
冷たい空気は密度が大きいから高気圧になるのはイメージできます。
でも、暖かい空気は密度が小さくなるのに高気圧になるのですか???

上から下方向へ力が働くせいで、高気圧になるのです。
「冷たい空気は重いから高気圧(寒冷高気圧)になるのは分かるけれど、温かい空気は軽いのに、なぜ高気圧(温暖高気圧)になるの?」という疑問。
これは非常に鋭い質問で、温暖高気圧(太平洋高気圧など)の立体的な構造を理解する鍵となります。
そもそも高気圧・低気圧は、地上の気圧は空気の密度ではなく、頭上にある空気の『総量』で決まります。
ここでは数式を使わず、初めて学ぶ人にもわかりやすく説明します。
※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。
高気圧とは何か?
高気圧とは、その周辺よりも気圧が高い領域のことです。
気圧は空気の重さによって生じる圧力であり、高気圧の中心付近では、上空から地表へ向かって空気が沈み込む「下降気流」が発生しています。
この下降気流によって、空気が沈み込む過程で雲ができにくくなるため、一般的に高気圧に覆われると晴天になりやすいのが特徴です。
高気圧は、その成因や構造によって大きく「寒冷高気圧」と「温暖高気圧」の2種類に分けられます。
冷たい高気圧(寒冷高気圧)ができる理由

冷たい高気圧の成因は、冷たい空気の「重さ」です。
寒冷高気圧は、主に冬の大陸上や高緯度地域で発達します。
その形成の秘密は、冷たい空気の密度。
空気は冷やされると収縮し、密度が増して重くなります。
この重く冷たい空気が地表付近に分厚く蓄積することで、周辺よりも高い気圧の領域が形成されます。
これが寒冷高気圧です。
冷たい高気圧の【構造】は背が低い
寒冷高気圧は、冷たい空気が地表付近に溜まってできているため、高さ(背丈)が低いのが特徴です。
そして上空にいくにつれて気圧の差が小さくなり、高気圧の勢力は弱まります。
典型的な例は、冬のシベリア高気圧です。
冬のシベリアでは、非常に冷たい空気が蓄積します。
そのため、地表付近では強い高気圧となりますが、天候を左右する上空の偏西風にはほとんど影響を与えません。
寒冷高気圧は勢力が強い間は安定した晴天をもたらしますが、移動性で勢力の衰えも比較的早い傾向があります。
暖かい高気圧(温暖高気圧)ができる理由

暖かい高気圧の成因は、大規模な「空気の沈降」です。
温暖高気圧は、主に中緯度(亜熱帯)の海洋上で発達します。
寒冷高気圧とは異なり、その形成は大規模な大気の流れ、特にハドレー循環と呼ばれる地球規模の循環と深く関わっているのです。
赤道付近で暖められて上昇した空気が、緯度約30度付近で冷やされ、上空から広範囲にわたってゆっくりと沈降(下降気流)することで形成されます。
この沈降する空気は、断熱圧縮によって暖められ、地表付近で暖かい高気圧として現れます。
暖かい高気圧の【構造】は背の高い
温暖高気圧は、上空の広い範囲で下降気流が起こっているため、高さ(背丈)が非常に高いのが特徴です。
地表だけでなく、高層(上空10km程度)でも強い高気圧として存在し、その勢力は大規模で安定しています。
日本の夏を支配する太平洋高気圧(北太平洋高気圧)は、この温暖高気圧の典型例です。
その勢力は長期にわたり安定し、猛暑をもたらします。
冷たい高気圧と暖かい高気圧の比較
両者の違いを理解する鍵は、「空気の層の厚さ」と「成因」にあります。
| 特徴 | 冷たい高気圧 | 暖かい高気圧 |
|---|---|---|
| 主な成因 | 冷却による冷たい空気の蓄積(重さ) | 上空の大規模な下降気流(ハドレー循環) |
| 構造 | 背が低い(地表付近で強い) | 背が高い(上空まで勢力が強い) |
| 中心の温度 | 低い(冷たい) | 高い(暖かい) |
| 出現場所 | 大陸上、高緯度地域(例:シベリア) | 亜熱帯の海洋上(例:太平洋) |
| 安定性 | 比較的弱い(移動性) | 非常に強い(停滞性) |
温暖高気圧の鍵:ハドレー循環と太平洋高気圧
温暖高気圧の代表例である太平洋高気圧は、地球の大規模な南北循環であるハドレー循環の一部として位置づけられます。
- 上昇: 赤道付近で暖められた空気が上昇します。
- 移動: 上昇した空気は上空を極に向かって移動します。
- 沈降: 緯度30度付近で冷やされ、乾燥した空気として地表に沈降します。
この沈降域(亜熱帯高圧帯)に位置するのが太平洋高気圧です。
暖かい空気が上から降りてくることで、高気圧内部は常に暖められ、勢力が維持されます。
断熱圧縮(だんねつあっしゅく)
空気の塊が下降すると、周囲の気圧が高い場所へ移動するため、圧縮されます。
この圧縮の際、外部との熱のやり取りがほとんどない(断熱的である)場合、空気の塊の内部エネルギーが増加し、気温が上昇します。これが断熱圧縮による昇温です。
- 温暖高気圧での発生: 太平洋高気圧のような温暖高気圧は、ハドレー循環の一部として、上空から大規模かつ広範囲にわたる下降気流が発生することで作られています。
- 昇温効果: この下降気流によって、空気は数キロメートルもの距離を下降しながら断熱的に圧縮され、大きく暖められます。この昇温効果によって、高気圧の中心部が周囲よりも高温になり、その勢力を維持・強化するのに貢献します。
高気圧維持のメカニズム
この「下降流による昇温」は、温暖高気圧が背の高い高気圧として安定する鍵となります。
- 暖かい空気は冷たい空気よりも密度が低く軽いため、高気圧の塊全体が膨張し、背が高くなります。
- 背が高くなることで、上空の広い範囲で気圧が高くなり、大規模な大気の流れ(偏西風)にも影響を及ぼし、高気圧の構造をより強固で安定したものにします。
したがって、「上空で冷やされ沈降を始めた空気が、下降する過程で断熱圧縮によって暖められ(昇温し)、結果として暖かい高気圧となる」という理解が最も正確です。
さいごに
太平洋高気圧の背の高さは、赤道から始まるハドレー循環という、地球規模のエネルギー輸送の結果でした。そして、その下降流による温かさが、私たちの夏の暮らしを形作っています。
一方、冬の厳しい寒さは、シベリア高気圧という冷気の貯蔵庫から吹き出す力の賜物です。
高気圧の構造の裏に隠された、地球規模の循環と熱力学の法則。この壮大な気象のダイナミクスを理解することで、日々の空模様がより豊かに見えてくるはずです。
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