
ーここでわかることー
▶︎地形性巻雲とはどんな雲か。
▶︎地形性巻雲はどうやってできるのか。
▶︎なぜ風下側で発生するのか。
▶︎気象衛星画像やエマグラムでの見え方。
▶︎天気への影響はあるのか。
天気予報で聞くような雲の名前ではないですが、気象の勉強をしていたら目にしたことのある・・・あるいは聞いたことのある雲ですね。
名前の通り「巻雲」なのですが、なぜ山脈の風下側で発生するのか?など謎の雲でもあり
気象予報士試験で出題されたこともある雲です。
そこで今回は、この「地形性巻雲」について、わかりやすい簡単な言葉で解説していきます。
ぜひ最後まで楽しんで学んでいってください!
※この記事は当講座に所属する気象予報士が監修しております。
地形性巻雲とは
地形性巻雲とは、山脈の風下側に発生する停滞性の巻雲のこと。
地形性巻雲は山脈に沿って形成され、風下側に長く伸びます。
赤外画像
引用元:気象衛星センターホームページ
風上側は山脈に平行な形になり、ほとんど移動しないのが特徴的です。
上層の雲であり巻雲なので、気象衛星の赤外画像では白く見え、見つけやすいですね。
地形性巻雲発生のメカニズム
地形性巻雲は、強い風が山脈にぶつかって上昇することで発生します。
そもそも日本海側の空気が湿っていれば、山脈にぶつかった時に日本海側(山脈の風上側)に雲ができてしまいます。
この地形性巻雲ができるのは、風上側の空気が乾燥していて、そこそこ強い風が吹いている場合。
乾燥している空気なので、山脈にぶつかって強制的に上昇させられても雲になりません(全く雲ができないわけではない)が、ある程度の強い風なので、更に上昇して対流圏の高いところまで伝わって巻雲が発生するというわけです。
強い風がしばらく続いて発生する巻雲なので、同じ場所に留まって見えるため、「停滞性の巻雲」と表現されます。
また、地形性巻雲が発生する時の大気の状態は、「山頂付近から対流圏上部までほぼ安定成層で、風向もほぼ一定」の場合です。
もし・・・
風が弱かったら、山岳を越えることができず上昇気流も発生しにくいため、地形性巻雲は発生しません。
もし・・・
風が強すぎたら、乱気流が発生しやすくなり、地形性巻雲の形状が崩れてしまう可能性大です。
地形性巻雲は、なかなかの微妙な条件下で発生していることがわかりますね。
なぜ風下側に発生するのか
山脈にぶつかって上昇する風が、山頂の風下側でも更に上昇・上層に影響するほど強い上に、山頂から上層の成層が安定しているから。
風が山脈にぶつかった場合、山脈の風上側で雲が発生するのはイメージしやすいですね。
しかし地形性巻雲は逆。風下側に雲ができます。
なぜ風下側に発生するのかという理由を、一つ一つイメージしてみましょう。
- そこそこ乾燥した空気が山脈にぶつかって上昇している。→乾燥しているから風上側で雲は厚い雲は発生しない。
- 山脈にほぼ直角に、そこそこ強い風がぶつかっている。→風は山越えだけではなく、更に上昇する。(上層に伝わる。)
- 山頂から上層は安定な成層となっている。→安定な成層でなければ他の雲ができていたり、地形性巻雲の形を保てない。
- 上層がそこそこ湿っている。→上層にある程度の水蒸気があるから雲ができる。
地形性巻雲は、なぜ風下側にできるのか…
発生する条件を一つ一つ見ていくと、しっかり理解できますよね。
では次に、気象衛星画像で見られる特徴を説明します。
気象衛星画像・エマグラムでの特徴
- 赤外画像:白く表示され(上層雲なので温度が低い)、風上側が山脈と平行な直線状で、 風下側に長く伸びる。
動画ではほとんど移動しないのがわかる。 - 可視画像:白く見えるが、雲の下が透けて下層雲が見えることがある。(巻雲は薄いので、透けて見える。)
- エマグラム:上層(250~300hPaくらい)が湿っている。
地形に沿ってみられる雲なので、衛星画像で見ればわかりやすい雲です。
風上側に全く雲ができないわけではないのですが、風下側の方が衛星画像(赤外画像)で白く目立ちます。
ではこの雲は、天気へどのような影響があるのでしょう?
天気への影響
地形性巻雲は「巻雲」なので、直接雨雲になるわけではないのですが…
雲の近くの下層(真下ではない)に乱流が発生することがあり、波状雲がみられることもあります。
地形性巻雲が悪天候の前触れとなるかどうかは、他の要因がどのようになっているかで判断することになりますね。
まとめ
地形性巻雲とは、山脈の風下側に発生する停滞性の巻雲のこと。
地形性巻雲ができるのは以下のような条件の時。
- 乾燥したある程度強い風が吹いていること。
- 山脈に直角に風が吹いていること。
- 山頂の風下側で、山頂より上層に水蒸気があること。
- 山頂より上層が安定な成層であること。
山脈の風下側に雲ができるのは、風が強いため、山脈を超えて更に上層まで影響するため。
気象衛星の赤外画像では白く目立つので見つけやすく、可視画像では仮装が透けて見えることがある。
エマグラムでは上層が湿っている。
悪天候の前触れというわけではない。
気象予報士試験に地形性巻雲が登場したことがあります。
もちろん試験なので動画での確認はできませんので、他の天気図と合わせて雲画像から判断することになります。
特徴や背景となる条件を覚えておくと良いでしょう。
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