受講生の方から質問です!

大気の安定・不安定について、いつも混乱してしまいます!

「大気の安定・不安定」とは、空気が上昇しやすいかどうかを示す状態のことです。
空を見上げれば、時に穏やかな青空が広がり、またある時には雨雲が湧き上がり、激しい雷雨に見舞われることもあります。
この空模様の違いには、「大気の安定」と「不安定」という状態が深く関わっているのをご存知でしょうか?
一見すると難しそうなこの言葉ですが、実は私たちの身の回りの天気予報や、自然現象を理解する上で非常に重要な鍵となる概念なのです。
この記事では、大気の安定と不安定とは一体何なのか、そしてどのように見分ければ良いのかを、難しい専門用語は極力使わず、スッキリと分かりやすく解説していきます。
これを読めば、これまで何となく見ていた空が、より深く理解できるようになるはずです。さあ、不思議な大気の世界を一緒に探求してみましょう!
※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。
「大気が安定」な状態とは
大気が安定な状態とは、空気が鉛直方向(上下方向)に動きにくい状態のこと。
安定な大気では、上昇した空気が周りより冷たくて重いため、元の高さに戻ろうとします。雲ができにくく、天気は穏やかです。
もっと詳しく説明すると…
空気のかたまり(空気塊)が持ち上げられても、その空気塊の温度が周囲の空気より低ければ、空気塊は重くて下降しようとします。

このように、元の位置に戻ろうとする力がはたらくため、空気の上昇は抑えられます。
この結果、
- 雲ができにくい
- 天気は晴れやすい
- 霧やもやが発生しやすい(地表付近で冷えた空気が滞留するため)
といった特徴があります。
特に「気温減率」(高さが1km上がるごとの気温の下がり方)が小さい場合(たとえば3℃/km以下)、大気は安定していると判断されます。
「大気が不安定」な状態とは
「大気が不安定」な状態とは、空気のかたまり(空気塊)が上昇したとき、周囲の空気よりも暖かく、その空気塊がどんどん上昇し続けようとする状態のこと。
空気のかたまり(空気塊)が上昇したとき、周囲の空気よりも暖かいと、その空気塊はどんどん上昇し続けようとします。

このように、上昇させた空気塊は、さらに上昇することになります。
このように大気が不安定なときの特徴は以下の通り。↓
- 空気が活発に上昇し、積乱雲が発達しやすい
- 雷雨・突風・ひょうなど、激しい気象現象が起きやすい
- 前線の通過時や日中の強い日射後などに起こりやすい
一言で言うと「天気が悪い」ですね。

ここからは、気象予報士試験の受験生にも役立つお話しですよ。
大気の安定・不安定を気温減率で解説
「気温減率」の意味がわかれば、大気の安定・不安定をより具体的に理解できます。
気温減率とは
高度が1km上がるごとに、気温がどれだけ下がるかを表したもので、単位は「℃/km」。
空気塊が周囲の空気と熱のやり取りをせずに上昇すると、気圧が下がるために膨張し、温度が下がります。逆に、下降すると圧縮されて温度が上がります。この温度変化の割合が気温の断熱減率です。
- 乾燥断熱減率: 飽和していない(水蒸気が凝結していない)空気塊が上昇・下降する際の温度変化率で、約10℃/km(100mあたり約1℃)です。
- 湿潤断熱減率: 飽和している(水蒸気が凝結している)空気塊が上昇・下降する際の温度変化率で、凝結によって潜熱が放出されるため、乾燥断熱減率よりも小さく、約5〜6℃/km(水蒸気の量や温度によって変化します)です。
「気温減率が大きい=上空ほど気温が急に下がる」ということ。
この気温減率が乾燥断熱減率 9.8℃/km(約10℃/km)を基準として、大気の安定性を判断するのが基本なので、覚えておきましょう。
絶対安定
周囲の空気の気温減率が、湿潤断熱減率よりも小さい場合です。

この状態では、たとえ強制的に持ち上げられたとしても、未飽和の空気塊は乾燥断熱減率で、飽和した空気塊は湿潤断熱減率で温度が下がるため、常に周囲の空気よりも低温になり、重くなって元の高度に戻ろうとします。
特徴: 大気が非常に安定しており、雲は発達しにくく、穏やかな天候が続きやすい。
条件付き不安定
周囲の空気の気温減率が、乾燥断熱減率よりも小さく、湿潤断熱減率よりも大きい場合です。

この状態では、未飽和の空気塊は安定ですが、ある高度まで上昇して飽和すると、湿潤断熱減率で温度が下がるため、周囲の空気よりも高温になり、さらに上昇しやすくなります。
特徴: 下層に湿った空気があり、強制的な上昇(地形による上昇や前線による上昇など)が起こると、積乱雲が発達し、大雨や雷雨などの激しい現象が発生する可能性がある。
絶対不安定
周囲の空気の気温減率が、乾燥断熱減率よりも大きい場合です。

この状態では、少し持ち上げられただけでも、未飽和の空気塊は乾燥断熱減率で、飽和した空気塊は湿潤断熱減率で温度が下がるものの、常に周囲の空気よりも高温になり、自発的にどんどん上昇していきます。
特徴: 大気が非常に不安定で、積乱雲が発達しやすく、激しい雨や雷雨、竜巻などの激しい気象現象が発生しやすい状態。
まとめ
大気の安定・不安定と天気の特徴を表にまとめました。
大気の安定度 | 周囲の気温減率 | 天気の特徴 |
---|---|---|
絶対安定 | < 湿潤断熱減率(約5〜6℃/km) | 雲発達しにくい、穏やかな天候 |
条件付き不安定 | 湿潤断熱減率 < 周囲の気温減率 < 乾燥断熱減率 | 下層に湿気があると、強制上昇で積乱雲発達、激しい現象の可能性あり |
絶対不安定 | > 乾燥断熱減率(約10℃/km) | 積乱雲発達しやすい、激しい雨、雷雨、竜巻などの可能性が高い |

このように、大気の安定・不安定は、上空の気温が高度とともにどれくらいの割合で下がっているか(気温減率)を知ることで判断できるのです。
次に天気予報で「上空の寒気が南下し、大気の状態が不安定になっています」と聞いたら、ここで学んだことを思い出して、天気を想像してみてくださいね。
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