吊るし雲(つるしぐも)ってどんな雲?
この記事でわかること

▶︎吊るし雲とはどんな雲なのか
▶︎吊るし雲の発生条件
▶︎発生した場合は雨が降るのか、天気の変化について
▶︎吊るし雲は地震雲?
▶︎その他、吊るし雲の不思議について、わかりやすく解説しています!

気象予報士アカデミー受講生のSさんより街中で見かけた「吊るし雲」の写真をいただきました。

ゴルフの打ちっぱなしの建物の上にUFOのように浮かんでいる雲。これは「吊るし雲」です。

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波田講師
おおこれは、吊るし雲ですな。ラッキーですね!
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飯沼講師
山の上ではなく、建造物の上にですか。珍しい。

住宅地に突如現れた吊るし雲。講師陣も驚いていますね。

なぜこんな形の雲ができるのか、気になりますよね!

それにUFOみたいで、何かが起こりそうな予感も・・・

それでは早速、吊るし雲とはどんな雲なのか、楽しく学んでいきましょう!

吊るし雲とは

吊るし雲とは気流(風)が山などの高さがあるものを超える時に生じる、風の波(山岳波)によってできる雲の一種です。
山(風を上昇させるもの)があるとできる雲としては、笠雲と同じ部類の雲です。

高さがあるほど風が上昇し、雲ができやすいので、富士山などをはじめとした高い山の周辺で多くみられますが、まれに、こうやって地上にある建物の上空に現れることもあります。

上の写真の雲も、とても不思議な形ですね。

ではこの不思議な雲は、なぜ「吊るし雲」と呼ばれているのでしょうか?

「吊るし雲」と呼ばれる由来

「吊るし雲」の名前の由来は、一度出現するとほとんど動かず、その場所で「吊るされている」ように見えるため「吊るし雲」と言われるようになったという説があります。

本当に、誰かが上空から吊るしているように見えますね。

形がかなり珍しく、特徴的な雲ですので、UFOに間違われたり、ラピュタの世界のようだと言われたり、地震の前兆、天使の雲、恐怖の雲など様々に表現されています。

レンズ雲との違い

吊るし雲とレンズ雲との違いについて、よく聞かれますが、吊るし雲とレンズ雲は同じです!

レンズとは学術名「Lenticularis」でラテン語で「小さなヒラ豆」を意味します。

ヒラ豆??

ちょっとイメージがしずらいので、Wikipediaより画像をお借りします。
ここで言う「レンズ」は、下の写真のような形です。

引用:Wikipedia「レンズ」

これが横向きに広がっているように見えるので「レンズ雲」でしょうか。

また、「レンズ雲」は世界気象機関(WMO)で表記されていますが、吊るし雲は日本だけで使われている言葉のようです。

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吊るし雲はどんな時にできる?

さて…吊るし雲はどんな時にできるのでしょうか?

ここでは吊るし雲ができる時の条件のほか、時間帯、今後の天気についてもお伝えしますね。

できる条件

吊るし雲のように、レンズのような形や渦を巻いているような形の雲ができる時、「風」と「高さがある山など(※以下「山」と表記します)」が必要になります。

では下図をご覧ください。↓

笠雲のしくみ

風が吹いてきて、山にぶつかると風は山を避けるように、上向き、横向き、下向きに分散するのは想像できますね。

この「上向きの風」は上層に行くほどどんどんと冷やされるので雲になります。
この雲は「笠雲」です。

笠雲_富士山

次に、山にぶつかって上昇した風は山を乗り越えた後、さらに上昇するものや、下降するものに分かれます。

山にぶつかったせいで、波動が乱れるんですね。

その中でも、山を越えた後、いったん下降し、その再び上昇した風(空気)が冷やされてできる雲が「吊るし雲」になります。

吊るし雲のしくみ

また、雲や霧によっては朝や、日中、夕方など、現れやすい時間帯があるものもありますが、「かさ雲」や「吊るし雲」ができやすい時間帯は特にありません。

次に、下の写真をご覧ください。

この雲は何やら渦を巻いているように見える形ですね。
でもこれは、渦を巻いているというわけでもないのです。

吊るし雲_富士山

高さによって分かれた「層状の雲」が重なって、このように渦を巻いているように見えることがあります。

渦があるように見えるため、この雲の下では突風が吹いていたり竜巻が発生していそうにも思えますが、地上にそういった現象をもたらす雲ではないのです。

ただし、この吊るし雲が現れる=上空はかなり強い風が吹いていることになるので、山に登る時にこの雲が現れていると注意が必要。

ではどのように注意が必要なのか、雨が降ったりするのでしょうか?

次で詳しく解説します!

吊るし雲ができると雨?

「かさ雲や吊るし雲が出ると、雨が降り出す」のはその通り!
山の近くでは、かなりの確率で雨が降ることが多いのです。

というのも、かさ雲や吊るし雲が現れる時の条件は

  • 上空の風が強い時
  • ある程度湿った空気が存在する

上記の2つがあるときで、こういう時は低気圧や台風、前線の接近などの場合が多くなります。

特にかさ雲よりも吊るし雲のほうが湿った風が入った時にできやすいので、吊るし雲があったほうが雨の確率が高くなるのです。

いずれにしても、これらの雲は雨が降る前兆として現れることが多いですね。

これは国土交通省のWEBサイトから引用させていただきますが、富士山にかさ雲がかかった後の天気は24時間後までに雨になる確率です。↓

24時間後までに雨になる確率

春秋冬・・・70%
夏・・・・約75%

さらにかさ雲と吊るし雲が同時に現れると、80%~85%で雨が降るそうです

傘をお忘れなく!

このように、天候が崩れる前に現れがちな吊るし雲ですが、「地震雲ですか?」とよく聞かれる雲でもあります。

朝焼けでピンク色の吊るし雲や、夕焼けでオレンジ色の吊るし雲、また、夜間に月明かりに照らされる吊るし雲もあり、とても美しいですが・・・できる仕組みを知らないと「何かの予兆か?!」と驚いてしまいますね。

はたして、吊るし雲は地震雲なのか?
次で詳しくお話ししましょう。

吊るし雲は地震雲?

吊るし雲が出ると「地震の予兆ですか?」ともよく聞かれますが、今のところ「地震と雲の関連性」を発表している公の機関はありません。

というのも、地震は日本の陸地だけでなく、海外の陸地や海上を含めると、大なり小なりいつでも起こっています。

また、吊るし雲のように変わった形をした雲も、大なり小なり、どこでも発見されています。

大きな地震が起こって、たまたま吊るし雲があった、竜が昇っているような雲があった、一面に真っ赤に輝く雲があった、となると「地震雲だ」と紐づけて考えられることも無理もないでしょう。

「地震雲」は、1948年に発生した福井地震を、鍵田忠三郎氏(元奈良市長など)が事前に地震雲で予知して的中させた…と発表されたことから日本で広まった言葉だと言われています。

しかし、その後、気象庁は「地震雲は存在しない」という意見を紙面などでも発表していて、現在の気象庁のWEBサイト「地震雲はあるのですか?」のページに掲載されている内容も、地震と地震雲の関連はないとのこと。

ただ、今後、研究され続け、観測技術も向上するなど、もっともっといろいろなことがわかるようになってくると、100%違うと言えなくなるかもしれませんね?!

まとめ

吊るし雲は気流(風)が山などの高さがあるものを超える時に生じる、風の波(山岳波)によってできる雲の一種で、笠雲の仲間です。

特にできやすい時間帯はありません。

一度出現するとほとんど動かないという特徴があり、その場所で「吊るされている」ように見えるため「吊るし雲」と言われるようになった…とも言われています。

風が強い時に現れるため、登山前に見かけたら注意してください。

また、吊るし雲ができたら、その後、高確率で雨が降ることがわかっています。

特徴的な形や、朝焼けや夕焼けで不気味に見えることもあり、地震雲と心配されることもありますが、地震とは関係ありません。

時々、海外から届いた大規模な吊るし雲の写真に驚くことがありますね。

特に、アメリカなどの大陸で発生する吊るし雲は、かなり大きいですし、形も大きな渦を巻いていて、まるでブラックホールに飲み込まれるかのような迫力で、映画のCGのようです。

このように特別な雲に見えるため、世界各国で「天使の雲」とも「悪魔の雲」とも言われることがありますが、これは見た人が決めていいですよね!

吊るし雲を見たら、ラッキーなことがありそうだと思うのか、不吉なことがあると思うのか。

ラッキーなことがありそうだと思えるように今日も前向きにがんばりたいところです。

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