などによって、天気もまったく変わります。
穏やかに腫れたり、灼熱の暑さになったり、寒くなったり、雪が降ったり。同じ高気圧でも現象はさまざまです。
日本付近の高気圧の種類:移動性高気圧、太平洋高気圧、オホーツク海高気圧、シベリア高気圧
移動性高気圧とは
「移動性高気圧」とは、そのものずばり「移動」する「高気圧」です
春と秋はこの「移動性の高気圧」が通過することが多くなります。この移動性高気圧と低気圧が交互に来ることで、「三寒四温」が起こったり、「春に3日の晴はなし」といったように、晴れの日、雨の日が交互に来て、周期的に変わりやすい天気になります。
移動性高気圧はなぜ移動するのか?
移動性高気圧が移動するのは「上空の風に流されているから」です。
日本付近は「偏西風」と呼ばれる上空に強い西風(方角的に西⇒東へと吹く風)が吹いています。
「西から天気は下り坂でしょう。」
「西から天気は回復して、晴れる所が多くなるでしょう。」とよく天気予報でも聞くように、日本周辺は天気は西から東へと変わっていくことがありますが、これはこの偏西風があるからです。
この風に流された高気圧や低気圧の影響で、西から東に向かって天気が変化しているのです。
移動性高気圧の時速は
移動性高気圧の時速はだいたい40キロ~50キロ(1時間に40キロ~50キロ移動する)です。
自動車がゆ~っくり進むスピードくらいでしょうか。
その時速で日本を横断している感じです。
(ちなみに、気象予報士試験では低気圧の移動速度を求める問題なども出題されます。)
移動性高気圧の大きさは平均すると1000kmくらいです。
1000kmは北海道~東京、もしくは東京~福岡くらいの大きさですので、かなり大きいですよね。
この1000kmの大きさの移動性高気圧が時速40キロ~50キロで進むので、移動性高気圧に覆われだすと1日くらいは晴れの天気が続くことになります。
太平洋高気圧とは
日本の南に広がっている「太平洋」に中心を持つように現れる気圧が高いところが「太平洋高気圧」です。
夏になるとこの「太平洋高気圧」が日本付近にも張り出してきます。この太平洋高気圧に覆われると「晴れて暑く」なります。
太平洋高気圧はほとんど移動することはありません。場所的に上空の風に流されることはないので。
ただ、大きくなったり、小さくなったりします。
移動性高気圧は大きさはほぼ一定の大きさ、一定の時速で移動するのですが、太平洋高気圧は同じ場所で大きくなったり、小さくなったりします。
また、台風はこの太平洋高気圧の縁に沿って移動するので、この太平洋高気圧の中心がどこにできるのか、大きさによって、日本に近づいたり上陸したりと進路が変わってきます。
シベリア海高気圧とは
ロシア連邦にある「シベリア」という地域に中心を持つ高気圧です。地形の影響によって、このシベリアに寒気が溜まりやすくなるため、冬場になるとよくあらわれる高気圧です。
日本から離れたシベリアにできる高気圧の影響の受けるの?と思われるかも知れません。
が、この低気圧、とても大きくて、一度現れるとがんこなほど居座るので、日本でもとても影響を受けます。
ちなみに、ロシアに出兵したナポレオンが寒さに苦しめられたという話がありますが、まさにそれがこのシベリア高気圧。
ナポレオンはこのシベリア高気圧の寒さを舐めて、さほど重装備でなく出兵したため、寒さに退散したそうです。
この高気圧の影響で、日本付近は「西高東低」の気圧配置になって、日本海側に雪が降りやすくなります。
オホーツク海高気圧とは
シベリア高気圧が冬にできる高気圧ですが、オホーツク海高気圧は春~夏場にできる高気圧です。日本の東海上にある「オホーツク海」に中心を持ちます。特徴としては「背が低い高気圧」です。
夏場なのにオホーツクの冷たい海で冷やされた冷たい空気でできてるので、北海道から東京にかけての太平洋側に冷たく湿った風が吹きつけます。
この高気圧は冷たい空気でできているのでとても重たくなっています。
なので、地表に近い下層部分にしか高気圧ができません。
ですので、東北地方にある高い山(せきりょう山脈)を超えることができないため、影響をうけるのはほとんど太平洋側になります。
東北や北海道ではこのオホーツク海高気圧から噴き出す冷たい風のことを「やませ」と呼んでいます。
時期的にこれから日照が必要な5月から7月にかけて現れやすいため、漁業や農業にとってはとてもやっかいな現象です。このオホーツク海高気圧からの冷たい風が長く続くと、コメ不足などにもなり、昔から米騒動などが起こっていました。
なお、位置的にも東京より西には影響が出ません。ですので、西日本の方は天気予報でもほとんど聞くことはないのですが、予報士試験では出題されることもありますので、現象としては勉強しておきましょう。