乳房雲(ちぶさくも)とは?発生の仕組み・見える条件・危険性・撮影のコツを徹底解説

乳房雲はどんな雲。メカニズムや危険性、地震との関連性

気象予報士アカデミー受講生のTさんより、夏の空に見つけた「乳房雲(ちぶさくも)」の写真をいただきました。

珍しくも 乳房雲 ちぶさぐも

貴重な雲の写真が撮れましたね!空一面に広がるもこもこした立体の雲。

これはかなり珍しい雲で、丸みをおびていて、乳房のように見える形をしていることから、この雲は「乳房雲(ちぶさぐも)」と呼ばれています。

このもこもこした立体的な雲の中から何かが生まれてきそうで、何かが起こりそうな予感も・・・


なぜこんな形の雲ができるのか、気になりますよね!
それでは早速、乳房雲(ちぶさぐも)とはどんな雲なのか、学んでいきましょう!

1.乳房雲(ちぶさぐも)とは

乳房雲は、雲の世界でも特に珍しい現象のひとつです。日常的に見られるわけではなく、特定の気象条件が揃ったときにのみ姿を現します。

乳房雲(ちぶさぐも)は、雲の底からぶら下がる、丸みをおびたこぶ状の雲のことです。

学術名はラテン語の「mamma(乳房)」にちなんでいます。

色は白色や灰色が多く、必ずほかの雲(巻雲、巻積雲、高積雲、高層雲、層積雲、積乱雲)とともに現れます。


特に高積雲、高層雲、積乱雲に伴って発生することが多く、大気の状態が不安定な時に見られるため、積乱雲が近づいてくるサインとして注意が必要です。

実際、Tさんがこの雲を撮影した後、土砂降りの雨になったそうです。

2.乳房雲(ちぶさぐも)の発生メカニズム

乳房雲は、雲の下層にできる袋状のくぼみが連続して形成された構造です。


一般的に雲は上昇気流によって作られますが、乳房雲の形成には上昇流と下降気流のバランスが大きく関わっています。

まず、上昇気流によって、積乱雲などが発生している状況ができます。
雲が発達して、雲の中の水滴がある程度の重さになると雨が降ります。

雨が降る仕組み

これがよく発生する雲ができて雨が降る仕組みです。
この時、雨が降るということは中にある水滴が落ちてくるので、雲の中には下降流が発生しています。
この下降流が上昇流よりも強くなっているため、雨が降ってきます。

これが乳房雲の場合、雲を発生させる上昇流と、水滴が落ちようとする下降流のバランスが絶妙に取れて、雲の下層で乱気流が発生して、下降流がくるくると回転する状況になっています。

珍しい雲 乳房雲ができる仕組み

このため、雲の底面(下層)が丸みを帯びた雲になります。
上昇流より下降流のほうが強くなると、どんどん乳房が垂れ下がったような形になりますので、乳房が垂れ下がった形になればなるほど、雨の降りだしが近い合図になります。

  1. 積乱雲や広がった層状雲の下層で、水滴を含んだ空気が下降
  2. 下降する空気が下層の暖かく湿った空気と混ざり、乱流が発生
  3. 雲の底面の一部が下方に引き延ばされ、袋状の突起となる

3. 乳房雲が現れやすい天気は?

乳房雲は、一年中どこでも見られるわけではなく、特定の天気や季節に現れやすい雲です。
覚えやすい例を挙げると、次のようなシーンが狙い目です。

  • 夏の晴れて暑い日の夕方に一時雨の予想がある時
    特に多く見られる時です。天気予報で「今日は大気の状態が不安定で、夕方に雷雨になる可能性がある」などの天気の場合、見られることがあります。
  • 台風が近づいているとき
    台風の外側に広がる雲の中に現れることがあります。ただ、台風接近時ですので、わざわざ見つけにいくのは控えましょう。
  • 寒冷前線が近づいているとき
    この時も冷たい空気が下層に流れ込み、大気が不安定になっていますので、現れやすいと言われています。
  • 空一面にもくもくとした形状の雲が広がっているとき
    上記のように特定の気象条件ではないにしても、湿度や風の条件がそろえば現れることがあります。一面に立体的な雲が浮かんでいる状況は大気の状態が不安定に近いので、現れることがあります。


4. 乳房雲の危険性は?

乳房雲(ちぶさぐも)そのものが直接危険をもたらすわけではありません。
しかし、発生する背景には大気の状態が不安定であるため、乳房雲を見たら、天気急変に注意が必要です

乳房雲が現れる周辺では以下のような現象が起きやすくなります。

  • 急に激しい雨が降り出す
  • 突風が吹く(ダウンバースト)
  • 雹が降る

乳房雲が出ている=必ず危険が迫っているとは限りません。
しかし、天気予報で「大気の状態が不安定である」と聞いた時や、台風が迫っている時などに見つけた時は、「これから荒れるかもというサインを空が送ってくれている」として受け止めるのが安全です。

安全のためにできること

  • 乳房雲を見たら、雷レーダーや雨雲レーダーを確認する
  • 強風や雷の予報が出ている場合は屋外活動を控える
  • 観測や撮影は安全が確保された場所から行う


5. 乳房雲を撮影したい時は?観測のポイントと珍しさ

乳房雲は空の撮影が好きな方にとってぜひとも見つけたい雲の一種です。
しかし、乳房雲は年間を通して、出現頻度は高くありません。

また、出現したとしてもだいたい1時間くらいで消えてしまうため、気象条件と運が重なって初めて出会える「レア雲」といえます。

  • 見やすい時間帯:夏の暑い日の夕方〜日没前後(斜光で立体感が強調)。
  • おすすめの観測場所:海岸、広い平野、山頂など空が開けた場所
  • 出現頻度:観測地域によって年数回〜数年に一度

6. 撮影のコツ

乳房雲の撮影時のポイントをプロのカメラマンに聞いてみました。

  1. 広角レンズで全体を収める
  2. 露出をややマイナスに補正し、陰影を強調
  3. 夕方の赤みが差す時間帯を狙う
  4. 雲のディテールを引き出すためISO感度は低めに設定

ちなみに、この乳房雲の写真は海外でも「嵐の時の空の芸術」として扱われ、アメリカ中西部などで多く出現します。
海外では竜巻との関連で注目される場合もあり、報道写真として使われることも多いようです。

7.乳房雲は地震雲?

乳房雲のような珍しい雲が現れていると「これは地震雲ですか?」「地震の予兆ですか?」と聞かれることが多くあります。

特に、夕方の西日のような強い日差しを浴びて、オレンジや赤色に染まる乳房雲を見つけると、芸術的でもありますが、少し怖さを感じることもあります。

しかし、今のところ「地震と雲の関連性」を発表している公の機関はありません。

というのも、地震は日本の陸地だけでなく、海外の陸地や海上を含めると、大なり小なりいつでも起こっています。

大きな地震が起こって、たまたま珍しい雲があると、「地震雲だ」と紐づけて考えられることも無理もないでしょう。

「地震雲」は、1948年に発生した福井地震を、鍵田忠三郎氏(元奈良市長など)が「事前に地震雲で予知して的中させた」と発表されたことから日本で広まった言葉だと言われています。

しかし、その後、気象庁は「地震雲は存在しない」という意見を紙面などでも発表していて、現在の気象庁のWEBサイト「地震雲はあるのですか?」のページに掲載されている内容も、地震と地震雲の関連はないとのことです。

8. 乳房雲のまとめと安全対策

乳房雲(ちぶさぐも)は、空が見せる芸術作品ともいえる美しい現象です。
しかし、その背景には強い大気の動きや温度差があるため、観測時は安全にも配慮することが大切です。

  • 見つけたら天気の急変に注意しよう
  • 安全が確保されてから観測や撮影を楽しもう

9. 珍しい雲関連リンク

こちらの吊るし雲もぜひとも見つけたい珍しい雲です。

ぜひ、空に乳房雲や吊るし雲が浮かんでいるのを見つけて写真を撮ったら、ぜひ気象予報士アカデミーの公式LINEXで送ってください!こちらのコーナーで紹介させていただきます!

    

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