傾度風が吹く理由とそのメカニズム/気象予報士試験攻略

ーここでわかることー
▶︎傾度風は「気圧傾度力」と「コリオリ力」と「遠心力」のバランスにより吹く
▶︎傾度風はどこで吹く風なのか
▶︎傾度風が吹くメカニズム
▶︎傾度風に関する気象現象

「傾度風」って普段生活していると全く聞くことはないし、理科で習った時もわかったような、わからないような・・・

気象学を学び始めて間もない頃も、専門用語が多くて名前を覚えるだけで精一杯ですし
「傾度風」の名前は覚えたものの、いざどんな風か考えてみると何だかあやふや…ということもあると思います。

そこで今回は「傾度風」について、文系さんにもわかりやすく解説していきます。

ここで文章だけではなく図解も見ながら学べば、理解も記憶も深まります。

さぁ肩の力を抜いて、楽しく学びましょう!

※この記事は、当講座に在籍する気象予報士が監修しております。

傾度風とは

傾度風とは、以下の3つの力のバランスにより吹く風のことをいいます。
◆気圧傾度力
◆コリオリ力
◆遠心力

では上記の「気圧傾度力」、「コリオリ力」、「遠心力」とは何か、それぞれ説明します。

気圧傾度力とは

気圧傾度力とは、気圧の高いところから低いところへ空気を押す力のことです。

空気でも水でも、多い方から少ない方に流れていくのは想像できますよね。
同じように空気も「高気圧側」から「低気圧側」へ移動し、私たちは「風」と感じるのです。

「気圧傾度」という言葉の意味は、気圧差の程度のこと。

例えば…A地点からB地点までの気圧差が①の時と②の時があったとすると

① AB間の気圧差 4hPa
② AB間の気圧差 8hPa

②の方が「気圧傾度が大きい」となります。

よって、この「気圧傾度」に「力」がついている「気圧傾度力」の意味は、「気圧の高いところから低いところへ空気を押し出す力」と言えるのです。

コリオリ力とは

コリオリの力とは、地球の自転による「見かけの力(慣性力)」です。

地球上で運動する物体(空気や水など)は、実際には力が加わっていないにもかかわらず、あたかも横方向に力を受けているかのように進む方向が曲がって見えます。
この見かけの力がコリオリ力です。

このコリオリの力は、北半球と南半球で違う向きではたらきます。

  • 北半球▶︎右に曲がるように力がはたらく。
  • 南半球▶︎左に曲がるように力がはたらく。
  • 赤道付近▶︎はたらかない。

また、緯度によっても、運動する物体の速度によっても大きさが変わる力なのです。

北極や南極が近いほど強くはたらくし、気圧傾度力が強いほどコリオリ力も大きくなります。

▶︎もっとコリオリ力について知りたい!「コリオリ力をわかりやすく解説!見かけの力とは?」

遠心力とは

遠心力とは、円運動をする物体が、円の中心から外側へ向かうように感じる見かけの力のことです。

遠心力は身近な力なので、今すぐ体験することができます。

洗濯機の脱水機能は、遠心力を使って洗濯物の中の水分を飛ばしていますし
車に乗っていてカーブするときに、外側に体を持っていかれように感じますよね。

陸上競技のハンマー投げも、遠心力を使って遠くにハンマーを投げています。

また遠心力の特徴として、次の3つが挙げられます。

  • 円運動する物体が重いほど、遠心力も大きくなる。
  • 円運動の速度が速いほど、遠心力も大きくなる。
  • 円運動する半径が大きいほど、遠心力も大きくなる。

傾度風はどこで吹く?

傾度風は、地上などの摩擦の影響はほとんど受けない高いところ・・・高層で吹きます。
簡単にいうと「空の高いところで吹く風」です。

傾度風を構成するのは、「気圧傾度力」、「コリオリ力」、「遠心力」でしたね。

「気圧傾度力」、「コリオリ力」、「遠心力」で構成されているということは、摩擦力が加わる地表面近くではないところ。

つまり、空のやや高いところ(自由大気)で吹きます。

傾度風はどんな条件で吹く?

傾度風は摩擦力がなく、等圧線が曲線を描いている条件下で吹きます。

傾度風を構成する3要素が揃うことが条件になるので、気圧傾度があり、等圧線が曲がっているところで、赤道ではないところで吹くと考えてください。

ただし、赤道付近では「絶対に傾度風が吹かない」というわけではないです。

傾度風が吹くメカニズム

傾度風は、以下の①②③の力が釣り合うことにより吹く。
①気圧傾度力が発生
②地球の自転によりコリオリ力が加わり
③風の円運動により遠心力が発生

また③の円運動がどちら向きの運動になるかによって、①②③の力の釣り合う形が変わります。

イメージしやすいように、図にしてみました。(北半球の場合)

低気圧性の円運動
高気圧性の円運動

コリオリ力は見かけの力なので、風の強さを決めるのは「気圧傾度力」と「遠心力」になります。

ですから、等圧線の曲がる向き(どちら向きの円運動か)によって、傾度風の強弱に影響が出るのです。

傾度風に関連する気象現象

ここでは、実際に傾度風が関連する気象現象について解説します。

具体例を知れば、もっと傾度風をイメージしやすくなりますよ。

台風と傾度風の関係

台風は中心に向かって急激に気圧が下がっている低気圧です。

急激に気圧が下がるということは、気圧傾度力が強いことを意味し、発生する傾度風も大変強くなります。

高気圧・低気圧の影響

  • 台風ではない温帯低気圧でも、高気圧でも、傾度風は吹いています。

低気圧の場合は、中心に向かって反時計回りに傾度風が吹き込み、雨雲を作ります。

高気圧の場合は、中心から外側に時計回りに吹き出し、晴天となることが多いです。

まとめ

傾度風とは、以下の3つの力のバランスにより吹く風のことをいいます。
◆気圧傾度力
◆コリオリ力
◆遠心力

傾度風は、地上などの摩擦の影響はほとんど受けない「空の高いところ(自由大気)で吹いている。

摩擦力がなく、等圧線が曲線を描いている条件下で吹く。

最初に学んだ時はややこしいかもしれませんが、要するに傾度風は
「摩擦力が関係しない、遠心力が加わった風」だと覚えておけばOKです。

これからも一緒に楽しく学んでいきましょう!

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