まず、乾燥断熱減率とは何かを抑えておく必要があります。
大気は、上昇や下降によって良くかき混ぜられた状態にあるので、断熱膨張・断熱圧縮が起こり、自然と上下に温度差ができます。そして、その高さによる温度の変化の割合が乾燥断熱減率です。
比較として、水の場合を考えると、上下に温度差がある水をかき混ぜると上下に均一な温度になります。この上下に均一な水の温度の状態(水温一定)が、大気の場合の乾燥断熱減率になります。
水の場合、この水温一定を基準として、水が上ほど冷たく下ほど暖かいと、対流が起き不安定な状態となります。逆に水が上ほど暖かく下ほど冷たいと対流が起きず安定な状態となります。
つまり、大気の場合の乾燥断熱減率と水の場合の水温一定は、同じ均一な状態を指すと言えます。
なので、大気が乾燥断熱減率より気温減率が大きい時は、水が上ほど冷たく下ほど暖かい時と同じような状態となり、対流が生じて不安定な状態となります。一方、大気が乾燥断熱減率より気温減率が小さい時は、水が上ほど暖かく下ほど冷たい時と同じ状態となり、対流が起きず安定な状態となります。
よって、乾燥断熱減率より気温減率が大きいと不安定、小さいと安定ということになります。
要するに、ここで述べられている「安定・不安定」は、未飽和な空気を前提とした時の、乾燥断熱減率を基準とした「安定・不安定」を表現したものに過ぎません。
一方、「絶対不安定・条件付き不安定・絶対安定」は、上昇下降する空気塊の温度と周りの大気の温度との関係や飽和・未飽和を考慮した場合の分類なので、区別して考える必要があります。