みなさん、空に彩りをそえてくれる「彩雲(さいうん)」を見たことがありますか?
4月24日(水)スタートのフジテレビ系新ドラマ「ブルーモーメント」原作に登場します。今回はその「彩雲」のひみつに迫ります!

1.「彩雲」とは

彩雲(さいうん)はその名のとおり、鮮やかに空を彩る雲で、瑞雲(ずいうん)や慶雲(けいうん)、景雲(けいうん)、紫雲(しうん)とも呼ばれ、古くから吉兆の前触れ、しるしとされてきました。                                                  

確かにカラフルな彩雲に出会えたら「今日はなんだか良いことがありそう!」という気持ちになれるかも。

また、彩雲は吉祥模様(きっしょうもよう)として、古来よりきものや帯の柄にも取り入れられきました。

【吉祥模様】

めでたいこと、縁起のよいこと、幸福を願う心に合った文様のこと。本来は中国風のものであるが、日本風のものも加えられ、平安時代以来つづいている。瑞雲、松竹梅、鶴、亀、菊、蝶、あおい、ほうおうなどその数も多く、また、それ等を組合わせたり、丸文などに配置したものがある。

※出典:現代きもの用語辞典 本吉春三郎編 婦人画報社 より抜粋

そういえば、有名な龍神が守るボール(秘宝)を探す、冒険活劇アニメの主人公も、こんな金色の雲に乗っていたような…

科学技術の進んだ現代では、気象衛星をはじめ様々な観測機器や、スーパーコンピュータの登場によって、天気予報の精度は飛躍的に向上したと言われています。

しかし、このような技術ががまだ存在しなかった時代、農業や航海をはじめ、「空を読む」技術は日々の生活に欠かせないものであったのではないでしょうか。

人々は毎日空を見上げて、日々の安寧を祈っていたのかも知れませんね。

2.どうやって彩雲はできるの?

雲を構成しているのは、小さな小さな水滴(雲粒)たちで、微小水滴や微小氷晶(氷の結晶)のこと。

この雲粒(うんりゅう)の半径は約0.01mm前後と言われています。と言われても、はて?ですよね。

ちなみに、人間の髪の毛は半径約0.05mmなので、雲粒は髪の毛1本の太さよりも、小さな小さな粒なのですね。

この小さな粒たちがたくさん集まって、雲が構成されています。

でも、カラフルに輝く彩雲と違って、私たちがイメージする雲は一般的に白や灰色ですよね。

彩雲は雲そのものが光り輝いているようにみえますが、実は光の回析現象によるもの。「光の回析」とは、光の波(波長)が障害物にあたるとき、その背後に波が回り込む現象です。

簡単に言うと、雲粒に太陽の光(主に可視光線)が回り込み、その度合いが光の波長によって異なるため、おきている光学現象なのです。

光の波長について詳しく知りたい方はこちら

雲の縁は雲粒がどんどん蒸発していくのでサイズが小さく、中央部とくらべると雲粒の大きさが異なります。

・光の波長が長い(赤):障害物の背後に回り込む角度が大きくなる

・光の波長が短い(紫や青):障害物へのは回り込みが浅くなる

波長の長さの違いに加え、雲粒のサイズが不揃いのため、色の並び方が不規則になり、グラデーションのように見えるのです。

とは言っても、やはり不思議ですし、神秘的な現象ですよね。

3.「彩雲」をさがしてみよう!

ここまで読んでいただいたみなさん、そろそろ「彩雲」が見たくなってきたのではないでしょうか!?

とは言え「どこか空がきれいな場所に行かなければと見えないのじゃない?」と思われるかも知れません。そんな心配はご無用!

都会であっも、空が見える場所で条件さえ揃えば、簡単に出会うことができますよ。

水滴でできた雲(水雲)が、見かけ上太陽の近くにかかるとき、彩雲は現れてくれます。

主に

・巻積雲(けんせきうん)

・高積雲(こうせきうん)

・積雲(せきうん) など 

水滴でできた雲(水雲)で出会いやすいといえます。こんな雲たちをきっとどこかで、見たことがあるはず…

巻積雲:うろこ雲やいわし雲とも呼ばれますよね。雲の海原を泳ぐイワシたち

高積雲:ひつじ雲とも呼ばれ、秋の季語にもなっています。のんびり放牧中のひつじたちをパシャリ

積雲:もくもくとした姿から、わた雲とも。私のとっておきハート型積雲です

ちょっと理科の授業を思い出していただきたいのですが、水(液体)は0℃まで下がると氷(固体)になりますよね。

そんなの当たり前だよ~、と思われるかも知れませんが、あら不思議。氷点下でも凍らない水があるのです。

このような水を「過冷却水滴(かれいきゃくすいてき)」と呼びます。

また、頑固に凍らなかった過冷却水滴も、-40度を下回ると凍結してしまうと言われています。

たとえば、地上から高度約3,000m付近に浮かぶ雲があるとします。みなさまご存じ、富士山の標高3,776mよりは少し下の高さですね。

地上が気温15度だと仮定し、地上から、高度3,000mまで空気を持ち上げてみましょう。

1,000mでは約6.5度気温が下がるので、理論上は気温は-4.5度まで下がります。 

※国際標準大気 気温減率6.5度/1,000mで計算しています。

山中湖からの富士山:(写真左側)富士山の斜面を上昇して生まれた水雲たち。寒い朝だったなぁ…

氷点下にあるはずなのに、凍らずに水の状態で浮かんでいる雲もあるのですね。

このような雲を水雲と呼びますが、彩雲が見られるのは、主に薄く広がった水雲です。

雲の見分け方ポイント

・水雲:輪郭がくっきり白く、ある程度厚みがある

・氷晶雲(ひょうしょううん):氷の粒(氷晶)でできた雲で、白く透明感がある

※過冷却水滴と氷晶がまじった雲も存在します。また、氷晶雲でも彩雲が見られることもあるようです。

雲はなぜできるの?

雲が存在する高度は、季節や気圧配置によっても変わってきますが、太陽が巻積雲、高積雲、積雲の近くを見かけ上通過するときに出会える確率が高くなります。

おっと、太陽を直接見ると眼を痛める恐れがあり、大変危険です!雲や空を観察するときは必ずサングラスを着用してくださいね。

4.まとめ

ところで、新ドラマ「ブルーモーメント」で出口夏希さん演じるヒロイン「雲田 彩」という名前。

”彩雲”が入っていることに、気づかれたでしょうか。気がついた方、もう気象沼にハマってきているかも!?

空をはじめ、自然は時に牙をむき、猛威をふるいます。どんなに科学技術が進歩しても、人間が自然をコントロールすることは叶いません。

ドラマの原作「BLUE MOMENT」では「天気予報が存在する、たったひとつの意味ーそれは、命を守るため」というセリフが登場します。

ヒロインの名前に”彩雲”が入っているのは、穏やかに彩雲を眺められる日々が続いてほしい、という作者の願いなのかも知れませんね。

空を見ていると、一つとして同じ形の雲はありません。空を見上げていると、その時の大気の状態や湿り具合、風が吹いてくる方向や速さ、前線の接近など多くのメッセージを雲が伝えてくれます。

時にはこのように、風でたなびく彩雲も見られますよ

「彩雲」に出会うには、ちょっとしたコツとタイミングが必要ですが、たまにはのんびりと空を見上げてはいかがでしょうか。