光電離と光解離の違いとは

受講生の方からの質問です!

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光電離と光解離の違いについて、具体的に教えてください!

光電離と光解離、名前も似ていてややこしいですよね。

名前が似ているだけではありません。
光電離と光解離は主に紫外線と大気による反応で、熱が発生することも共通しています。

更に、どちらも度々気象予報士試験に出題される内容であり、受験生であれば曖昧なまま放置したくないですよね。

本記事では、この二つの現象の違いを初めて学ぶ人にもわかりやすく、今後は混乱することもないようしっかり覚えていただけるように解説しています。

分子やイオンなど肉眼では見えないものの話になるので、目一杯想像力を働かせて、一緒に学びましょう!

※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。

光電離とは

紫外線やX線などが原子に当たると、電子が飛び出してイオン化する現象のこと。

 例:酸素や窒素の原子が電子を失って陽イオンになる。
 ⇒ イオン化が起き、熱を放出します。


地球大気のずっと上の方、特に熱圏(対流圏よりずっと上の方にある層)と呼ばれる高度約90km以上の領域では、太陽からの強い紫外線(UV)やX線が降り注いでいます。
これらの高いエネルギーを持った光が、大気中に存在する原子や分子に衝突することで、光電離という現象が活発に起こります。

光電離の具体的なプロセス

大気上層で起きている光電離に大きく関わる紫外線は、0.1㎛(100nm)以下の波長域、特に真空紫外(VUV)や極端紫外(EUV)と呼ばれる領域です。

また、大気の上層で光電離に関わる主な原子・分子は以下の通り様々です。

  • 窒素分子 (N₂)
  • 酸素原子 (O)
  • 酸素分子 (O₂)
  • 一酸化窒素 (NO)
  • ヘリウム (He)
  • アルゴン (Ar)

これらの原子や分子が、特定の波長の紫外線やX線を吸収します。

すると、原子の最も外側にある電子がそのエネルギーを受け取り、原子や分子の束縛から解放されます。

この結果、陽イオン自由電子が生成されるのです。

電離層の形成

大気の上層で作られた大量のイオンと電子が存在する領域を、電離層(ionosphere)と呼びます。

この電離層は、高度によって電子密度が異なるいくつかの層(D層、E層、F層)に分類することができます。

  • D層 (高度約60-90km): 比較的エネルギーの低い紫外線やX線によって、一酸化窒素(NO)などが弱く電離しています。昼間は電子密度が高くなりますが、夜間は急速に減少します。短波の電波を吸収する性質があります。
  • E層 (高度約90-130km): より強い紫外線やX線によって、酸素分子(O₂)や窒素分子(N₂)などが電離しています。昼間は電子密度が高くなり、夜間もいくらか残ります。短波の電波を反射する性質があります。
  • 【※重要】F層 (高度約130km以上): 最も高い高度に位置し、強い紫外線によって酸素原子(O)などが効率よく電離しています。昼間はF1層とF2層に分裂することがあります。電子密度が最も高く、短波の電波を遠くまで反射するため、無線通信に重要な役割を果たします。

光電離と大気光

光電離によって生成されたイオンや電子は、その後、再結合と呼ばれるプロセスで再び中性の原子や分子に戻ることがあります。

この再結合の際に、エネルギーが光として放出されることがあります。これが大気光(※1)(airglow)と呼ばれる現象の一つです。
(※1大気光は、オーロラとは異なり、地球全体で見られる微弱な発光現象です。)

光解離とは

紫外線などの光(電磁波)によって、分子が原子に分かれる現象のこと

 例:酸素分子(O₂)が紫外線で酸素原子(O)に分かれる。
 ⇒ 分子がバラバラになって、熱も発生します。

ここで学ぶ光解離とは、0.1〜0.2㎛の紫外線にあたって分子(O2)が酸素原子(O)になることです。

対流圏のすぐ上にある成層圏、特に高度約15kmから50kmに位置するオゾン層では、太陽からの強い紫外線(UV)によって様々な光解離反応が起こっています。

これらの反応は、オゾン層の形成と維持、そして地球に到達する有害な紫外線の量を調節する上で非常に重要な役割を果たしています。

成層圏における主要な光解離反応

酸素分子(O₂)の光解離

波長約240nm以下の比較的エネルギーの高い紫外線(主にUVC)が酸素分子に吸収されると、酸素分子は2つの酸素原子(O)に分解されます。

この反応は、成層圏で酸素原子を生成する主要なプロセスであり、後述するオゾン生成の最初のステップとなります。

オゾン分子(O₃)の光解離

オゾン分子は、より広い範囲の紫外線(UVBおよびUVC)や可視光の一部を吸収し、酸素分子(O₂)と酸素原子(O)に分解されます。

この反応は、オゾンを破壊する重要なプロセスの一つです。

オゾン層の形成と維持における光解離の役割

成層圏におけるオゾン層は、以下の2つの主要な反応によって形成と維持のバランスが保たれています。これらの反応には、上記の酸素分子の光解離が深く関わっています。

オゾン生成:

酸素分子の光解離によって生成された酸素原子(O)は、周囲に豊富に存在する酸素分子(O₂)と衝突し、第三の分子(M:主に窒素分子N₂)の助けを借りて結合し、オゾン(O₃)を生成します。

反応式: O+O2​+M→O3​+M

第三の分子Mは、反応によって放出される過剰なエネルギーを受け取り、反応を安定化させる役割を果たします。

オゾン破壊:

上述のオゾン分子の光解離によってオゾンは分解されます。

また、生成した酸素原子(O)は、オゾン分子(O₃)と直接反応して2つの酸素分子(O₂)に戻ることでオゾンを破壊します。

反応式: O+O3​→2O2​

その他の光解離反応

オゾン層では、上記以外にも微量ながら様々な分子の光解離が起こっており、それが複雑な化学反応ネットワークを形成しています。

例えば、オゾン層を破壊するフロンの光解離です。

地上から放出されたフロン類は、非常に安定なため対流圏ではほとんど分解されません。

しかし成層圏に到達すると、強い紫外線によって塩素原子(Cl)などを放出します。

これらの塩素原子は、触媒としてオゾンを連鎖的に破壊する反応を引き起こし、オゾン層破壊の主要な原因となります。

例: CFCl3​+hν→CFCl2​+Cl Cl+O3​→ClO+O2​ ClO+O→Cl+O2​
(連鎖反応によりO₃ + O → 2O₂が進行)

成層圏における光解離の重要性

  • オゾン層の形成と維持: 酸素分子の光解離はオゾン生成の鍵となる最初のステップであり、オゾン層の存在を維持する上で不可欠です。
  • 有害な紫外線の吸収: オゾン分子の光解離と生成のサイクルは、太陽からの有害な紫外線(特にUVB)を効率的に吸収し、地上の生物を保護する役割を果たしています。光解離によって紫外線エネルギーが熱エネルギーに変換され、成層圏の温度構造にも影響を与えています。
  • オゾン層破壊のメカニズム: 人為的に放出されたフロン類などの物質の光解離は、オゾン層破壊の深刻な問題を引き起こしています。

このように、成層圏における光解離は、地球の環境を維持する上で非常に重要なプロセスとなっています。

では次で「光電離と光解離の基本的な違い」についてまとめます。

光電離と光解離の基本的な違いと共通点

光電離は、光(0.1㎛以下の紫外線)によって電子が飛び出し、イオンができる現象。
光解離は、光(0.1~0.2㎛の紫外線)によって分子が分解して、より小さな原子や分子になる現象。

光電離と光解離は、どちらも「光(紫外線など)によって物質が変化する現象」であり、共通点がありますが、仕組みや結果は異なります。

【共通点】

  • どちらも高エネルギーの光(紫外線など)が原因
  • どちらも熱(エネルギー)を放出する
  • 主に成層圏〜熱圏など、上空の大気でよく起こる現象

【違いと関係性】

項目光電離光解離
変化する対象原子(O、Nなど)分子(O₂など)
起こること原子が電子を失ってイオンになる分子が原子に分かれる
代表的な場所熱圏(電離層)成層圏(オゾン層)

光電離と光解離は、全く別に存在している反応ではなく、それぞれの反応に繋がりも存在します。

例えば「光解離でできた原子」が、さらに強い光を受けて「光電離」を起こす、という連続的な関係もあります。

まとめ

光電離と光解離は、どちらも紫外線と大気分子・原子による反応であり、共通点もありますが、様々な要素に違いがあります。

項目光電離(こうでんり)光解離(こうかいり)
現象の内容原子(例:O, N)が光で電子を失い、イオンになる分子(例:O₂)が光で分解されて原子になる
主な対象酸素原子(O)、窒素原子(N)などの原子酸素分子(O₂)、オゾン(O₃)などの分子
主な発生場所熱圏(電離層)成層圏(オゾン層)
使用される紫外線0.1μm以下(非常に短く強い紫外線)0.2〜0.32μm程度(比較的長い紫外線)
発生するもの陽イオンと電子(→電離層を形成)酸素原子(O)やオゾン(O₃)など
熱の発生ありあり

一度読んだだけでは完全に理解し、覚えることは難しいかもしれません。

でも何度も読んだり、ノートに自分なりの言葉でまとめると、理解と定着が一層深まるはずです。

これからも一緒に、楽しく気象を学びましょう!

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