気象予報士アカデミー受講生のSさんより街中で見かけた「吊るし雲」の写真をいただきました。
ゴルフの打ちっぱなしの建物の上にUFOのように浮かんでいる雲。これが「吊るし雲」です。
おおこれは、吊るし雲ですな。ラッキーですね!
山の上ではなく、建造物の上にですか。珍しい。
住宅地に突如現れた吊るし雲。講師陣も驚いていますね!
そこで今回は吊るし雲について解説します。
吊るし雲とは
そもそも吊るし雲とは何でしょうか。
吊るし雲とは気流(風)が山などの高さがあるものを超える時に生じる、風の波(山岳波)によってできる雲の一種です。
山(風を上昇させるもの)があるとできる雲としては、笠雲と同じ部類の雲です。
高さがあるほど、風が上昇し、雲ができやすいので、富士山などをはじめとした高い山の周辺で多くみられますが、まれに、こうやって地上にある建物の上空に現れることもあります。
「吊るし雲」の名前の由来は、一度出現するとほとんど動かず、その場所で「吊るされている」ように見えるため「吊るし雲」と言われるようになったという説があります。
形がかなり珍しく、特徴的な雲ですので、UFOに間違われたり、ラピュタの世界のようだと言われたり、地震の前兆、天使の雲、恐怖の雲など様々に表現されています。
吊るし雲のでき方
それではどうやったらこんな形の雲ができるのでしょうか。
それには「風」と「高さがあるもの(山など)※以下「山」と表記します」が必要になります。
風が吹いてきて、山にぶつかると風は山を避けるように、上向き、横向き、下向きに分散します。
その「上向きの風」は上層に行くほどどんどんと冷やされるので雲になります。この雲は「笠雲」になります。
次に、山にぶつかって上昇した風は、山を乗り越えた後、さらに上昇するものや、下降するものに分かれます。
山にぶつかったせいで、波動が乱れるんですね。
その中でも、山を越えた後、いったん下降し、その再び上昇した風(空気)が冷やされてできる雲が「吊るし雲」になります。
何やら渦を巻いているように見える形ですが、これは渦を巻いているわけではありません。
高さによって分かれた層状の雲が重なって、このように渦を巻いているように見えるときがあります。
ですので、なんだかこの雲の下では、突風が吹いていたり、竜巻が発生していそうにも見えますが、地上にそういった現象をもたらす雲ではありません。
ただ、この吊るし雲が現れる=上空はかなり強い風が吹いていることになりますので、山に登る時にこの雲が現れていると注意が必要です。
また、吊るし雲を見たらこの後どんな天気になるでしょうか。
かさ雲や吊るし雲が現れると雨が降る?
「かさ雲や吊るし雲が出ると、雨が降り出す」と言われていますが、本当でしょうか。
はい、山に近くでは、かなりの確率で本当の時が多いです。
というのも、かさ雲や吊るし雲が現れる時の条件は、
・上空の風が強い時
・ある程度湿った空気が存在する
の2つがあるときで、こういう時は低気圧や台風、前線の接近などの場合が多くなりす。
特にかさ雲よりも吊るし雲のほうが湿った風が入った時にできやすいので、吊るし雲があったほうが雨の確率が高くなります。
いずれにしても、これらの雲は雨が降る前兆として現れることが多くあります。
これは国土交通省のWEBサイトから引用させていただきますが、富士山にかさ雲がかかった後の天気は24時間後までに雨になる確率は
春秋冬が70%
夏は約75%
さらにかさ雲と吊るし雲が同時に現れると80%~85%で雨が降るそうです!
かさ雲、吊るし雲が現れる時間帯は?
雲や霧によっては朝や、日中、夕方など、現れやすい時間帯があるものもありますが、かさ雲、吊るし雲は出やすい時間帯はあまりありません。朝焼けでピンク色の吊るし雲や、夕焼けでオレンジ色の吊るし雲、また、夜間に月明かりに照らされる吊るし雲もあります。
この吊るし雲の存在を知らないと、いきなりこんな雲が現れたら「何かの予兆か?!」と驚いてしまいますよね。
吊るし雲は地震の予兆?
吊るし雲が出ると「地震の予兆ですか?」ともよく聞かれます。
令和の現在ですが、今のところ、地震と雲の関連性を発表している公の機関はありません。
というのも、地震は日本の陸地だけでなく、海外の陸地や海上を含めると、大なり小なりいつでも起こっています。
また、吊るし雲のように変わった形をした雲も、大なり小なり、どこでも発見されています。
大きな地震が起こって、たまたま吊るし雲があった、竜が昇っているような雲があった、一面に真っ赤に輝く雲があった、となると「地震雲だ」と紐づけて考えられることが、昔からあります。
もともと、「地震雲」は、1948年に発生した福井地震を、鍵田忠三郎氏(元奈良市長など)が事前に地震雲で予知して的中させた、と発表されて以来、日本で「地震雲」という名前が広まったようです。
しかし、その後、気象庁は「地震雲は存在しない」という意見を紙面などでも発表していて、現在の気象庁のWEBサイト「地震雲はあるのですか?」のページにも、地震と地震雲の関連はないという内容が掲載されています。
ただ、今後、研究され続け、観測技術も向上するなど、もっともっといろいろなことがわかるようになってくると、100%違うと言えなくなるかもしれませんね?!
吊るし雲とレンズ雲との違いは?
これも良く聞かれますが、吊るし雲とレンズ雲は同じです!
レンズとは学術名「Lenticularis」でラテン語で「小さなヒラ豆」を意味するそうです。
ヒラ豆??
ちょっとイメージがしずらいので、Wikipediaに頼りますと、レンズはこのような形。※Wikipediaより「レンズページ」より引用
これが横向きに広がっているように見えるので「レンズ雲」でしょうか。
また、「レンズ雲」は世界気象機関(WMO)で表記されていますが、吊るし雲は日本だけで使われている言葉のようです。
吊るし雲は天使の雲?悪魔の雲?
たまに海外から届いた大規模な吊るし雲の写真を見るとびっくりすることありますよね。
特に、アメリカなどの大陸で発生する吊るし雲は、かなり大きいですし、形も大きな渦を巻いていて、まるでブラックホールに飲み込まれるかのような迫力で、映画のCGのようです。
ですので世界各国で「天使の雲」とも「悪魔の雲」とも言われています。
これは見た人が決めていいですよね!
吊るし雲を見たら、ラッキーなことがありそうだと思うのか、不吉なことがあると思うのか。
ラッキーなことがありそうだと思えるように今日も前向きにがんばりたいところです。