【逆転層の基礎知識】種類と見分け方もわかりやすく!

ーここでわかることー
▶︎そもそも逆転層とはどんなものか
▶︎逆転層の種類は大きく分けて3つ!
▶︎3種の逆転層の見分け方(エマグラムでの特徴もわかりやすく解説)
▶︎逆転層ができている時、どんな天気になるのか

気象予報士試験でも度々出題される逆転層。

「気温が逆転しているから逆転層」まではすぐに覚えられるけど、でき方から種類を特定したり、エマグラムを見て判断するのはハードルが高いですよね。

ここでは、逆転層を基礎からわかりやすく、図解を交えて解説しています。

エマグラムでのわかりやすい特徴も学べるようになっているので、初めて学ぶ学生さんや、気象予報士を目指す方にも役立つ内容となっています。

ぜひ最後までご覧ください。

※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。

そもそも逆転層とは

逆転層とは、高度が上がるとともに、気温が上昇する気層のこと。

通常、対流圏の気温は、高度が上がるとともに下降します。

山を登って標高が高いところにいけば、山のふもとより涼しくなるものです。
高い山であれば、1年中雪が消えないこともあります。
私たちは経験からも、高いところほど気温が低くなるということを知っていますよね。

一方、逆転層では逆のことが起きています。

高いところほど気温が高い、または気温が低くならない・・・つまり通常と逆のことが起きているので「逆転層」というのです。

また、逆転層にはいくつか種類があり、わたしたちの暮らしに影響しています。
さぁ次は「逆転層の種類」について解説します!

逆転層の種類

逆転層は、成因からざっくり3つに分けることができます。

  • 接地逆転層
  • 沈降性逆転層(フェーン性逆転層も含む)
  • 前線性逆転層(移流逆転層)

ではそれぞれ説明していきます!

接地逆転層

接地逆転層とは、地面に接している逆転層のこと。

地面に接した逆転層が生まれる主な原因は、放射冷却です。
夜間、地面が冷えてその付近の空気も冷えることで発生し、高度が上がるにつれて気温が上がります。

夜明け直後に多く見られ、地形にもよりますが、比較的浅い逆転層です。

接地逆転層の特徴
  • 夜間〜早朝にかけて、地表面が冷えることにより形成されます。
  • 特に晴れて風の弱い夜に発生しやすいです。
  • 地表付近のごく浅い層に現れます(数十メートル程度のことが多い)。
  • 日の出後、地表が温められることで短時間で消滅します。

沈降性逆転層

沈降性逆転層とは、ある高度で一時的に気温が上昇または低下しにくくなる層のこと。

これは、上空の空気が下降(沈降)することによって断熱圧縮され、温度が上昇するために起こります。

比較的高い高度(数百メートルから数キロメートル)に現れ、一般的に水平方向にも鉛直方向にも大きなサイズの逆転層です。

下降流によって発生する逆転層なので、フェーン現象によっても発生します。(フェーン性逆転層)

沈降性逆転層の特徴
  • 高気圧下での下降気流によって形成されます。
  • 空気が高度を下げながら圧縮加熱されるため、上空に向かって気温が上がる層ができます。
  • 中~上層(1000〜3000m付近)に発生し、層が厚く、広範囲にわたるのが特徴です。
  • 空気の鉛直混合を妨げ、大気を非常に安定させます。
  • 汚染物質や水蒸気が滞留しやすくなり、視程が悪化することもあります。

前線性逆転層(移流性逆転層)

前線性逆転層は、冷たい空気の上に温かい空気が移流する境目に形成される逆転層のこと。
(移流性逆転層とも言う。)

暖気が冷気の上に乗る形で進行すると、前線面に沿って傾いた逆転層が形成されます。↓

温暖前線の断面イメージ

寒気の上に暖気が流れ、境目が逆転層になっています。

前線がなくても、地表付近に冷気が溜まっているところに、温かい空気が流れ込んだ場合も含みます。
(この場合、「移流性逆転層」の方がしっくりきますね。)

前線性逆転層の特徴
  • 温暖前線や停滞前線に伴って発生します。
  • 暖気が冷気の上に乗り上げる形で進むため、前線面に沿って気温が高度とともに上がる層(逆転層)ができます。
  • この逆転層は、前線面に沿って傾斜して存在します(水平ではなく傾いている)。
  • 特に温暖前線通過前の地上付近でよく見られます。

ここでちょっと気づいたでしょうか?

気温だけで見ると、前線性逆転層と沈降性逆転層はそっくりです。

そして、もし移流逆転層が地面に接していたら、接地逆転層に見えるような・・・

そんなわけで、次は逆転層の見分け方を説明しましょう!

3種の逆転層の見分け方

接地逆転層・沈降性逆転層・前線性逆転層(移流逆転層)は、それぞれ形成されるメカニズムが異なるため、複数の気象情報を総合的に判断する。

その逆転層が発生している時の天気や高度、時間の経過とともにどうなったのか、逆転層に伴って、どのような現象が起きたかがわかると、どの逆転層なのかがわかってきます。

逆転層が発生した時の天気

発生する際の天気から、どの逆転層なのか見分けられる場合があります。

逆転層天気
接地逆転層晴れて雲が少ない夜間〜早朝
風が弱い(静穏)
湿度が高いと霧が発生することもある
沈降性逆転層高気圧の中心付近で、晴れていて雲が少なく、風も弱い状態
下降気流が卓越している
前線性逆転層温暖前線や停滞前線が接近・通過している
低気圧の東側などで、広がる雲や降水が見られる状況
下層に冷たい空気、上層に暖かい空気が重なり、前線面に沿って逆転層が形成されます。

逆転層の発生した高度

どの逆転層か、発生している高度がヒントになります。

逆転層高度
接地逆転層地表付近(数十 m)
沈降性逆転層中~上層(1000〜3000 m)
山の風下・上層(数百〜数千 m)…フェーン性逆転層
前線性逆転層前線面に沿って変動(下層~上層)

時間変化

発生する時間帯、解消される時間帯も逆転層を見分けるヒントになります。

逆転層時間変化
接地逆転層日の出とともに解消されることが多い
沈降性逆転層日中よりも夜間に発達しやすい傾向がある
前線性逆転層前線の通過に伴って移動したり、消滅する

特徴的な現象

逆転層に伴う現象も、見分ける際のヒントになります。

逆転層特徴的な現象
接地逆転層霧が発生しやすい
沈降性逆転層雲の発達が抑えられる(沈降性逆転層では晴天が続く)
放射冷却による地表付近の冷え込みと組み合わさると、濃霧が発生しやすい
前線性逆転層層状の雲(高層雲、乱層雲など)を伴うことが多い

逆転層が形成される前に何があったのか、周囲の風は強いのか、収束しているのかなど、想像してみると意外とヒントは多いと思います。

とはいえ、もっと確実に逆転層の種類を分類したいですよね。

そんな時はエマグラムで見る湿度がポイントになります!

エマグラムから判断する

各逆転層ごとに、エマグラムでわかるポイントを紹介しましょう。

接地逆転層

放射冷却による接地逆転層の場合、逆転層内(地上付近)の相対湿度は高くなります。

引用元:成田航空地方気象台(空のしおり)

相対湿度が高くなる理由は、空気の移動や水蒸気の補給がない状態で、空気の温度のみが下がるためです。

空気の温度が下がると露点温度が下がり、霧ができます。
盆地にお住まいの方は、頻繁に体験されているはず。

沈降性逆転層

空気が下降して形成される沈降性逆転層の場合、逆転層から上層の露点温度は低く、乾燥しています。

引用元:気象庁「関東南海上の下層雲が上層雲の接近で急発達した事例解析

上空の冷たい空気が下降流によって下降させられたら、どうなるでしょう?

空気中の水蒸気の量はそのままで、空気の温度が上昇しますよね。
すると・・・空気の温度と露点温度の差が大きくなり、乾燥した空気となるわけです。

上に示した浜松のエマグラム(左から2つ目の1400の700hPa辺り)でも、逆転層から上層が乾燥しており、沈降性逆転層だとわかります。

前線性逆転層(移流逆転層)

冷たい空気の上に暖かい空気が流れ込む前線性逆転層の場合、逆転層から上層の空気が暖湿気であるため、相対湿度は高くなります。

引用元:気象庁「第2章 現業作業における総観場の把握と 局地気象解析について

上に示したアマグラムでは、ピンクのバンド部分が前線性逆転層です。
一般的に、1000mより上になることが多いようです。

気温と露点温度はほぼ同じですね。

また、風向が急激に変わっていて、前線らしい特徴が見て取れます。

逆転層が天気に及ぼす影響

逆転層が天気に及ぼす影響は、逆転層の種類によります。

説明するまでもないと思いますが、温暖前線による前線性逆転層が上空を通過する場合、徐々に天気が崩れていくことが想像できます。

逆に、広い範囲で高気圧に覆われ、放射冷却によって接地逆転層が発生した場合は、朝方は霧に覆われているかもしれません。
しかし日中には良い天気となり、暖かい日になるかもしれません。

他に、沈降性逆転層の場合、高気圧圏内で発生していれば、天気は良いかもしれません。
でも冬季の寒気の吹き出しによる沈降性逆転層の場合、逆転層の下には背の低い積乱雲があり、地上では雪が降っているかもしれません。

結局、逆転層は天気に影響を及ぼしますが、「晴天になることが多い」や「悪天になりがち」などの傾向はわからないということになりますね。

まとめ

逆転層とは、高度が上がるとともに、気温が上昇する気層のこと。

地上に接して発生することもあるし、対流圏の下層・中層問わず発生します。

逆転層は以下のように、大きく3つに分けることができる。

  1. 接地逆転層
  2. 沈降性逆転層(フェーン性逆転層も含む)
  3. 前線性逆転層(移流逆転層)
  1. 接地逆転層とは…地面に接している逆転層のこと。
  2. 沈降性逆転層とは…ある高度で一時的に気温が上昇または低下しにくくなる層のこと。
  3. 前線性逆転層とは…冷たい空気の上に温かい空気が移流する境目に形成される逆転層のこと。(移流性逆転層とも言う。)

上記の3種の逆転層は、天気や状況、エマグラムなどから見分ける方法がある。

逆転層が天気に及ぼす影響は、逆転層の種類による。

逆転層を暗記するのは簡単かもしれませんが、成因も様々なので、意外と奥が深いのです。

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