【スーパーセル/気象】発生のメカニズムもわかりやすく解説!

ーここでわかることー
▶︎スーパーセルとは何か?
▶︎日本でもスーパーセルは発生する?
▶︎スーパーセルの発生条件
▶︎スーパーセルが発生しやすい季節
▶︎スーパーセルが発生したら何が起きるか

スーパーセルって名前、ちょっとカッコよくて何かの必殺技かな?と思うような言葉ですね。
直訳すると特別なひと単位の何か…という意味であり、気象の分野では巨大な積乱雲のことです。

特別な積乱雲なので、「昨日も見たよ」というような身近な雲ではないですが、気象を学ぶ人もちょっと興味が湧いただけの人も、ぜひ知っておいていただきたい雲、スーパーセル。

この記事では、専門用語をできるだけ誰でもわかりやすい言葉に変えて、スーパーセルについて解説しています。

読み終えたらきっと誰かに話したくなる知識なので、ぜひ最後までご覧ください。

※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。

スーパーセルとは何か?

「スーパーセル」とは、とても大きな雲の塊のことです!
でもただの雲ではありません。

とても大きな積乱雲なのです。

具体的には・・・

スーパーセルとは

大きな積乱雲であるスーパーセルは、普通の積乱雲と違うところがざっくり3つあります。

①回転する上昇気流(メソサイクロン)を持っていること。
②上昇流と下降流が分かれているので、相殺されない。
③寿命が普通の積乱雲より長い(数時間)。

※メソサイクロンは、小さな低気圧のようなもの。

まず普通の積乱雲の場合、以下のような一生をたどります。↓

①普通の積乱雲は、たくさんの水蒸気と上向きの空気の流れがある場合に発生します。

②モコモコに発達した積乱雲の中では、雲の中はほとんど上向きに空気が流れ、ますます発達します。

③背が高くなった積乱雲の中では、氷の粒が増え、地表に向かって落ちてきます。(ひょう・あられ)

④氷の粒と一緒に冷たい空気が下向きの流れとなり、積乱雲を成長させていた上向きの流れを弱め、やがて消滅します。

一方、スーパーセルの場合↓

①スーパーセルも普通の積乱雲と同じように、たくさんの水蒸気と上向きの空気の流れがある場合に発生します。

②モコモコに発達した積乱雲の中では、雲の中はほとんど上向きに空気が流れ、ますます発達します。

③雲の中に渦を巻く上昇流(メソサイクロン)が発生し、小さな温帯低気圧のようになります。

④雲の中に渦を巻く上昇流(メソサイクロン)が継続し、雲はますます大きくなります。

⑤普通の積乱雲と同じように、雲の中でできた氷の粒(ひょう・あられ)が下向きの空気の流れを作りますが、上昇流と風の通り道を分けているため、それぞれの現象は相殺せず続きます。
(需要と供給のバランスが取れていて、この現象は長持ちします。)

⑥次第にメソサイクロンの構造が崩れ、寿命を迎えます。

積乱雲が大きくなるには、1にも2にも上昇流!
上向きの空気の流れが必要です。

スーパーセルは、上向きの空気の流れを持続させられる仕組みを持っているということですね。

では次は、スーパーセルの特徴をまとめます!

スーパーセルの特徴

スーパーセルの特徴です。↓

  1. とにかく大きく、成層圏までぶち抜くほど背が高くなることもある。
    (高度は10kmくらい。水平距離は10km〜50km、まれに100kmサイズもある。)
  2. 成層圏までぶち抜いていることがある。
  3. 通常の積乱雲の寿命は1時間程度だが、スーパーセルの寿命は数時間。
  4. 激しい気象現象(雷・竜巻・豪雨・雹・強風など)を伴う。

「水平方向に〇kmならスーパーセル」という定義はありませんが・・・

とにかく縦にも横にも大きい雲です。
縦(上下)に大きいということは、太陽の光を遮るので、不吉な予感がするような黒い雲。
水平方向にも大きいので、地平線の向こうまで雲が続いて見えます。

雷鳴が聞こえ、稲光も見え、ひんやりした風が吹いたかと思うと、突然あられやひょうが降り、突風、竜巻・・・

気づいたらすぐ頑丈な建物に避難してください。

日本でもスーパーセルは発生する?

スーパーセルはビッグサイズの現象だし、竜巻もアメリカのイメージ・・・
ちょっと日本ではなさそうじゃない?と思うかもしれません。

でも日本でも条件が揃えば、スーパーセル型の積乱雲は発生します!

日本での観測例

2012年5月6日、 茨城県筑西市,常総市,栃木県真岡市で相次いで竜巻が発生したのですが、これはスーパーセルによるものでした。

この日の気象条件は、日本の上空 5,500 m においてー21℃ 以下の強い寒気が流れ込んでおり、日本海に低気圧があったため、地上付近では東から暖かく湿った空気が流れ込んだのです。

さらに日射の影響で地上の気温が上昇。

東海地方から東北地方にかけて、大気の状態は非常に不安定となり・・・積乱雲が発生し、落雷や突風・降ひょう・竜巻を伴い、大きな被害が出たのです。

ここまで読んだあなたは、すでにスーパーセルの発生条件に気づいているかもしれませんね。
では次は、発生条件をまとめます!

スーパーセルの発生条件

具体的なスーパーセルの発生条件はこちら。↓

  • 大気の状態が不安定であること
  • 風の鉛直シア(風の強さや向きが高度によって変化する度合)が大きいこと
  • 暖かく湿った空気が流入し続けること
  • 上空に寒気がはいてくるなどのきっかけがあること

では一つずつ、もう少し詳しく説明します。

大気の状態が不安定

「大気の状態が不安定」とは、空気の対流が起きやすい状態であることです。

対流は、わかりやすく言うと、上下に動くこと。
地上付近にある暖かい空気が上方向へ移動したり、上空にある冷たい空気が下方向へ移動することです。

コンロで鍋の水を沸かす時、鍋底付近の水が温まって水面近くまで移動してきますよね。
同じようなことが空気でも起きるのですが、この時、積乱雲のような雲ができるのです。

風の鉛直シアが大きい

「鉛直」とは、上下方向のこと
「鉛直シア」とは、上下方向で変化が大きいこと

そして「風の鉛直シアが大きい」とは、「風の強さや向きが上下方向に変化が大きい」という意味です。

では風の鉛直シアが大きくなると、積乱雲の中にメソサイクロン(回転する上昇気流)が発生しやすくなり、スーパーセルの形成につながります。

暖湿気の流入(が続く)

暖かく湿った空気は、積乱雲のエネルギー源です。

この場合の暖かく湿った空気と言うのは、温度が何度からとか、湿度が何%からと言うことではありません。

上空に寒気が入ってくるなどのきっかけ

大気の状態が不安定で、風の鉛直シアーがあり、暖かく湿った空気が入ってきたとしても、絶対にスーパーセルができる!というわけではありません。

スーパーセルは、さまざまな要因やきっかけがあって発生します。

例えば、上空に寒気が入ってくるなどです。

「大気の状態が不安定」と同じじゃないかと思われるかもしれませんが、こちらは最後のきっかけのようなイメージです。

同じような大気の状態であっても、どこでもスーパーセルが発生するわけではないので、地形が要因になることもあります。

気象現象は、全ての条件が揃ったら絶対に発生するわけではない、複雑な現象なのですね。

スーパーセルが発生しやすい季節

スーパーセルが発生しやすい季節は春から夏にかけて。

秋や冬にはスーパーセルが発生しないということではなく、一年中発生する可能性はあるのですが、特に発生の条件が揃いやすいのが春から夏にかけてです。

その中でも特に発生しやすいのが、梅雨期と台風が発生したときです。
どちらも大気の状態が不安定になりやすく、暖かく湿った空気を多く含み、風の鉛直シアも大きくなりやすいので納得ですね。

スーパーセルが発生したら何が起きるか

スーパーセルが発生すると、以下のような様々な現象が起こる可能性があります。

  • 竜巻: スーパーセル内で発生する竜巻は、非常に強力で破壊的なものになる傾向があります。
  • 雹(ひょう): 大きな雹が降ることがあります。雹の大きさは、数cmから数十cmに達することもあります。
  • 豪雨: 非常に激しい雨が降り、洪水や土砂災害を引き起こすことがあります。
  • 強風: 突風やダウンバーストと呼ばれる、強烈な風が吹くことがあります。
  • 雷: 頻繁に激しい雷が鳴り、落雷による被害が発生する可能性があります。

日本でも建物への被害、農作物への被害、人が亡くなるような災害となる場合あります。

暗い大きな雲が見えた、雷鳴が聞こえた、急に冷たい風が吹いてきたら、もしかしたらスーパーセルが発生しようとしているのかもしれません。

頑丈な建物に避難して、身の安全を確保しましょう。
お天気アプリなどを活用するのも良いですよ。

まとめ

スーパーセルはとても大きな積乱雲であり、普通の積乱雲と次のような違いがある。
①回転する上昇気流(メソサイクロン)を持っていること。
②上昇流と下降流が分かれているので、相殺されない。
③寿命が普通の積乱雲より長い(数時間)。

スーパーセルの特徴は、ざっくり次の4つ。

  1. とにかく大きく、成層圏までぶち抜くほど背が高くなることもある。
    (高度は10kmくらい。水平距離は10km〜50km、まれに100kmサイズもある。)
  2. 成層圏までぶち抜いていることがある。
  3. 通常の積乱雲の寿命は1時間程度だが、スーパーセルの寿命は数時間。
  4. 激しい気象現象(雷・竜巻・豪雨・雹・強風など)を伴う。

日本でも発生することがあり、発生条件は

  • 大気の状態が不安定であること
  • 風の鉛直シア(風の強さや向きが高度によって変化する度合)が大きいこと
  • 暖かく湿った空気が流入し続けること
  • 上空に寒気がはいてくるなどのきっかけがあること

スーパーセルが発生しやすい季節は春から夏にかけて。

発生した場合、竜巻、雹(ひょう)、豪雨、強風、雷などに注意する。

激しい気象現象で、畏怖の気持ちを覚えるような大きな雲、スーパーセル。
とても興味深い雲ですが、怖い雲です。

ぜひ多くの方に知っていただいて、少しでも災害が減りますように。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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