
冷たい空気は密度が大きく、暖かい空気は密度が小さいですよね?
だから冬は温度の低いシベリアから季節風が吹くのですよね?
でも「上空では温度が高い方(南)から低い方(北)へ気圧傾度力が働く」と習いました。上空では気圧傾度力が逆になるのでしょうか???

一見逆になっているように感じますね。
でもしっかり学んでみると、ちゃんと気圧傾度力も理屈通りに働いて、風を生み出しているのです。
地上と上空で気温と気圧の関係が逆転する現象は、気象予報士試験において最も混乱しやすいテーマの一つです。
ここでは、なぜ寒いシベリアの空気の上空で低気圧になり、暖かいハワイの空気の上空で高気圧になるのか、その物理的な理由を解説します。
※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。
1. 地上付近の法則:密度がすべてを決める
地上付近の気圧は、その場所の空気の密度によって単純に決まります。
- 冷たい空気: 密度が高く、重い → 地上に居座り、高気圧を形成します。(例:冬季のシベリア高気圧)
- 暖かい空気: 密度が低く、軽い → 圧力が下がり、低気圧を形成します。(例:夏季の大陸性低気圧)
このため、地上の気圧傾度力は、常に高圧(寒冷)から低圧(温暖)へと向かいます。

夏季の大陸性低気圧って何ですか?

次で詳しく説明しますね!
夏季の大陸性低気圧とは
大陸性低気圧(熱的低気圧)は、海陸風を大陸スケールに拡張したものをイメージするとわかりやすいです。
これは、「地表面の加熱による空気の膨張と気圧の低下」が低気圧の直接的な原因です。
大陸性低気圧と海陸風の共通点
大陸性低気圧(熱的低気圧)と海陸風は、どちらも熱的なコントラスト(温度差)によって発生する現象です。
| 特徴 | 大陸性低気圧 (熱的低気圧) | 海陸風 |
|---|---|---|
| 発生原因 | 大陸が海洋より強く加熱される。 | 陸地が海面より強く加熱される。 |
| メカニズム | 暖められた空気柱が膨張し、密度が低下することで、地表付近の気圧が低下(低気圧化)する。 | 暖められた空気柱が膨張し、密度が低下することで、陸上で低圧となる。 |
| 規模 | 大陸規模(数千 km) | 局地的規模(数十 km) |
| 時間スケール | 季節的(夏季の数ヶ月間) | 日周期(昼と夜) |
「スケールの違い」が本質
海陸風は、一日の太陽によって海岸沿いの陸地だけが海洋よりも速く暖まることで、局地的な低気圧(海風)が数時間だけ形成される現象です。
一方、大陸性低気圧は、夏の太陽によって大陸全体が海洋よりも強く加熱されることで、大陸規模の巨大な低気圧(モンスーンの原動力となる)が数ヶ月にわたって形成される現象です。

メカニズムは同じ「熱的低気圧」ですが、時間と空間のスケールが大きく異なる、と理解すると分かりやすいですね。
補足:温帯低気圧との違い
大陸性低気圧は熱的な低気圧ですが、日本付近を通過する温帯低気圧は力学的・傾圧的な低気圧です。
- 大陸性低気圧(熱的): 空気の暖かさそのものが原因で、地表付近の低圧を生み出す。上空には弱い高圧があることが多い。
- 温帯低気圧(傾圧的): 南北の温度差(傾圧性)と上空のトラフの力学的な相互作用が原因で、発達する。
この熱的低気圧と温帯低気圧の違いを意識すると、気象の現象をより深く理解できます。
2. 上空の法則:空気柱の「背の高さ」がすべてを決める
上層( 500 hPa や 300 hPa 面など)の気圧は、その場所の地表から上層までの空気柱の高さ(背の高さ)によって決まります。上層の等圧面高度は、空気柱の「柱の頭」の高さを示すからです。
① 暖かい空気の柱(背が高い → 上層で高気圧)
- 暖かい空気は密度が低いため、膨張します。
- この膨張により、空気柱は背が高くなります。
- 結果として、ある程度の高さ(例:500 hPa)では、周囲の冷たい空気よりも高い位置に等圧面があり、高気圧を形成します。(例:太平洋高気圧の上層)

② 冷たい空気の柱(背が低い → 上層で低気圧)
- 冷たい空気は密度が高いため、収縮します。
- この収縮により、空気柱は背が低くなります。
- 結果として、ある程度の高さでは、周囲の暖かい空気よりも低い位置に等圧面があり、低気圧を形成します。(例:シベリア高気圧の上層や、極渦)
3. なぜこの逆転が重要なのか:偏西風(ジェット気流)の源
この地上と上空での気圧配置の「逆転」こそが、大気循環の要である偏西風(西風)を生み出す根源です。
- 上空の気圧傾度力: 上層では、暖かい空気(高気圧)から冷たい空気(低気圧)へ向かって気圧傾度力が働きます。
- 力の向き: 北半球の中緯度では、暖かい空気は南側に、冷たい空気は北側に位置します。したがって、南(高圧)から北(低圧)へ向かって気圧傾度力が作用します。
- 偏西風の誕生: この気圧傾度力とコリオリの力が釣り合うことで、上空では風が等圧線に沿って西から東へ(西風)と吹き続けます。

この南北の温度差が大きいほど、上空の気圧傾度力は強くなり、結果として偏西風(ジェット気流)も速くなります。

気圧傾度力と空気の温度がシーソーしているみたいですね!

地上と上空で力の優位性が入れ替わる現象を捉えた、良い例えですね。
このシーソーの概念は、特に上空の風を理解する上で役立ちます。
気圧傾度力と温度のシーソー
1. 地上(シーソーの支点付近)
地上の気圧傾度力は、空気の密度(温度)が最も強く支配します。
冷たい空気 → 重い → 高気圧 → 気圧傾度力は寒気から暖気へ。
2. 上空(シーソーの端)
上空の気圧傾度力は、空気柱の背の高さによって支配されます。ここでシーソーが逆転します。
- 暖かい空気 → 膨張して背が高い → 上層で高気圧
- 冷たい空気 → 収縮して背が低い → 上層で低気圧
したがって、上空の気圧傾度力は、高圧(暖気)から低圧(寒気)へ向かい、地上の向きとは逆になります。

最初に勉強した時は???となっても大丈夫。
何度も考え、自分でノートに書いてみればわかるようになります。
さいごに
地上と上空で、気温と気圧の関係が逆転するこの原理は、温帯低気圧の発達、寒波の南下、そして偏西風の強弱といった、天気予報の根幹を理解するための最も重要な土台です。
複雑に見える気象現象も、一つ一つ物理的なカラクリが分かれば、腑に落ちるはず。
「なぜそうなるのか?」という疑問を大切にし、現象の裏側にある力学的な因果関係を一つひとつ紐解いていくことこそが、難解な実技試験を突破する最大の鍵となります。
気象予報士試験の学習は、時として複雑で挫折しそうになるかもしれません。しかし、どうかご安心ください。あなたの持っている「真面目に原理を探求する姿勢」こそが、合格への確かな原動力です。

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