近年、気象災害の増加とともに、「気象防災アドバイザー」の重要性が高まっています。
人々の命と暮らしを守るこの専門職は、間違いなくやりがいがあるでしょう。
なんとなく「災害時に自治体で働くのかな?」「まさかボランティアではないだろう…」とは想像できるかもしれません。
でもその先はよくわからない、というのが本音ではないでしょうか。
そこでこの記事では、気象防災アドバイザーとして働くことの魅力はもちろん、気になる給料事情、そして具体的な働き方まで、あなたのキャリアプランを考える上で役立つ情報をお届けします。
【ここだけの話】気象防災アドバイザーの給料は…
雇用形態が様々なため、報酬・給料も多様。
気象防災アドバイザーの就業形態は、本当に様々です。
就職先が自治体なのか、民間なのかで仕事内容が異なるため、報酬・給料も違うでしょう。
また常勤なのか非常勤なのか、日給なのか時給なのかでも、全く異なる金額になります。
でも具体的にイメージできる額も知っておきたい!
というわけで、現在公開されている情報に基づいて、いくつかご紹介しましょう。
自治体からの委嘱の場合
非常勤の特別職として自治体から委嘱された場合、日額や時間額で報酬が定められることが多いです。
また、活動頻度によって年間の収入は大きく変わります。
- 5,000円・・・石岡市・非常勤(令和2年の情報)
- 1,500円/時間・・・阿賀野市(条例への記載は「防災気象アドバイザー」)(令和6年の情報)
- 1,728円/時間・・・野田市(令和6年の情報)
いずれも自治体で非常勤で働く場合の報酬です。
では他の働き方の場合、給料はどのくらいでしょう?
民間企業に所属の場合
民間企業(気象会社、コンサルティング会社、電力会社など)で勤務する場合、契約社員または正社員の給与体系となるでしょう。
厚生労働省の「職業情報提供サイト jobtag」によると、気象予報士の平均年収は約579万円とされています。
気象防災アドバイザーであれば給料UPという情報はありませんが、求人情報によると、データ分析やモデル開発などの知識・技能があれば、さらに多くの年収が見込めます。
独立・フリーランスの場合
講演、研修、コンサルティングなど、自身のスキルや人脈を活かして活動する場合、案件ごとの報酬や顧問契約など、収入は完全に個人の活動量や評価に依存します。
また、講師やコンサルタントとして活動する場合、講演料やアドバイザー契約として、1回あたり数万円、あるいは月額や年額で数十万円~数百万円という報酬例もあります(さんすい防災研究所やiRescueなどの情報)。これは、個人の実績や依頼内容、契約形態によって大きく変動します。
結論として、気象防災アドバイザーの給料はその働き方や業務内容、所属する組織によって非常に幅が広いと言えます。
気象防災アドバイザーの仕事内容
災害時に活躍する気象防災アドバイザーですが、その仕事内容をイメージし辛いですよね。
ここでは、自治体で採用された場合、災害時と災害が起きていない平常時に分けて、どのような仕事があるのかを紹介します。
平常時(事前準備フェーズ)
災害時の迅速かつ的確な対応のためには、平時からの備えが不可欠であり、気象防災アドバイザーはその中核を担う存在です。
主な業務内容は以下の通りです。(※必ず以下の仕事があるわけではありません。)
1. 地域防災計画・マニュアル等の策定・改善支援
- ハザードマップの作成・見直しへの助言
地域の地形、過去の災害履歴、気象特性などを踏まえ、浸水想定区域図や土砂災害警戒区域などのハザードマップの精度向上に貢献します。 - 避難情報発令基準の策定支援
どの程度の気象情報(降水量、河川水位など)で、どのタイミングで、どの範囲に避難情報を発令すべきか、科学的根拠に基づいた助言を行います。 - タイムライン(防災行動計画)の策定支援
災害発生前から避難完了までの各段階で、誰が、いつ、何をすべきかを明確にするタイムラインの作成をサポートします。 - 防災マニュアルの作成・改善
災害時の住民への情報伝達方法、避難所の運営方法など、より実践的なマニュアル作成に貢献します。
2. 自治体職員への研修・勉強会の実施
- 気象情報の読み解き方に関する講習
気象台が発表する警報・注意報、土壌雨量指数、流域雨量指数などの専門的な気象情報を、防災担当職員が正確に理解し、活用できるよう解説します。 - 防災気象情報に関する最新情報の提供
気象庁の新たな発表基準や情報の見方、最新の予測技術などについて、職員向けに情報共有や研修を行います。 - 災害対策本部運営訓練への協力
災害対策本部設置訓練において、気象に関する専門家として、状況判断や意思決定をサポートする役割を担います。
3. 地域住民への防災意識啓発・教育活動
- 防災講演会・ワークショップの開催
地域の特性や過去の災害事例を踏まえ、住民向けに気象災害の危険性や避難行動の重要性を分かりやすく伝えます。 - 防災訓練への参加・指導
避難訓練や水防訓練などに参加し、気象の視点から具体的なアドバイスや指導を行います。 - 広報啓発資料の作成協力
住民向けの防災パンフレットやウェブサイトの内容について、専門的な見地から監修や助言を行います。
4. 平常時の気象解説・情報収集・分析
- 日々の気象状況の監視と解説
異常気象の兆候がないか、平時でも地域の気象状況を継続的に監視し、必要に応じて自治体内部で解説を行います。 - 地域特有の気象現象の分析
局地的な豪雨や突風など、その地域特有の気象現象について、過去のデータや地形的要因を分析し、防災対策に役立てます。 - 気象観測機器の設置計画や保守に関する助言
より的確な気象情報を得るための観測体制について、専門的なアドバイスを行います。
5. 関係機関との連携強化
- 気象台との連携強化
地方気象台との「顔の見える関係」を構築し、平常時から密な情報交換や意見交換を行います。 - 消防、警察、建設部門など関係部署との連携
災害対応は多岐にわたるため、他の防災関係部署との連携を強化し、横断的な情報共有や協力体制を築きます。
このように、自治体に採用された気象防災アドバイザーは、災害発生時に司令塔となる首長や職員の判断を支えるだけでなく、平時から地域全体の防災力を底上げするための重要な役割を担っています。
災害時(応急対応フェーズ)
気象防災アドバイザーが自治体に採用された場合、災害発生時(災害の恐れがある緊急時、発災直後、そして災害が継続している期間)には、その専門性が最大限に活かされる、非常に重要な役割を担います。
平常時からの準備を踏まえ、以下の様な仕事が考えられます。
1. 災害対策本部での意思決定支援
- 最新の気象情報の提供・解説
気象台から発表される気象警報、注意報、土壌雨量指数、流域雨量指数、線状降水帯予測、河川水位情報、高潮情報などをリアルタイムで収集・分析し、自治体の災害対策本部幹部(首長や各部署の責任者)に、専門家として分かりやすく解説します。
特に、地域の地形や過去の災害履歴を踏まえた、より詳細で具体的なリスク評価を伝えます。 - 危機感の共有と進言
気象台の持つ危機感を自治体側に伝え、避難情報の発令や避難所の開設・閉鎖に関する適切なタイミングについて、首長や担当者に進言します。これは、地域防災計画や避難情報発令基準、タイムラインに基づいて行われます。 - 今後の気象見通しの提示
災害の進行状況に応じて、数時間後、半日後、1日後といった先の気象状況(雨量の推移、風向・風速の変化など)を予測し、二次災害の可能性や復旧作業への影響などを考慮した情報を提供します。 - 避難判断のサポート
住民が避難すべき状況であるか、避難経路の安全性、避難場所の確保など、気象状況と照らし合わせて具体的な避難判断をサポートします。
2. 関係機関との連携・情報共有
- 気象台とのホットライン対応
地方気象台との間に構築されている「顔の見える関係」を活かし、緊急時には直接電話連絡などで、より詳細な情報交換や状況認識のすり合わせを行います。 - 消防・警察・医療機関などへの情報提供
気象状況が、救助活動、交通規制、医療搬送などにどのような影響を与えるかを予測し、関係機関へ必要な情報を提供します。
3. 住民への情報発信支援
- 報道機関への情報提供支援
自治体が発表する防災情報(避難情報など)について、気象的な背景や意味合いを報道機関に分かりやすく説明するための助言を行います。 - SNSやウェブサイトを通じた情報発信
自治体のSNSやウェブサイトで発信する防災情報について、住民に伝わりやすい表現や、避難行動に繋がる具体的なアドバイスの掲載を監修・助言します。
4. 災害後の状況評価・分析
- 気象と被害の関連性分析
災害発生後、どのような気象現象が、どのような被害に繋がったのかを分析し、今後の防災対策に活かすためのデータ収集や評価に貢献します。 - 防災計画の見直しへの示唆
今回の災害対応における気象情報の活用状況や、避難行動の課題などを分析し、次回の地域防災計画やマニュアルの見直しに向けた提言を行います。
以上が災害時における気象防災アドバイザーの仕事内容ですが、全て一人でするのではなく、自治体職員と協力して担うことになるでしょう。
地域の人命を守る、とても重要な仕事ですね。
資格の取得方法と難易度
「気象防災アドバイザー」に興味はあるけれど、その資格の取得方法については、あまり知られていません。
一般的に気象庁退職者か、気象予報士であればチャンスはあります。
気象防災アドバイザーになる方法と難易度は、こちらの記事で詳しく紹介しています。↓
資格取得後のキャリアパス・活躍の場
気象防災アドバイザーの資格は、気象予報士としての専門知識に「防災」という重要な視点を加えるものであり、そのキャリアパスは多岐にわたります。
主なキャリアパスとしては、以下のものが考えられます。
地方公共団体(自治体)への就職・連携
気象防災アドバイザーの最も主要な役割の一つであり、資格取得の大きな目的でもあります。
- 会計年度任用職員等としての採用
多くの自治体では、気象防災アドバイザーを会計年度任用職員として採用し、防災課などに配置するケースが増えています。 - 非常勤・嘱託としての連携
常勤ではなく、災害時や防災訓練時、住民向けの講演会など、必要な時にスポットで業務を依頼されるケースもあります。フリーランスのような働き方も可能です。
気象庁も地方公共団体への気象防災アドバイザーの配置を推進しており、需要は高まっています。
ただし、公務員試験が必須でない場合でも、自治体の採用試験を突破する必要があることに留意が必要です。
民間企業での活躍
気象防災アドバイザーの知見は、多様な民間企業で高く評価されます。
- 気象予報会社
気象予報業務許可事業者である気象予報会社で、法人顧客(建設、運輸、農業、小売、イベントなど)へのより詳細な気象情報提供や、防災コンサルティング業務に携わります。 - コンサルティング会社
防災コンサルティングを専門とする企業や、リスクマネジメントを行う企業で、企業や自治体に対する防災計画の策定支援、BCP(事業継続計画)の策定、防災教育などを行います。 - 一般企業
気象の影響を受けやすい業界(電力、ガス、建設、流通、製造、観光など)において、社内リスクマネジメント担当として、気象リスク評価、事業継続計画策定、社員への防災教育などを行う場合があります。 - メディア関連
テレビ局、ラジオ局、新聞社、ウェブメディアなどで、お天気キャスターとして防災情報の解説を行ったり、防災関連コンテンツの企画・制作に携わったりします。 - IT・システム開発会社
気象データや防災情報を活用したシステム、アプリの開発において、専門的な知見を提供します。
独立・フリーランス
気象防災アドバイザーとしての専門性を活かし、個人で事業を立ち上げることも可能です。
- 防災コンサルタント
企業や自治体、個人宅などに対して、個別の防災コンサルティング(リスク診断、対策提案など)を行います。 - 講演・研修講師
学校、企業、地域団体などで、気象災害に関する講演や防災教育の研修を行います。 - 執筆活動・情報発信
防災に関する書籍の執筆、ウェブサイトやSNSでの情報発信、メディア出演などを通じて、啓発活動を行います。
独立には、専門知識に加え、営業力、企画力、セルフブランディングのスキルが求められます。
人脈構築も重要ですよ。
4. 教育・研究機関
気象学や防災に関する教育・研究に携わる道もあります。
- 大学・研究機関
気象学や防災科学の研究、学生への教育を行います。 - 専門学校
気象予報士や防災士を育成する専門学校で講師を務めることも考えられます。
キャリアパスを考える上でのポイント
気象防災アドバイザーの資格は、あくまで「防災の知見を持つ気象予報士」であることを証明するものです。実際の現場での経験を積むことで、より専門性を高め、キャリアの選択肢を広げることができます。
また、防災士など関連する資格と組み合わせることで、より幅広い業務に対応できるようになり、自身の市場価値を高められるでしょう。
気象学や防災に関する知識は常に更新されるため、継続的な学習と情報収集が不可欠ですし、コミュニケーション能力は非常に大切ですね。
自身の興味や強みに合わせて、最適なキャリアパスを模索していきましょう。
まとめ
気象防災アドバイザーの給料は、雇用形態が様々なため、報酬・給料も多様。
気象防災アドバイザーの仕事は、災害時だけじゃなく平常時もたくさんある!
気象防災アドバイザーになる方法と難易度は、こちらの記事で紹介▶︎気象防災アドバイザーの試験・研修・資格を得るまで
資格取得後は、自治体・民間・個人事業主など様々な活躍の場がある。
自分の市場価値を高めていくと良い!
以上のことをお伝えしました。
資格を取る前の、取ってからもずっと大変ではありますが、やりがいも大きい気象防災アドバイザー。
自分の知識が誰かの命を守るなんて、本当に素敵な働き方ですね。
「気象予報士の資格は取りたいけど、どのように勉強すれば良いのかわからない」
「テキストを買ってみたけれど、わからないことだらけ…」
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