日々のニュースや天気予報で「気象予報士」が活躍する姿を目にすることがありますね。
彼らは専門知識を活かして天気に関する情報を提供し、私たちの生活に役立ててくれています。
しかし、近年、気象災害が激甚化・頻発化する中で、気象情報を「伝える」だけでなく、それを活用して「命を守る行動」へと繋げるための、より実践的なアドバイスが求められるようになってきました。
このような背景から注目されているのが、「気象防災アドバイザー」という存在です。
「気象予報士とは違うの?」「国家資格なの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、そんな気象防災アドバイザーについて、その役割や必要とされる背景、そして国家資格なのかどうかといった点に焦点を当てて詳しく解説していきます。
気象災害から身を守るための新たな担い手「気象防災アドバイザー」の実像に迫りましょう。
気象防災アドバイザーとは?

気象防災アドバイザーとは、国土交通大臣が委嘱する、防災の知見を兼ね備えた気象の専門家のこと。
気象防災アドバイザーは限られた時間の中で気象予報の解説から避難の判断までを一貫して扱うことができる人材であり、災害対策基本法第34条の規定に基づく「防災基本計画」に基づいて活動します。
気象防災アドバイザーの役割
気象防災アドバイザーは、平時と災害時の両面から、地方公共団体(都道府県や市町村など)の防災力向上を支援するという役割があります。
平時の役割

- 防災教育・普及啓発: 地域住民や自治体職員を対象に、気象災害に関する講演会や研修を実施し、防災意識の向上と知識の普及に努めます。
- 防災計画の策定・改善支援: 避難情報の発令基準や避難タイムライン(防災行動計画)などの防災計画の策定や改善について、専門的な視点から助言を行います。地域の地理的特性や過去の災害事例を踏まえた具体的なアドバイスが期待されます。
- 日々の気象解説: 自治体の職員に対して、日々の気象状況やその見通しについて解説し、災害への備えを促します。
災害時の役割

- 気象状況の解説と危機感の共有: 災害対策本部などに参画し、最新の気象情報や危険度分布(キキクルなど)を専門的に読み解き、首長や職員に対して、切迫した気象状況や災害発生の危機感を的確に伝えます。
- 避難情報発令への助言: 地域ごとの地形や地理的特性、河川水位、土砂災害の危険度などの情報を総合的に判断し、適切なタイミングでの避難情報の発令について首長に進言します。
- 災害対応への支援: 避難場所の開設・閉鎖の見通しや、避難行動に関する助言など、災害対応全般にわたる専門的な支援を行います。
気象防災アドバイザーは、気象の専門知識と防災の知見を融合させ、地方自治体と住民が気象災害から身を守るための実践的な支援を行う「地域に根差した気象防災のスペシャリスト」と言えるでしょう。
国家資格?・民間資格?

気象防災アドバイザーは国家資格でも民間資格でもない。
気象庁が実施する「気象防災アドバイザー育成研修」を修了した気象予報士や気象庁退職者などに、国土交通大臣が委嘱する(特定の仕事や役割を、外部の専門的な知識やスキルを持つ人に任せること)、いわば「防災の知見を兼ね備えた気象の専門家」です。
法律に基づく国家資格ではありませんが、災害対策基本法第34条の規定により政府が策定した「防災基本計画」に基づき活動することが期待されています。
似た名称で「気象予報士」がありますが、こちらは気象業務法に定められた国家資格です。
気象防災アドバイザーは、この気象予報士の資格を持つ人が、さらに気象庁の研修を受けることで委嘱されるものです。
気象防災アドバイザーになるには何をすれば良い?
気象防災アドバイザーになるには、3つのルートがある。
気象防災アドバイザーになるには、主に以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 1,気象予報士の資格を持ち、気象庁が実施する「気象防災アドバイザー育成研修」を修了する
- 2,気象庁退職者で、特定の防災業務に関する経験がある
- 3,上記1、2以外で、気象と防災に関する専門知識を有すると気象庁が認める者
この中で、多くの方が目指すのが「1. 気象予報士の資格を持ち、育成研修を修了する」ルートです。
ここでは、「1. 気象予報士の資格を持ち、育成研修を修了する」ルートを中心に説明します。
まず、国家資格である気象予報士の資格を取得する必要があります。
気象予報士試験は、気象業務に関する専門知識が問われる難易度の高い試験です。
気象予報士の資格をお持ちの方が、気象防災アドバイザーとして活動するために必要な知識や技能を習得するための研修です。
気象庁の職員ではなく、気象と防災に関する専門知識を有すると気象庁から認められていないなら、まずは気象予報士になる必要があります。
もしあなたが、すでに気象予報士なら、「気象防災アドバイザー育成研修」を受講しましょう。(▶︎「気象防災アドバイザー育成研修」については、別記事にて紹介します。)
災害対策に必要?
気象防災アドバイザーは災害対策に非常に必要とされている。

近年、線状降水帯による記録的な豪雨や、台風の大型化など、気象災害が激甚化・頻発化しています。このような状況において、地方公共団体(市町村)が迅速かつ適切な防災対応を行うためには、気象に関する専門的な知見が不可欠です。
気象防災アドバイザーが災害対策において必要とされる主な理由は以下の通りです。
理由1:専門的な気象情報の読み解きと解説
気象庁が発表する防災気象情報は多岐にわたり、専門的な知識がなければその意味を正確に理解し、地域の状況に照らし合わせて危険性を判断するのは困難です。
気象防災アドバイザーは、気象予報士の資格と、気象庁の研修で培った防災に関する知識を持つため、複雑な気象情報を自治体職員や首長に対し、分かりやすく、かつ地域の特性を踏まえて解説することができます。
理由2:避難情報発令の判断支援
避難情報の発令は、住民の命に関わる重要な判断です。
適切なタイミングで適切な対象地域に発令するためには、気象状況の推移予測、河川の水位、土砂災害の危険度などを総合的に判断する必要があります。
気象防災アドバイザーは、これらの情報をリアルタイムで読み解き、地形特性なども考慮に入れた上で、首長に対して避難情報発令に関する具体的な進言を行うことができます。
これは、限られた時間の中で迅速な意思決定を行う上で非常に大きな助けとなります。
理由3:平時からの防災力強化への貢献
災害はいつ発生するかわからないため、平時からの備えが重要です。気象防災アドバイザーは、以下の活動を通じて、地域の防災力向上に貢献します。
地方公共団体職員への研修: 防災気象情報の活用方法、ハザードマップの見方、避難情報の伝達方法など、職員の防災知識・技能の向上に寄与します。
地域住民への防災教育・啓発: 防災講演会や出前講座などを通じて、地域住民の防災意識を高め、自らの命を守る行動を促します。
防災計画の策定・改善への助言: 避難情報発令基準やタイムライン(防災行動計画)の策定・見直しに、専門的な視点から助言を行います。
理由4:地域に密着した支援
気象台も自治体への支援を行いますが、人員や距離の制約から、すべての自治体に対しきめ細やかな支援を常に行うことは困難です。
気象防災アドバイザーは、地方公共団体に任用されることで、より地域に密着した形で、平時からの関係構築や災害時の即応体制を強化することができます。
このように、気象防災アドバイザーは、専門知識と実践的な対応能力を兼ね備え、平時からの防災力強化と、災害時における迅速かつ適切な意思決定の両面で、地方公共団体の災害対策に不可欠な存在となっています。
今後 気象防災アドバイザーの活躍の場は広がるか?
今後、気象防災アドバイザーの活躍の場はさらに広がると考えられる。
その理由はいくつかあります。
- 気象災害の激甚化・頻発化:近年、線状降水帯による集中豪雨、台風の大型化、異常な高温など、気象災害がこれまで以上に激甚化し、その発生頻度も増しています。
これにより、各地方公共団体は、より高度で専門的な防災対応が求められるようになっています。
気象防災アドバイザーは、このニーズに応えられる貴重な人材です。 - 自治体の防災力向上へのニーズ
大規模な災害が発生するたびに、自治体の防災対応の課題が浮き彫りになります。
特に、気象情報の専門的な読み解きや、それに基づいた迅速な避難情報発令の判断は、多くの自治体にとって大きな課題です。
気象庁や国も、自治体の防災力強化のため、気象防災アドバイザーの活用を積極的に推進しています。
総務省の資料にも「自治体内部で防災気象情報の理解、避難情報発令判断の支援を担える人材として、気象防災アドバイザーの活用を促進」と明記されています。 - 平時からの防災活動の重要性:災害時の対応だけでなく、平時からの防災教育、防災計画の策定・見直し、避難訓練への参加など、継続的な防災活動の重要性が高まっています。
気象防災アドバイザーは、これらの平時の活動においても、その専門知識を活かして地域住民や職員への啓発・助言を行うことができます。 - 気象庁による推進体制の強化
気象庁は、気象防災アドバイザーの育成・委嘱を積極的に行っています。
2022年には「気象防災アドバイザー推進ネットワーク」を設立し、人材の確保・拡充、利活用拡大に係る取組を強化しています。
また、地方自治体が気象防災アドバイザーを任用しやすくするための補助予算の検討や、成功事例の周知なども進められています。 - 現在の偏在の解消
現状では、気象防災アドバイザーが任用されている自治体は一部に限られており、導入が進んでいない地域も多くあります。
気象庁は、この偏在を解消し、全国の自治体にアドバイザーが配置されることを目指しています。
今後 活躍するための課題とは
気象防災アドバイザーの活躍の場が広がるために、いくつかの課題もあります。
- 予算の確保
自治体が気象防災アドバイザーを任用する際の予算確保が大きな課題となっています。
国の補助制度の充実や、自治体の予算編成における優先順位付けが重要です。 - 役割の明確化と理解促進
自治体側が、気象防災アドバイザーに具体的に何を依頼できるのか、どのようなメリットがあるのかを十分に理解していないケースもあります。
気象庁やアドバイザー側からの積極的な情報提供と、活動事例の共有が求められます。 - 人材の確保
気象予報士の資格を持つ人材の中でも、育成研修を修了し、防災への強い意欲を持つ人材をいかに確保するかも課題です。
これらの課題を克服し、気象庁や地方公共団体、そしてアドバイザー自身が連携を強化することで、気象防災アドバイザーの活躍の場は間違いなく広がり、日本の防災力向上に大きく貢献していくと期待されます。
まとめ
- 気象防災アドバイザーとは、国土交通大臣が委嘱する、防災の知見を兼ね備えた気象の専門家のこと。
- 気象防災アドバイザーは国家資格でも民間資格ではないが、国土交通大臣が委嘱する「防災の知見を兼ね備えた気象の専門家」。
- 気象防災アドバイザーになるための要件は以下の3つ。
1,気象予報士の資格を持ち、気象庁が実施する「気象防災アドバイザー育成研修」を修了する
2,気象庁退職者で、特定の防災業務に関する経験がある
3,上記1、2以外で、気象と防災に関する専門知識を有すると気象庁が認める者 - 気象予報士が気象防災アドバイザーになるには、気象庁の「気象防災アドバイザー育成研修」を受講・修了する必要がある。
- 気象防災アドバイザーは災害対策に非常に必要とされている。
- 今後、気象防災アドバイザーの活躍の場はさらに広がると考えられる。
日々の天気予報や解説だけではなく、気象予報士の活躍の場が広がりつつあります。
平常時も災害時も、人命を守ために働ける仕事は本当に素敵ですね。
今後も気象防災アドバイザーに関する情報を発信していきますので、お楽しみに!
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