⓪予報士試験を勉強する前に理科の復習!
毎日違う表情を見せる空。
空を見上げると、様々な種類の雲があります。
丸い雲、薄い雲、どんよりした雲・・
雲はどうやってできるのでしょうか?
また、実際に雲を作ってみました。
曇って何?
雲とは、空気中の水蒸気がまとまった小さい水の粒の集まりです。
普段は目に見えませんが、空気中には水が含まれています。
冬の寒い日に息を吐くと白く浮かびませんか?
あれは息から出た温かい水蒸気が、周りの空気に冷やされて水の粒となった状態で、これも雲のでき方と同じです。
例えば、日差しによって空気が温められると空気が軽くなって上に上に上がっていきます。これが上に向かって吹く流れ(上昇気流)です。
この時、一緒に地上の空気に含まれている水分が上昇流によって上にあがります。
そうすると、上空は気温が低いため、空気が冷やされて水の粒になります。
そうやって浮かんだ水の粒が集まったものが雲となります。
上昇流って?
エアコンを思い出してください。
暖房を付けていると顔の周りは暖かいのに、足元だけ冷たいということが起こったりします。
また、お風呂も同じように、お湯が沸くと上のほうだけ暖かくて、下の方が冷たいとうことが起こったりします。
空気は、温められたら上に上がる性質を持っています。
太陽に温められた地面の空気が上に浮かんでいこうとすること、
それが晴れの日の上昇流になります。
※一例です。他にも、高気圧と低気圧の気圧差や、
風の収束など様々な成因があります。高気圧の説明は過去記事「なぜ高気圧に覆われると晴れる?」にて
雲は落ちないの
上昇気流で水の粒が浮かんだのが雲なんだったら、
水の粒が集まりすぎて、上昇流より重たくなったら落ちるんでないの?と思いませんか。
結果から言うと、落ちます。
より正確に言うと、雲として落ちるのではなく、
雨として落ちます。
上昇流で浮かんだ水滴たち(雲)は、お互いにぶつかりながら大きくなります。
そして大きくなりすぎると上昇流でも支えきれなくなっちゃうんですね。
自分たちの重さに耐えきれなくなったときに
雨として落ちてきます。
いわば、雲のダイエットです。
(そして減らした分はまた上昇流に乗せて新しい雲となるのですが・・・ダイエットと一緒ですね。終わりません。)
雲をつくってみた
本当に水蒸気と上昇流で雲ができるのかためしてみました。
今回はペットボトルの中に雲を作ってみようと思います。
準備するもの
ペットボトル
線香
お湯(50〜60度くらい)
- ①まず、ペットボトルにお湯を張ります
これが水蒸気のもとです
- ②続いて、線香の煙をいれます
雲の粒の核になる〈ちり〉となります
実は雲の粒は100%水だけでできているのではなく、
水の粒となるための核が必要なんです
核に水蒸気たちが集まって、雲の粒になります。
- ③ペットボトルを押して凹ます
ペットボトルの中の圧力を高めることで
ペットボトルの中の温度をあげます
- ④ペットボトルを緩める
急にペットボトルの中の圧力を戻すことで、
ペットボトルの中に上昇流を作ります。
中にできた白いものが、雲です
無事に雲が作れて安心です。
皆さんもよかったら作ってみてください。
天気予報で「高気圧に覆われて、あすは晴れるでしょう」とよく聞きます。
なぜ高気圧に覆われると晴れるのでしょうか。今一度復習していきましょう。
高気圧とは
高気圧とは、周囲よりも気圧が高く、閉じた等圧線で囲まれたところをいいます。そのため、気圧が○○hPa以上であれば高気圧というわけではありません。
周囲よりも気圧が高いものの、閉じた等圧線がかけないところは高圧部といいます。
高気圧の言葉の定義はこちら(コトバンクにリンク)
高気圧の風の仕組み
高気圧に覆われている所では、上空から地上に空気が移動する「下降気流」が発生して「晴れます」
…と言われても、なぜ高気圧になると風が下向きに吹くのでしょうか。そこから考えていきましょう。
高気圧のところは気圧が高い=空気がたくさんあって、重たくなっています。
一方、低気圧は気圧が低い=空気が少なく、軽くなっています。
ただ、こうなると、高気圧のところで言うと、空気は満員電車に乗っているようなものなので、自然に空いている空間(電車)に乗り換えようとします。
この空気が移動することで「風」が生じます。
高気圧から低気圧に向かって空気が移動することで風が生じますが、その風はどうなるでしょうか。
いろいろな方向から風は吹いてくるので、風がぶつかることになります。
では、その風はどこに向かうのか。
低気圧の空間でも高気圧の空間でも、私たちは地表にいるので、風は地表よりも下に向かっていくことができません。
低気圧のところに風が集まると、自然と風がぶつかって、その風は上昇するしかなくなります。
一方で、高気圧はどんどんと空気が移動していくので、それを補充しようとします。
そうなると、地表から風が吹いてくることはできませんので、上空から空気が移動してきます。
これが下降流となります。
なぜ下降流だと晴れるのか
では、なぜ下降流だと晴れるのでしょうか。
風が下向きに吹くということは、上空にあった雲や水滴も一緒に下降します。
同じ地点の上空と地表付近だと、地表付近のほうが気温が高いです。
雲粒である氷の粒は気温が高くなると、溶けて雨になり、その雨もさらに気温が高くなると水蒸気になって目に見えなくなります。
つまりは雲や水滴は蒸発して消えてなくなるため、晴れます。
気象予報士試験の学科一般ではそういった天気の「理屈」の理解を求められていきます。
日本付近の高気圧の種類
日本付近によくあらわれる高気圧は4つあります。それぞれ、暖かい空気でできていたり、冷たい空気でできていたり、気質が違います。高気圧に覆われるのか、その縁に当たるのか、その高気圧との距離などによって、天気もまったく変わります。
穏やかに腫れたり、灼熱の暑さになったり、寒くなったり、雪が降ったり。同じ高気圧でも現象はさまざまです。
日本付近の高気圧の種類:移動性高気圧、太平洋高気圧、オホーツク海高気圧、シベリア高気圧
移動性高気圧とは
「移動性高気圧」とは、そのものずばり「移動」する「高気圧」です
春と秋はこの「移動性の高気圧」が通過することが多くなります。この移動性高気圧と低気圧が交互に来ることで、「三寒四温」が起こったり、「春に3日の晴はなし」といったように、晴れの日、雨の日が交互に来て、周期的に変わりやすい天気になります。
移動性高気圧はなぜ移動するのか?
移動性高気圧が移動するのは「上空の風に流されているから」です。
日本付近は「偏西風」と呼ばれる上空に強い西風(方角的に西⇒東へと吹く風)が吹いています。
「西から天気は下り坂でしょう。」
「西から天気は回復して、晴れる所が多くなるでしょう。」とよく天気予報でも聞くように、日本周辺は天気は西から東へと変わっていくことがありますが、これはこの偏西風があるからです。
この風に流された高気圧や低気圧の影響で、西から東に向かって天気が変化しているのです。
移動性高気圧の時速は
移動性高気圧の時速はだいたい40キロ~50キロ(1時間に40キロ~50キロ移動する)です。
自動車がゆ~っくり進むスピードくらいでしょうか。
その時速で日本を横断している感じです。
(ちなみに、気象予報士試験では低気圧の移動速度を求める問題なども出題されます。)
移動性高気圧の大きさは平均すると1000kmくらいです。
1000kmは北海道~東京、もしくは東京~福岡くらいの大きさですので、かなり大きいですよね。
この1000kmの大きさの移動性高気圧が時速40キロ~50キロで進むので、移動性高気圧に覆われだすと1日くらいは晴れの天気が続くことになります。
太平洋高気圧とは
日本の南に広がっている「太平洋」に中心を持つように現れる気圧が高いところが「太平洋高気圧」です。
夏になるとこの「太平洋高気圧」が日本付近にも張り出してきます。この太平洋高気圧に覆われると「晴れて暑く」なります。
太平洋高気圧はほとんど移動することはありません。場所的に上空の風に流されることはないので。
ただ、大きくなったり、小さくなったりします。
移動性高気圧は大きさはほぼ一定の大きさ、一定の時速で移動するのですが、太平洋高気圧は同じ場所で大きくなったり、小さくなったりします。
また、台風はこの太平洋高気圧の縁に沿って移動するので、この太平洋高気圧の中心がどこにできるのか、大きさによって、日本に近づいたり上陸したりと進路が変わってきます。
シベリア海高気圧とは
ロシア連邦にある「シベリア」という地域に中心を持つ高気圧です。地形の影響によって、このシベリアに寒気が溜まりやすくなるため、冬場になるとよくあらわれる高気圧です。
日本から離れたシベリアにできる高気圧の影響の受けるの?と思われるかも知れません。
が、この低気圧、とても大きくて、一度現れるとがんこなほど居座るので、日本でもとても影響を受けます。
ちなみに、ロシアに出兵したナポレオンが寒さに苦しめられたという話がありますが、まさにそれがこのシベリア高気圧。
ナポレオンはこのシベリア高気圧の寒さを舐めて、さほど重装備でなく出兵したため、寒さに退散したそうです。
この高気圧の影響で、日本付近は「西高東低」の気圧配置になって、日本海側に雪が降りやすくなります。
オホーツク海高気圧とは
シベリア高気圧が冬にできる高気圧ですが、オホーツク海高気圧は春~夏場にできる高気圧です。日本の東海上にある「オホーツク海」に中心を持ちます。特徴としては「背が低い高気圧」です。
夏場なのにオホーツクの冷たい海で冷やされた冷たい空気でできてるので、北海道から東京にかけての太平洋側に冷たく湿った風が吹きつけます。
この高気圧は冷たい空気でできているのでとても重たくなっています。
なので、地表に近い下層部分にしか高気圧ができません。
ですので、東北地方にある高い山(せきりょう山脈)を超えることができないため、影響をうけるのはほとんど太平洋側になります。
東北や北海道ではこのオホーツク海高気圧から噴き出す冷たい風のことを「やませ」と呼んでいます。
時期的にこれから日照が必要な5月から7月にかけて現れやすいため、漁業や農業にとってはとてもやっかいな現象です。このオホーツク海高気圧からの冷たい風が長く続くと、コメ不足などにもなり、昔から米騒動などが起こっていました。
なお、位置的にも東京より西には影響が出ません。ですので、西日本の方は天気予報でもほとんど聞くことはないのですが、予報士試験では出題されることもありますので、現象としては勉強しておきましょう。
気象予報士試験では「ここの気圧(きあつ)は何ヘクトパスカルでしょう」などと、「気圧を知っていて当たり前」とのごとく、「気圧」が登場します。「高気圧」「低気圧」などはよく天気予報でも耳にしますよね?
では、その「気圧」とは、なんだったでしょうか?中学理科で習ってますよ!!思いだしておきましょう。
気圧とは
気圧の言葉の定義はこちら(コトバンクにリンクしています)
気圧とは、大気にどれだけ「圧力」があるか、その「圧力」がどれくらい強いのかを表しています。
また、気圧は、簡単に言えば空気の重さです。
目には見えませんが、空気にも重さがあり、私たちの体は空気から圧力を受けています。
ですので、「高気圧」の時には、とても重たい空気が頭の上にあり、一方で「低気圧」が近くにある時は体の周りの空気は軽くなっています。
日本語で「高気圧に覆われている」というと、晴れるし、なんとなく、おだやか~に感じますが、英語で言うと「Hight Pressure」=高い(大きい)プレッシャーかけられてますという意味ですよね。
そして、気象現象を考慮せずの条件ですが、一般的に私たちが住んでいる地表付近の気圧はだいたい1000hPaくらいです。一方で、富士山など高いところに登ると頭の上から宇宙までの空気は少なくなりますので、気圧は低くなります。だいたい100mごとに10hPa気圧が下がりますので、富士山山頂では気圧は630hPaくらいになります。
よく山の上に行くとポテトチップスの袋が膨らむ、という話を聞きますが、それがこの気圧の差です。
地表付近では重たい空気に押されているので、ポテトチップスの袋は膨らみません。
一方で、山の上では空気が押す力が弱いので、ポテトチップスの袋の中の空気のほうが圧力が強くなり、外に向かって動こうとするので膨らみます。
気圧を表す単位はいくつかありますが、気象予報士試験で使われる単位は「ヘクトパスカル(hPa)」です。(ヘクトは100という意味で、1hPa=100Paです)
1992年までは日本ではミリバール(mbar)を使用していましたが、今は国際単位のパスカルを使用しています。
日本付近の天気図に現れる気圧はだいたい、900hPa~1020hPaくらいの高気圧や低気圧です。
高気圧と呼ばれるのは多くは1000hPaくらい。低気圧は900hpa台が多くなります。
ちなみに、日本周辺の平均気圧は1013hPaです。
では「高気圧」「低気圧」の定義はなんでしょうか。
高気圧とは
高気圧とは、周囲よりも気圧が高く、閉じた等圧線で囲まれたところをいいます。そのため、気圧が○○hPa以上であれば高気圧というわけではありません。
周囲よりも気圧が高いものの、閉じた等圧線がかけないところは高圧部といいます。
低気圧とは
低気圧とは、周囲よりも気圧が低く、閉じた等圧線で囲まれたところをいいます。そのため、気圧が○○hPa以下であれば低気圧というわけではありません。
周囲よりも気圧が低いものの、等圧線が閉じておらず、中心が特定できないようなところは低圧部といいます。よく「気圧の谷」と天気予報で聞くことがあると思いますが、低気圧とまでは言えないまでも気圧が低い部分を「気圧の谷」と言います。
つまり、1000hPa以上が高気圧などといった決まった数値はなく、
高気圧、低気圧とは「周りに比べたら高いか、低いか」になります。
高気圧・低気圧の種類
そして、低気圧・高気圧にもさまざまな種類があります。
低気圧:温帯低気圧、熱帯低気圧(台風)、寒冷低気圧、南岸低気圧
高気圧:移動性高気圧、太平洋高気圧、オホーツク海高気圧、シベリア高気圧
気象予報士試験で使う気圧面
気象予報士試験では、地上の気圧などの情報が載っている「地上天気図」だけでなく、その上の大気の層を気圧で切り取った「高層天気図」を用いて問題が出されます。
850hpa図(高度約1500m 富士山の3合目あたり)
700hpa図(高度約3000m 富士山の7合目当たり)
500hpa図(高度約5500m 富士山を超えて、富士山を見下ろせる高さ)
高層天気図は気象庁のHPに掲載されていますので興味がある方はこちら(気象庁HPにリンク)
気象予報士試験で使われる天気図は地上天気図、高層天気図です。代表的なものをいくつか紹介します。
地上天気図
高気圧や低気圧の位置、進むスピードなど全体的な気圧配置を確認します
850hpa天気図
等温線(同じ温度を線で結んでいる)が表示されていますので、850hpaでの温度や、風向きを確認します。斜線が引いてあるのは700hpa面での上昇流があるところです。
700hpa天気図
気温と湿域を見ます。点線の箇所は湿っている=雲が発生していると判断します。
500hpa図
強風軸(上空の強い風はどこで吹いているか)を見つける時などに使います。
前線が近づくため、雨が降るでしょう。
前線が停滞するため、雨が続きそうです。
天気予報で高気圧、低気圧に続いてよく聞かれる単語です。
温暖前線は丸いマーク、寒冷前線は三角マーク。
懐かしい理科の知識を思いだしますね。
予報士試験では高層天気図を見せて、「では、どこに前線がありますか?」という問題が出されます。
では、そもそも前線は何なのか。確認していきましょう。
前線とは
天気予報で使われる「前線」とは、性格の違う空気の境目の腺(ライン)のことを言います。よく使うのは空気の温度の差ですが、湿度の差でも前線は発生します。
前線の言葉の定義「コトバンク」気象庁HP「天気予報等で用いる予報用語」
前線の種類
前線には4つの種類があります。温暖前線、寒冷前線、閉塞前線、停滞前線があり、それぞれ違った構造があり、もたらす天気現象も変わります。一つずつ見ていきましょう。
温暖前線
地表面が温められるなど、なんらかの影響で低気圧ができたとします。
そうすると、上昇流が発生していますので、空気は軽くなっていて、周りよりも温かくなっています。
低気圧は上空の強い西風に流されることが多いため、暖かい空気が西の方向、図でいうと右の方向に移動しようとします。
そうすると、暖かい空気は冷たい空気よりも軽いので、冷たい空気の上にのっかろうとします。
その現象が起こっているラインを「温暖前線」と言います。
「温かい空気がどんどん移動してくる」ので、「温暖前線」と覚えましょう。
温かい空気は軽いので動きはのんびりしていて、ゆっくりゆっくり冷たい空気の上に登ろうとします。
じわじわ空気が這い上がるため、雲はランダムに、乱れるようにできます。そう、温暖前線が通過するときに発生するのが「乱層雲」です。
乱層雲は水平に広がりやすいので、温暖前線が通過する時には、雨の降り方は比較的弱くて、しとしとと長く続くのが特徴です。
寒冷前線
一方で、低気圧が通過すると、暖かい空気があったところに、その空気より冷たい空気が運ばれてくることになります。
その寒気が進出してきているラインを「寒冷前線」と呼びます。
寒くて冷たい空気が流れ込んでくるので「寒冷前線」と覚えましょう。
冷たい空気は重いため、まるでブルドーザーが突っ込んでくるかのように、ぶつかるとかなり衝撃があります。
この冷たい空気が温かい空気の下に潜り込もうと、どーんとぶつかってくるので、暖かい空気はぽんと上空に投げ出されます。
このため、雲が一気に発達します。寒冷前線が通過する際には積乱雲と呼ばれる背が高い雲が発生し、短時間に強い雨が降りやすくなります。
閉塞前線
寒冷前線は温暖前線にくらべてスピードが速く、どんどん西に移動します。
ですので、のんびりしている温暖前線はいつの間にか寒冷前線に追いつかれてしまいます。
その時にできるのが閉塞前線です。閉塞前線ができ始めると、空気も均一になりはじめ、低気圧ももうすぐ消滅する段階になっています。
停滞前線
温暖前線、寒冷前線、閉塞前線は低気圧に伴ってできることが多く「移動する前線」なのですが、停滞前線のみでき方が違います。また、移動せずに同じ場所に停滞するため、大雨が長引いて被害が大きくなることがあります。
停滞前線で一番よくみられるのは梅雨の時期にできる「梅雨前線」です。
南にある太平洋高気圧と、オホーツク海高気圧や、中国大陸からの乾いた空気など、太平洋高気圧と性質を違った空気との境目にできます。
この空気がどれだけ強いかによって、前線の位置は変わりますが、風に流されて移動するなどのことはないため、ほとんど同じところで停滞する特徴があります。
①大気の構造
「熱帯のほうが温度が高くなるので、空気が膨張して、圏界面が高くなる」という順番になります!
・熱帯のほうが温度が高い
・空気が膨張する
・(押し上げられて)圏界面が高くなる。
このあと「層厚」(層の厚さ)という用語がしつこく出てくるようになります
「層の厚さ」が大事になります
この概念を忘れないでください
あと、モノを暖めたら膨張する 冷やしたら小さくなる
など、身近にあって簡単にわかる常識みたいなものが
気象の世界を理解するのにカギになることが結構あります
わからないことがあったら、そこに戻るのがいいかもしれません
湿った空気と乾いた空気では気温減率が違います。 乾いた空気は1キロで10度、湿った空気は1キロで5度変化します (その平均が気温減率6.5度/kmなのです) なので、上空の同じ高さの乾いた空気と普通の空気を100メートルだけ下げてみましょう 乾いた空気のほうが1度高くなりますが、普通の空気は0.6度しか低くなりません。 ということは、乾いた空気の方が温度が高いので軽いわけで、上空にとどまるしかないのです。 実は上空の冷たい空気がその高さにあるのは気圧が低いだけで、 気圧を同じにすると、上空の気温と地上の気温を比べると、上空の空気のほうが温度高い場合もあるのです。ですので、常に大気の状態が不安定というわけではありません。
熱圏では大気に含まれていた分子が紫外線やX線に当たって、光解離、光電離が発生し原子や分子、イオン、電子などがバラバラになっている濃度の濃いところを「電離層」と言います。
そして、
光解離とはー0.1〜0.2μmの紫外線にあたって分子(O2)が酸素原子(O)になること。
光電離とはー0.1μm以下の紫外線にあたって原子(NやO)がイオン化し、電子が放出されること、です。
つまり、光解離では
・紫外線の波長が大きいため、分子が原子になります。
そして、光電離では
・紫外線の波長が小さい 原子がさらにバラバラになります。
もう少し説明すると、分子はO2とかCO2とかO3などの「原子が組み合わさったもの」ですが、原子はCとかOとかNとかの単体です
まとめますと、光解離で、大きめの波長の紫外線で分子が原子へとバラバラになり、光電離で更に小さい波長の紫外線で原子がさらにばらばらになって小さくなるというイメージです。
最終的に温度が上がるか、下がるかは 加熱の量と放射の量のバランスで決まります。オゾンと酸素については授業で習った「純酸素モデル」のように 紫外線というきっかけが持続することで、熱の放出も持続します。成層圏ではそれが機能しますが、中間圏ではそれがないため放射の量が多く、気温が下がってしまいます。
まず、春と秋を説明する前に夏と冬の説明から
夏は「夏の太平洋高気圧」が日本列島を覆って支配します
晴れて暑い日が続きますね
逆に冬は気温のめっちゃ低い「シベリア高気圧」が支配するため冬は寒いのです
特に冬型の気圧配置になったときは
縦縞の等圧線に沿って北西風によって寒気が入ってきて、
日本海側を中心に雪を降らせます
夏と冬の中間に「春」と「秋」があるわけですが、
言ってみれば、春と秋は
夏の横綱である太平洋高気圧と
冬の横綱であるシベリア高気圧が
日本の上空で拮抗、がっぷり四つに組んでいる状態です
気象学的に言えば、
夏の暖かい空気と冬の冷たい空気の境目が日本付近にあります
日本より北の方では寒気が優勢
日本より南の方では暖気が優勢ということです
さて、地球というのは素晴らしくて
私達が地球上で住みやすくするために、温度調節をしてくれています
赤道付近に太陽のエネルギーが集中しやすいので熱くなります
一方北極や南極に近い方は太陽のエネルギーがあまりないので寒いです
で、赤道との温度差が生まれます
その温度差を
大気や海流などの動きで混ぜることによって、
地球上をできるだけ同じような気温にしようとしてるわけです
最近のわかりやすい例で言えば「サーキュレーター」
あるいは、お風呂を入れて数時間放っておけば
上の方が熱くて、下のほうがぬるく冷たくなるのですが
それを風呂おけで混ぜるようなイメージですね
そしてもう一つ温度調節をしてくれるものがあります
それが「低気圧」です
日本列島は、春や秋には
北と南で温度差ができやすいのですが、
その暖かい空気と冷たい空気の境目に「前線」ができます
その境目の温度差が大きくなると
低気圧が発生して、暖気を北に、寒気を南に流して混ぜることによって
「温度差」を解消してくれるんです
その仕事をした「低気圧」が東に遠ざかったあと
「高気圧」がやってくるイメージで考えてください
で、高気圧がやってくると南の方に熱が溜まりやすくなるので
また日本付近を境に温度差が生まれる
するとその温度差を解消するために低気圧が発生してやってくる…
春と秋はその繰り返しなのです
②水の状態変化
もの温めたり冷やしたりするには外から熱を加えたり冷やしたりします
物体に外から熱を加えると膨らみますね
逆に冷やすと縮みます
外から熱というエネルギーを与えることで、「膨らむ」という仕事をするわけです
逆に熱というエネルギーを減らすことで、「縮む」という仕事をするわけです
さて、ご質問の本題です
気象学でよく出てくる「断熱変化」という分です
ある空気の塊(かたまり)が何らかの原因で上昇したり、下降するときは
先程のような外部との熱のやり取りを無視することができます
その時、押さえておきたいのが
上昇して高度が上がると、気圧が低くなります
下降して高度が下がると、気圧が高くなります
(気圧はその場所における空気の重さです
高いところだと、それだけ押さえつける空気の量が少なくなるからです)
まず空気塊が上昇すると気圧が下がります
気圧が下がると空気塊を押さえつける力が弱くなり
空気塊が自動的に膨らみます
しかし膨らむためにはエネルギーが必要です
先程は「加熱」というエネルギーがありましたが、いまありません
そのため空気塊がもともと蓄えているエネルギーを使うのです
(内部エネルギーといいます)
そのエネルギーを使うため、温度が下がるのです
一方、空気塊が下降すると気圧が上がるため
空気塊を押さえつける力が働きます
そのため体積が小さくなります
先程の「膨張するために空気塊のエネルギーを使う」と逆の現象が起きます
「収縮するため逆に空気塊にエネルギーが蓄積」されるため気温が上がるのです
2.5×10⁶×30の計算の仕方ですね
気象学など物理が絡むものについてはものが大きすぎたり、小さすぎたりするので
2.5×10⁶という表現を使います
10⁶はわかりますよね? 10の6乗、10×10×10×10×10×10=1,000,000=100万です
2.5×10⁶は250万という意味です
6のところがマイナスのこともあります
2.5×10⁻²は2.5/100(あるいは2.5×0.01)で
0.025の意味です
この表記には慣れてほしいです
ポイントは
最初の数字が必ず1の位からスタートします
25×10⁵でも間違いではないのですが
必ず2.5×10⁶にします
さて
2.5×10⁶×30の計算ですが
2.5×30から計算します
=75です
75はさっきの法則から行くと7.5×10とも書けます
なので
7.5×10×10⁶=7.5×10⁷になります
繰り返しですが慣れです
計算も数字のところと10を分ければいいので
慣れたら楽になりますよ
対流混合層での未飽和の空気塊は対流で混合されているので「一定」です
さすがに気温が下がっているので
対流混合層上端付近ではほぼ飽和に近い状態です
移行層で、さらに気温が下がったり過飽和になると
ちょっとしたはずみで凝結し雲が発生するので混合比が減っていくわけです
③降水過程
水滴の径(直径とか半径)が小さいほど表面張力が強くなり、
水滴が壊れやすい=蒸発しやすい です。
さて
ご質問の件
「水滴に対する飽和水蒸気圧は水滴の表面張力の影響で水面に対する値より大きい」ということについてです
まず「飽和」=空気に限界まで水蒸気が含まれている状態です
また「飽和水蒸気圧」=空気が限界まで水蒸気を含んだときの水蒸気圧です
さて飽和について水の入ったコップで考えましょう
コップに水が溢れないぐらいでたっぷりはいっている状態が「飽和」です
こぼれると「凝結」というわけです
これで考えた場合「飽和水蒸気圧(量)」の大小は
言ってみれば「コップの大きさ」なわけです
・コップが大きいと「飽和」しにくい 「凝結」しにくい
・コップが小さいと「飽和」しやすい 「凝結」しやすい
ということですよね?
ここで「水滴」と「水面」の比較を考えましょう
(「水面」は「大きな大きな水滴」と考えてもいいかもしれません)
「小さな水滴」は蒸発しやすいです
表面張力の影響で水滴が壊れやすく、まんま蒸発するものも多いのです
「水面」はそれに比べて蒸発しにくいです
「小さな水滴」は
「蒸発しやすい」=「凝結しにくい」ということが言えます
飽和して水滴であり続けるためには、凝結しつづけなければいけません。
飽和水蒸気圧(量)が大きいから、
限界の水分量も多くないといけないわけで、
そこに至るまでに表面張力の影響で水滴が壊れて蒸発するわけです
凝結しやすいということは飽和水蒸気圧(量)が小さく、わずかな水分量でいいわけです
「飽和水蒸気圧」が大きいから「飽和しにくい」ということになります
「水面」は逆になります
気象用語的には
微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態
が霧なのですが
雲が地上まで届くと「霧」になります
④大気の放射
放射平衡についてですが、「真空の」地球表面で受ける太陽放射(短波放射)と
赤外線で放射する地球放射が等しい=平衡(釣り合う)とするものです。
また、この計算で用いられる「アルベド」は地球に届く単位時間、単位面積あたりの放射エネルギー対するものです
(=太陽定数)
そして0.3になるのは太陽から地球に入射する角度で発生するものです
当然、地球は大気があって、地表面や大気、雲などいろいろな要因でエネルギーを宇宙に放射しています
その、アルベドも0.3。同じアルベドですが、ちょっと意味合いが違うのです
紫外線(太陽放射・短波放射)自体は大気を暖めません
成層圏ではオゾンが多いのですが
そのオゾンが紫外線を吸収して発熱するため、その熱が大気を暖めます
対流圏は紫外線を吸収するものがほとんどないのです
繰り返しになるのですが
紫外線自体は大気をあたためることはありません
詳しく説明すると
大気を組成するいろいろな物質のなかで
紫外線や赤外線を吸収するもの、放射するものがそれぞれあります
そのバランスで大気の温度が決まってきます
成層圏の熱源はご指摘の通り「オゾン」です
「オゾン」は紫外線を吸収し、発熱するのですが
紫外線を受けることで分解することもあり、対流圏にはほぼ存在しません
逆に大気圏での主な熱源は水蒸気や二酸化炭素になります
しかも「紫外線」の影響というよりは
地球が放射する「赤外線」を吸収することで温まります
厳密に言えば酸素分子など一部のところで紫外線吸収があるのですが
水蒸気や二酸化炭素の吸収(それによる発熱)は
それを無視できるぐらいのものです
おっしゃるとおりです。
青い空は、可視光のうち青系以外の色が散乱され、残った青い光を。
夕焼けのような赤い空は、可視光のうち赤系以外の色が散乱され残った赤い光を見ているということです。
⑤⑥熱力学
「顕熱」
熱エネルギーのやりとりや移動が伴う熱です
例えば
・ストーブにあたったら暖かい
・雪国に行ったら寒い
・湯豆腐を食べたら口の中が熱くて…
・かき氷を食べたら口の中が冷たくて…
これはすべて「顕熱」です
・ストーブの熱エネルギーが空気中を移動して感じることができたため
あたたかくなったのです
・雪国の雪や氷、冷たい空気の冷たさが空気中を移動して感じたためです
以下略…
「潜熱」は物質、
気象の世界では、「水・H2O」の変化によって発生、消費する熱です
水は、氷(個体)、水(液体)、水蒸気(気体)に変化しますが
その「変化」のときに、「熱」が発生、あるいは消費します
たとえば、「氷が浮かんだジュース」があります
①氷は暖かい室内で、その室内の暖かさという「顕熱」をうけて溶けます
②「氷の0℃」から「水の0℃」に変わるときに「潜熱」を消費します
(融解熱)
逆で言えば、冷蔵庫の中で作られる氷です
①水は冷蔵庫の中で、冷たい空気という「顕熱」をうけてこおります
②「水の0℃」から「氷の0℃」に変わるときに「潜熱」を発生させます
(凝固熱)
これらの熱は基本的に、これらの水の変化でのみのやりとりになります
温位の定義
温位とは、ある高さにある空気塊を1000hpaの高さまで乾燥断熱変化させて、
そのときの温度を絶対温度で表したものです。
(絶対温度:氷点下273.15度(℃)を0度(K)とした温度体系。気象庁より抜粋)
例えば、地上(1000hpaくらい)で293K(20℃)の空気と、上空1500m(850hpaくらい)で286K(13℃)の空気、
どちらが温かいと思いますか?
ぱっと見の「温度」では数字の大きい 地上の20℃が温かく見えます。
ただ、高さの違う場所の空気を比べるのは不公平です。
7歳のAくんと15歳のBくん、
どちらの方が身長が高いかか比べるのは公平ではありません。
比べるならば、7歳のAくんと、7歳だった頃のBくんです。
このときの「7歳のときの身長の高さ」が温位(1000hpa)になります。
温度と温位の違い
温位って聞き慣れないですよね・・。私は、どうしても温度とごちゃついてしまいます。
今一度、温度と温位の違いについて整理してみました。
■温度
物体に触れたときに感じる、熱さや冷たさの度合いを数値で表したものです。
■温位
ある高さにある空気塊を1000hpaの高さまで乾燥断熱変化させて、
そのときの温度を絶対温度で表したものです。
つまり、温度はその時点での度合い、温位は比べるために無理やり基準をあわせた数値となります。
エマグラムという、各hpaごとの気温を記録したグラフで見てみると、※赤の太線が気温です。
例えば600hpa地点での
温度は:赤線の600hpa地点の数字を読む⇒-16℃(257K)くらい
温位は:赤線600hpa地点を乾燥断熱曲線に合わせて1000hpaまでおろした地点の数字を読む⇒25℃(298K)くらい
(乾燥断熱曲線は赤の細線です。赤紫の点線が600hpa地点を乾燥断熱曲線に沿って1000hpaまでおろしたものになります。)
となります。
===
ちなみに、
赤の細線:乾燥断熱曲線
青の細線:湿潤断熱曲線
緑の細線:等和混合比 です。
具体的に何なのかは、また追ってお伝えします。
温位は保存される※条件あり
・・・どういうことでしょうか。
先程のエマグラムをもう一度見てみてください。
先程のエマグラムの温位の部分です。
温位は、乾燥断熱変化して値をもとめるため、
空気が飽和しない限り(=空気中の水蒸気が凝結しないかぎり)(=雲ができない限り)
この600hpaの温位は700hpaでも950hpaでも一緒です。このことを保存されるといいます。
温位を実際に比べてみましょう
乾燥断熱減率では、100mごとに1℃気温が低くなります。
上空1500m(850hpa)13℃の空気を地上0m(1000hpa)までおろしたときの気温は
13℃+(1500m÷100m×1℃)=28℃
28+273=301K
つまり、「温度」では地上293K(20℃)の方が温かいですが、
「温位」では1500m286K(13℃)の方が高いことがわかります。
ほかにも、相当温位という凝結した空気を調べる物理量もあります。
温位と相当温位の違いについては、
過去記事「温位と相当温位の違いがよくわかりません。」に記載しています。
ちょっと考えてみましょう
ある飽和していない空気があって
ある部分を切り取ると水分が4つ入っているとしましょう
ここで
先ほどと同体積の空気塊を
(同体積ですから同じように水分が4つずつ入っているとします)
2つチョイスして
片方は温め、片方を冷やしたとします
冷やした方は体積が小さくなります
飽和ですが凝結させないこととして
水分は4つぎりぎり保持したままにしましょう
ここで、
・冷やして小さくなった空気塊
・もともとの空気塊
・温めて大きくなった空気塊
を比べます
それぞれ水分4つを含み
均等に配置されているとします
一部を取り出すのはめんどくさいので
一番小さい空気塊(ギリギリ水分4つ分)の体積を基準にしましょう
・もともとの空気塊
・温めて大きくなった空気塊
それぞれ、一番小さい空気塊と同じだけの体積を取り出して比べましょう
・冷たい空気塊 水分4つがパンパン
・もともとの空気塊 水分2つか、2つ半
・温めて大きい空気塊 水分1つか1つ半
これでわかりますね
冷たい空気は密度が大きい=含まれている水分が多い=重い
その次にもともとの空気
暖かい空気は密度が小さく=含まれている水分が少ない=軽い
このように
密度を考えるときは体積を共通にしてあげて考えてあげると
わかりやすくなりますね
まず、乾燥断熱減率とは何かを抑えておく必要があります。
大気は、上昇や下降によって良くかき混ぜられた状態にあるので、断熱膨張・断熱圧縮が起こり、自然と上下に温度差ができます。そして、その高さによる温度の変化の割合が乾燥断熱減率です。
比較として、水の場合を考えると、上下に温度差がある水をかき混ぜると上下に均一な温度になります。この上下に均一な水の温度の状態(水温一定)が、大気の場合の乾燥断熱減率になります。
水の場合、この水温一定を基準として、水が上ほど冷たく下ほど暖かいと、対流が起き不安定な状態となります。逆に水が上ほど暖かく下ほど冷たいと対流が起きず安定な状態となります。
つまり、大気の場合の乾燥断熱減率と水の場合の水温一定は、同じ均一な状態を指すと言えます。
なので、大気が乾燥断熱減率より気温減率が大きい時は、水が上ほど冷たく下ほど暖かい時と同じような状態となり、対流が生じて不安定な状態となります。一方、大気が乾燥断熱減率より気温減率が小さい時は、水が上ほど暖かく下ほど冷たい時と同じ状態となり、対流が起きず安定な状態となります。
よって、乾燥断熱減率より気温減率が大きいと不安定、小さいと安定ということになります。
要するに、ここで述べられている「安定・不安定」は、未飽和な空気を前提とした時の、乾燥断熱減率を基準とした「安定・不安定」を表現したものに過ぎません。
一方、「絶対不安定・条件付き不安定・絶対安定」は、上昇下降する空気塊の温度と周りの大気の温度との関係や飽和・未飽和を考慮した場合の分類なので、区別して考える必要があります。
まずは密度を復習しましょう。
「単位体積あたりの重さ」が「密度」です
添付の画像で考えましょう。
密度はどちらが大きいか小さいかは一目瞭然ですが計算してみましょう
2m立方の容器に
1kgの塊が、①は2コ ②は10コ入っているとします
①(2コ×1kg)÷2m³
=1kg/m³
②(10コ×1kg)÷2m³
=5kg/m³
②の方が密度が大きいということがわかりました
「密度」は「単位体積あたり」ということで
「体積が基準」でした
比容は
「比容積」「比体積」ともいいます
「比容」は中身が基準です
1kgの物体あたりの「体積」
「単位質量あたりの体積です」
わかりやすくするために図にします。
1kgの水玉が専有できる容積・体積です
①の箱には水玉が2コしか入っていないので
1個あたりの水玉が専有できるスペースは半分ずつ
②の箱には水玉が10コも入っているので
1個あたりの水玉が専有できるスペースは10分の1しかありません
これが「比容」であり「密度の逆数」と言われる理由です
念のため計算しておくと
①2m³÷2kg=1m³/kg
②2m³÷10kg=0.2m³/kg
こんな感じです
さて気象予報士試験で比容がどこで出てくるかは、熱力学の第一法則(テキスト)のところで出てきます
が、比容がどういうものかということさえわかっていればおそらく解ける問題がほとんどのように思います
温位は、不飽和空気塊の性質を考えたり、比べたりする時、
相当温位は、飽和・凝結している空気塊の性質を考えるときに便利な物理量です
さて、何でもそうなのですがまずは「言葉の意味=定義」を正確に捉えましょう
①温位
ある空気塊を乾燥断熱的に1000hPaまで下げた温度
②相当温位
・空気塊が含む水蒸気がすべて凝結・放熱して昇温する効果
・基準気圧1000hPaまで断熱変化した時の断熱昇温効果
以上、2つの効果考えた温度(の値)
要は「温位+空気塊が含む水蒸気がすべて凝結し昇温する効果」です。
とにかくまずは温位と相当温位の意味を確実に押さえてください
まず、温位から考えていきましょう
温位は、「断熱変化をする限りその物理量は保存」されます
要は「(ある)温位の値は、乾燥断熱変化をする限り、その値は変わらない」ということです
いろんな「飽和していない空気」を1000hPaで比べるので、
「未飽和空気の本当の状態」を知ることが可能です
たとえば
①上空1000メートルで10度
②上空2000メートルで10度
この2つの未飽和空気塊の温位を比べています
乾燥断熱減率(1度/100m)で1000hPaまで下げると
①の空気塊は20度
②の空気塊は30度
②の空気塊のほうが温位が高いというのがわかります
(本来温位は絶対温度で計算すべきなのですが、
わかりやすくするため摂氏の温度にしています)
またこの勉強をしていく途中で
「地上の温度に比べて、上空の温度が低い」のに
「大気が不安定」じゃないのはなぜ? とよく聞かれます
ここでも温位が役に立ちます
①地上A地点の気圧を1000hPaとし、気温が10度とします
②またそのA地点の上空1000mの気温が5度とします
その上空では未飽和とします
さて、この時
上空が冷たいのになんで大気の状態が不安定じゃないの?
という話になります
繰り返しになりますが
温位は「ある空気塊を乾燥断熱的に1000hPaまで下げた温度」でした
なので
①A地点の温位も10度です
(1000hPaにありますので値はそのまんまです)
②上空1000mの5度の空気を地上1000hPaまで下げると
乾燥断熱減率で下がるので10度上がって、「15度」になります
これが上空1000mの②の空気の「温位」です
ということは、
上空では5度だけど、温位が15度で、地上よりも温かいため
下降してこないということなんです(大気の成層が安定している)
温位は未飽和の空気塊の状態を考えるときに役立ちます
(安定か不安定など)
相当温位は
・空気塊が含む水蒸気がすべて凝結・放熱して昇温する効果
・基準気圧1000hPaまで断熱変化した時の断熱昇温効果
以上、2つの効果考えた温度(の値)です
また相当温位は乾燥断熱変化でも湿潤断熱変化でも保存(値が変わらない)されます
なぜなら相当温位は「凝結熱で温まった空気塊の温位」と考えるため
空気塊の「水蒸気が0」なら、凝結熱が発生しないので「凝結熱も0」ということで
「温位=相当温位」です
空気塊の水蒸気量が多いほど、「温位<相当温位」になります
相当温位は「大気の不安定度」を考えるときに非常に役立ちます。
実際の気象を予報するときに、それ専用のデータもあります。
改めて温位を考えていきましょう。
温位=空気塊を乾燥断熱的に1000hPaの高度に移動させたときの温度
・乾燥断熱変化するとき、温位は一定=保存
・温位θ 絶対温度Tに比例 気圧Pに反比例
温位と絶対温度の関係だけなら普通は上空に行くにしたがって温位θと絶対温度Tは下がるのですが、実際にはそれ以上に「気圧Pの反比例」の効果のほうが大きいのです
ですので、上空に行くにつれて温位が上がりますが、
上空に行くにつれて温度の下がり方は小さくなります。
つまり、上空に行くにつれて「気圧と反比例」という効果がより効いている証拠です
相当温位は
・空気塊が含む水蒸気がすべて凝結し放出した潜熱が空気塊を加熱昇温する効果
・基準気圧1000hPaまで断熱変化させたときの温度
以上のことから、
温位の増加は潜熱加温ではなく
温位と気圧が反比例効果にあることで増加するということです
⑦大気の力学
問題文より「上面:側面の空気密度の比が4:5」であるのに、上面を通る鉛直流の風速が5Vになるのはどうしてですか?
上面から出ていくので、上面の密度の比の4Vだと考えてしまいます
(問題)
図のように,大気中に一辺の長さが L の立方体の領域があり,その四つの側面を通して密度ρの
空気が面に垂直な一定の風速 V で内部に吹きこんでいる。このとき,単位時間に四つの側面を通
して立方体に流入する空気の質量は(a)で表される。また,立方体内の大気の質量は時間的に変
化せず底面を通した空気の流入・流出はないとすれば,立方体の上面を通る鉛直流の風速は(b)
となる。ただし,立方体の上面,側面,底面における平均的な空気密度の比は 4:5:6 であるとし,
鉛直流の符号は上向きを正とする。
(問題解答)
立方体に流入する面は、側面(4面)のみです。1つの面(面積はL×2=2Lとする)には、速度Vで
密度ρの空気が吹き込むので、その流入量は、V×ρ×L2です。それが 4 面あるので、4×V×ρ
×2L となり、(a)は③か④となります。
一方、流出は上面のみです。ここで注意することは、但し書きにある「立方体の上面、側面、底面
における平均的な空気密度の比は4:5:6」という文言です。側面から流入した風速の合計は4×
Vですが、上面と側面の密度の比は4:5なので、上面を通る鉛直流の速度は5×Vとなります。よ
って、正解は④となります。
(さらに解説)
問題文より
上面:側面の空気密度の比=4:5
風が入ってくるのは側面のみ
⇒4V
風が出ていくのは上面のみ
答えは5Vなのはなぜなのか…
問題を考えるとき
側面から入ってくる風の量と上面から出ていく風の量は
同じにならなければいけません。
例えば掃除機で、吸い込む風の量と、排気の量が同じじゃないと
掃除機が調子悪いか、壊れるのと同じです
上面:側面の密度の比が4:5だから
上面の風は「4V」と考えたようですが…
側面の風速が「5V」なら比の値から、わからんこともないです(まちがいですが…)
上面の風が4V、側面の風も4V。
比例させるなら矛盾しています。密度や比が全く反映されないことになります
ここで密度の意味を考えましょう
密度=単位体積あたりの重さです
例えば同じ大きさの箱があるとして
密度が4:5だとすると
同じ大きさのパンがあるとして
密度が4:5とすると
4のほうが「少しスカスカ」で軽いはずです
同じ重さにしようとすると
4のほうのパンを少し多くしないといけませんよね?
(フランスパンのような同じ形のパンを考えたとき
スカスカの方のパンの長さを長くすれば重さがおなじになるはずです)
密度は「単位体積あたりの重さ」と言う話をしました
密度(ρ)と体積(V)と重さ(質量:M)の関係は
密度=質量÷体積
ρ=M/V です
さて本題に入りましょう
①
側面から入っていく風の量(体積)と
上面から出ていく風の量(体積)が同じじゃないといけません
(風は空気なので重さは同じ この問題では計算上無視できます
無視できる場合は「1」と考えておけばいいです)
②
また問題文より立方体なので
そのため、側面と上面の入っていくところの面積は同じです
立方体や直方体の体積は「面積×高さ」
(この問題では上面の面積と側面積が同じです)
この「高さ」のところを「風の速さ」と考えるのです
この①と②を先程の式にいれこむと
密度=重さ÷体積
=重さ÷(“上面面積or側面積”×高さ)
③
重さと面積はこの問題は同じなので計算上、無視できるので
仮に1としておきます
また高さは「風速」です
密度=1/風速
また
風速V=1/密度
⇒風速と密度は単純に反比例の関係なのです
④ということで
上面:側面の密度比が4:5でした
逆に
上面:側面の風速比は5:4の反対になれば合うわけです
上面=□ 側面=4V
5:4=□:4V
□=5V
こういう解き方です
もう一つの考え方です。
側面から入る風の量は
側面の面積×高さ(風速)
上面から出ていく風の量は
上面の面積×高さ(風速)
側面と上面の面積が同じなので無視して風速だけを考える
この問題で
風速と密度の関係は
風速=1/密度でした
また側面から入る風速
4Vなので
4V=1/5
上面から入る風速□は
□=1/4
これが同じになればいいわけです
□=5Vです
実はダウンバーストなど風の問題で
側面積(などの面積)×高さで風の量を出すときに
高さを風速でみなす問題、結構出ます
コリオリの力
・地球の自転による見かけの力(慣性力)です
例えば、車に乗っていて急ブレーキがかかったとします
・車は停車しますが
・乗っている人たちは進んでいる力が
そのまんま働きますので「前に投げ出される」ような感じになります
⇒これが見かけの力(慣性力)です。
このような力が地球の自転によって働き、北半球では、進行方向に向かって右向きに働きます。
これが「コリオリ力」です(南半球では逆)
おそらく試験で単独で聞かれることは無いと思いますが
角速度=回転の速さです。
地球を北極点の上空から見たとき
例えば時点で角度で30度回転したとします(これが角速度)
同じ30度回転したとしても
北極に近いところと、遠いところで
進む距離、進む速度に差ができます
これが「コリオリ力」が生まれる理由です
またコリオリ力は高緯度で大きく、低緯度では小さく、赤道は「0」です。
北極点に立ったら、回転しているのは実感できますが、赤道では自転しているのがわからないと思います
コリオリパラメータは覚えましょう。
ただ、漫然と覚えるのではダメです。
その意味を理解しないと意味がないし、頭に入りません(他の式にも言えることです)
f=2Ωsinφ
Ωが角速度 φが緯度です
先程赤道ではコリオリ力が「0」になると言う話が出ました
sin0°=0なので コリオリ力fも「0」になります。
式がわかれば、その理由もわかりやすいですよね
角速度自体は存在しますが、それに緯度の要素が掛け合わされることで
コリオリ力の意味がきちんと出ていると思います
コリオリ力は今後、偏西風などに関係する地衡風を始めとした風の計算で必要です
地衡風など、大規模な大気の運動を学びますが、
自転効果(コリオリ力)が大規模な大気の運動ではなく
コリオリ力が大規模な大気の運動に影響すると思ってください
なお、計算させるときは
コリオリパラメータ自体に数字が与えられたり
角速度Ωは数字が与えられるはずです
サインやコサインについては
角度が、0度、30度、45度、60度、90度の数値を
覚えておいたほうがいいかと思います
(サインコサインは別のときにも出てくるので)。
気圧傾度を考えるときに「層厚」を思い出してください。
例えば「500hPa」の同じ等圧面として北半球で
高緯度(北極に近い方)と、
低緯度(赤道に近い方)だと、層厚は北極に近いほうが、気層の平均気温が低いため層厚は小さいです
そのため高度が低いです
また、赤道に近いほうが、気層の気温が高いため層厚は大きいですそのため高度が高くなります。
赤道に近いほうが高度が高くなる分、
高くなった分だけ余計に空気の重さがかかります
そのため、高高度のほうが気圧が高く、「高気圧」になるのです
そのため、気圧傾度に差ができて
赤道に近い高高度から、北極に近い低高度に気圧傾度力が働きます
摩擦力がおよばないところで吹く風です
自由大気と言ってもいいでしょう
上空の流れ(わかりやすく言えばジェット気流など)が
直線であれば「地衡風」
曲線であれば「傾度風」と思っておけばいいでしょう
上空の高圧部や低圧部、台風などが「傾度風」の扱いになります
復習を兼ねて改めて
学習した地衡風、傾度風、地上風、旋向風の定義を復習しましょう
地衡風:コリオリ力・気圧傾度力の釣り合い
傾度風:コリオリ力・気圧傾度力・遠心力の釣り合い
地上風:コリオリ力・気圧傾度力・摩擦力の釣り合い
旋向風:気圧傾度力・遠心力の釣り合い
ここで
地衡風(コリオリ力・気圧傾度力)を基準にしてみると
傾度風:地衡風+遠心力
地上風:地衡風+摩擦力
と考えてもいいかもしれません
風は「気圧差」や「温度差」がある所に発生します
また基本的に高いところから、低い所に向かって吹きます
さらに傾斜がある面でボールを転がすことを考えると
傾斜が大きいほうが早く転がりますよね?
風も同じで
気圧差や温度差が大きいほうが風速が大きくなります
それに自転などいろいろな要素が加わって
地衡風や温度風は等高度線にほぼ平行に吹くわけです
さて温度風について高度がたかくなるにつれて風速が大きくなることについては
こちらの図も参考にしてください
・大気の等圧面と等圧面の間の「気層」を
「気層の厚み」=「層厚」といいます
たとえば800hPaと900hPaの気層の厚み「層厚」とかそんな感じですね
この「層厚」は一様ではありません
なぜなら、高緯度と低緯度では温度が違うからです
高緯度は気温が低いため、相対的に「層厚」が小さいです
低緯度は気温が高いため、相対的に「層厚」が大きいです
(温度が高いと体積が大きく、低いと体積が小さくなりますよね?)
それが積み上がっていくとどうでしょう?
高緯度と低緯度の層厚の差が
高度が高くなるにつれて、大きくなるのがわかるでしょうか?
そうなると「勾配」も大きくなって温度風の風速も大きくなるのです
まず接地逆転層も含めた3種の見分け方からです。
①接地逆転層ー放射冷却で地面が冷やされることでできる
・気温
地面のところの気温が低く、上空に向けて気温が上がっていく
なので地面付近からすでに逆転層となっている
また厚みはそんなに厚くありません
・湿度
よく晴れた日に発生するので、湿度は全部の層にわたって低い
露点温度はかなり低く、気温の変化のグラフとはかけ離れた場所にある
②沈降性逆転層ー高気圧などの下降流によって空気が沈降して断熱圧縮・昇温することで発生
・気温ー地上から上空に向けて一旦気温は下がるが
下降流の影響を受ける上空で断熱圧縮・昇温するため
途中で気温が上がり、逆転層が発生する
位置的には上空1000mより上が多いようです
・湿度ー逆転層より下はわりと湿潤
逆転層あたりから上は乾燥(加熱によって蒸発)
③前線性(移流)逆転層ー前線通過などで冷たい空気の上に暖かい空気が乗ることで発生
・気温ー前線面で発生することもあり、上空で発生する
1000mより上になることが多いようです
・湿度ー逆転層から上で湿潤
それぞれの見分け方は
・逆転層がどこに発生するか
・湿潤域がどこにあるか
沈降性と前線性の大きな見分け方はそこになるかと思います。
緯度1度≒111.1km.です。
1海里はその60分の1なので、111.1km÷60≒1.852km(1852m)になります。
緯度1度≒111.1km.と1海里≒1.852km.(1852m)は覚えましょう。
⑧大気の大規模運動
プラネタリー波 波長1万km以上で、波数が1〜4ですが 傾圧不安定波は波長が2000〜5000km 波の数は3〜8と言われています。ザックリ倍と思っておけばいいかと思います (試験で問われるのは波長だと思います)
ほぼご指摘のとおりです。
特に濃度が高いのは極よりちょっと手前の緯度になります
冬季の極付近の成層圏では極渦・極夜ジェットという強い偏西風が吹くため
それより極側に輸送できないためです
あと成層圏中、上層に夏極から冬極への循環があるので最終的には冬極の極の近い所にオゾンの濃度の極大域ができます
ブリューワー・ドブソン循環
①対流圏の赤道付近である低緯度で対流活動が盛んなため
上昇気流が発生し、対流圏界面の高度が高い
②それに押し上げられる形で
成層圏下部から両極側に向かう流れが浮かぶ
(これによってオゾンは両極側に運ばれるわけです)
②成層圏の夏極では、白夜で終日オゾンを始めとした大気が加熱
⇒気温が高くなることで、上昇流が生まれる
③上昇流にのった空気塊が中層(中間圏)に達する
④成層圏の冬極では極夜(終日)夜で大気が冷やされる
⇒気温が低くなるため、下降流が生まれやすくなる
⑤②と④から成層圏では
「夏極側の上昇流」と「冬極側の下降流」のバランスから
中間圏では夏極から冬極への流れが生まれる。
参考:イメージしやすい図がこちらにあります。
お天気ネタ
2023年春、スギ花粉が去年よりも非常に多く飛ぶというニュースを
各局報道しています。
実は、花粉の飛ぶ量は
前の年の夏に大きく影響されるって
知っていましたか?
花粉が多く飛ぶかは前年の夏による
スギは一本の木に雄花と雌花が咲きます。
花粉を飛ばすのは雄花です。
スギの雄花。見ているだけで目が痛くなってきます。
花粉の飛ぶ量は、前年夏の、以下の条件に影響されます
- ①日照時間が多いこと(降水量が少ないこと)
- ②気温が高いこと
晴天が続き、太陽の光をたくさん浴びることで
スギの成長が促され、多くの雄花が作られ、翌年の花粉の飛ぶ量が多くなります。
逆に、雨や曇りの日が多いと、
翌年の花粉の飛ぶ量は比較的少なくなります。
2022年夏はどうだったか
2022年夏の印象といえば「空梅雨」と「猛暑」ですよね。
6月は雨が少なく、びっくりしました。
参照:気象庁
7月や8月もうだるような暑さが続き、
人間はバテバテですが、スギの花にとっては成長の良い機会となりました。
余談ですが、
花粉は、飛ぶ量が多い年と相対的に少ない年が交互に来ているみたいです。
西暦が奇数年は花粉が多い年、偶数年は少ない年とのこと。
2023年は奇数年なので、飛ぶ量が多い年にあたりますね。
花粉がよく飛ぶ天気
春が来て、花粉の飛散が始まっても、
その中でよく飛ぶ日と飛びにくい日があります。
よく飛ぶ日は、
晴れて空気の乾燥している日 です。
雨が降ったり、空気が湿ったりしていると、
花粉が遠くまで飛びづらいのですが、
空気が乾燥していると遠くまで飛ぶことができるため、
花粉症の症状の方は注意が必要です。
例えば、こんな天気の日は花粉がよく飛ぶ可能性が高いです。
参照:気象庁
春の移動性高気圧は
穏やかに晴れて、空気が乾いていることが多いので、花粉を飛ばすには絶好の気圧配置となっています。
この時期、テレビやネットで「高気圧に覆われるでしょう」という単語を聞いたら、その日は花粉注意ですね!!
関連記事:予報士アカデミー過去記事「春や秋には移動性高気圧や温帯低気圧が周期的に通るのはなぜでしょうか」
2023年花粉のピーク
スギ花粉は2月末から徐々に飛び始め、2023年の飛散のピークは、
日本気象協会によると、
福岡で2月下旬から3月上旬、高松や広島、大阪、名古屋では3月上旬から中旬の予想となっています。
金沢、東京、仙台では3月上旬から下旬のようですね。
ピークのときには、1平方メートルに1000個以上(!)の花粉が飛ぶ日もあります。
・・・みちみちですよね・・・。
===
スギ花粉のピークが終わる頃になると、ヒノキ花粉のピークが始まるため、
花粉症の方にはつらい時期が続きますが、
少しでも快適に過ごせるように、次に対策を記載しました。
花粉症を少しでも和らげるために
花粉症対策としては
- ①出かける際にマスクやメガネ、帽子を着用する
- ②花粉が付きづらい服を着る(ポリエステル素材など)
- ③帰宅時に服や髪を払って、花粉を家の中に入れない
- ④洗濯物の外干しを避ける、もしくは取り込むときによくはたく
などがあります。
2月から5月ごろは花粉の時期ですが、
天気も安定して、気持ちの良い季節になるため、
ぜひ万全の対策をなさって、お出かけを楽しんでみてはいかがでしょうか
気象予報士ががんばってできる花粉予測
ちなみにですが、花粉の観測・予報ってどうやってできていると思いますか?
それは気象予報士の努力なんです!
「今週は花粉が多い」「明日は花粉が少ない」などの花粉情報は、天気予報のデータと実際に飛散している花粉の量などいろいろなデータをもとに作られます。
では、実際に飛散している花粉の量をどうやって調べるかと言うと…。
ビルの屋上などに花粉が着くようにワセリンを塗ったプレパラートを置いておきます。
それを一日放置し、翌日に1センチ四方のプレパラートに着いた花粉をひたすら数えます!
野鳥の会の方が使うようなカウンターをカチカチならしながら。
各地で気象予報士(もしくは会社のスタッフ)が数えたその情報を日々集め、ピークが終わった、まだまだこれから!などの予測に役立てます。
私は花粉症ではなかったのですが、やはりスギ花粉ばかり見ていたら鼻がムズムズした感じになってました。
気象予報士ががんばってる花粉情報、ぜひ生活にお役立てくださいね!
〈参考〉
モンスーンとは「季節風」のことです。アラビア語で「季節」を意味する「mawsim(マウスィム)」に由来します。
季節風とはその季節においては、ある程度同じ向きに吹く風のことで、アジアモンスーンは、東南アジアにおいて,夏場は南西から,冬場は北東から吹く季節風です。
気象予報士試験では梅雨の問題にアジアモンスーンが関わってきます。
モンスーンが起こる要因
モンスーンが起こる要因は、大陸と海洋の気温の差です。
水は比熱が大きく、1℃上昇するためには多量の熱が必要です。一方で、陸地は比熱が小さく、1℃上昇するのには水よりも少ない熱量ですみます。
ですので、海洋は陸地より温まりにくく、冷めにくくなっています。
そのため、季節によって陸地と海洋の地表面・下層大気に温度差が発生します。
例えば、夏の日中に海水浴に行くと、砂浜はやけどしそうなくらい熱くなっていますが、海水は25℃程度で、熱くはありません。陸地は温まりやすく、海水は温まりにくいために発生する現象です。
海と陸で気温の差が生まれるということは、気圧が変わるため、そこに高気圧、低気圧ができている状況となります。
例えば夏場は陸地が温められて、空気が上昇します。気圧が下がり、低気圧が発生している状況です。一方で、海は気温が低く、空気が下降し、高気圧となります。
そうすると、風の循環が生まれます。海陸風とメカニズムは同じです。海陸風は日中と夜間で風の向きが逆転しますが、同じ現象が一季節続くのがモンスーンです。
アジアモンスーンのスケール
では、実際にモンスーンはどこで発生するのか。今回は梅雨に関係するアジアモンスーンで考えていきます。
アジアモンスーンの成因は、ユーラシア大陸が熱されて気温が高くなり、その周辺の海洋との気温の差が季節的に大きくなることです。
特に、とても広いチベット高原やとても高いヒマラヤ山があることで、強い日射を吸収しやすくなって、大気の加熱を促進しています。
ですので、アジアモンスーンのスケールはとても大きく、水平スケールで1万kmほどです。アジアモンスーンは存在するモンスーンの中でももっとも大きいと言われ、とても広い範囲に影響があって、インドから東南アジア、中国を経て、日本付近にまで至るものになります。
(予報士を勉強している人へ⇒アジアモンスーンのスケールは、2000km~5000kmくらいの傾圧不安定はよりもはるかに大きく、超長波と呼ばれるプラネタリー派と同じくらいですので、しっかりそれぞれの規模を覚えておきましょう)
アジアモンスーンの影響
みなさんの梅雨ってどんなイメージですか?
この質問をすると、西日本から西の地域と、東海から北の地域で答えが変わる傾向があります。西日本から西の地域の人は「梅雨って言えばどしゃ降りの雨のイメージ」と答え、東海から北の地域の方は「何言ってるの、梅雨はしとしと雨でしょ?」となります。
それはなぜか?そこにアジアモンスーンが影響してくるのですが、西日本から西の地域では梅雨時期に梅雨前線が停滞し、そこにアジアモンスーンの影響で暖かく湿った南西風が吹きつけるために、梅雨前線の活動が活発になります。
このアジアモンスーンの影響は西日本くらいまでのことが多くなるので、梅雨時の雨の降り方が同じ日本でも変わってくるのです。
遠く離れた地域の地形や大陸の存在で生じる風ですが、日本にも影響を及ぼしています。
気象予報士アカデミー受講生のSさんより街中で見かけた「吊るし雲」の写真をいただきました。
ゴルフの打ちっぱなしの建物の上にUFOのように浮かんでいる雲。これが「吊るし雲」です。
おおこれは、吊るし雲ですな。ラッキーですね!
山の上ではなく、建造物の上にですか。珍しい。
住宅地に突如現れた吊るし雲。講師陣も驚いていますね!
そこで今回は吊るし雲について解説します。
吊るし雲とは
そもそも吊るし雲とは何でしょうか。
吊るし雲とは気流(風)が山などの高さがあるものを超える時に生じる、風の波(山岳波)によってできる雲の一種です。
山(風を上昇させるもの)があるとできる雲としては、笠雲と同じ部類の雲です。
高さがあるほど、風が上昇し、雲ができやすいので、富士山などをはじめとした高い山の周辺で多くみられますが、まれに、こうやって地上にある建物の上空に現れることもあります。
「吊るし雲」の名前の由来は、一度出現するとほとんど動かず、その場所で「吊るされている」ように見えるため「吊るし雲」と言われるようになったという説があります。
形がかなり珍しく、特徴的な雲ですので、UFOに間違われたり、ラピュタの世界のようだと言われたり、地震の前兆、天使の雲、恐怖の雲など様々に表現されています。
吊るし雲のでき方
それではどうやったらこんな形の雲ができるのでしょうか。
それには「風」と「高さがあるもの(山など)※以下「山」と表記します」が必要になります。
風が吹いてきて、山にぶつかると風は山を避けるように、上向き、横向き、下向きに分散します。
その「上向きの風」は上層に行くほどどんどんと冷やされるので雲になります。この雲は「笠雲」になります。
次に、山にぶつかって上昇した風は、山を乗り越えた後、さらに上昇するものや、下降するものに分かれます。
山にぶつかったせいで、波動が乱れるんですね。
その中でも、山を越えた後、いったん下降し、その再び上昇した風(空気)が冷やされてできる雲が「吊るし雲」になります。
何やら渦を巻いているように見える形ですが、これは渦を巻いているわけではありません。
高さによって分かれた層状の雲が重なって、このように渦を巻いているように見えるときがあります。
ですので、なんだかこの雲の下では、突風が吹いていたり、竜巻が発生していそうにも見えますが、地上にそういった現象をもたらす雲ではありません。
ただ、この吊るし雲が現れる=上空はかなり強い風が吹いていることになりますので、山に登る時にこの雲が現れていると注意が必要です。
また、吊るし雲を見たらこの後どんな天気になるでしょうか。
かさ雲や吊るし雲が現れると雨が降る?
「かさ雲や吊るし雲が出ると、雨が降り出す」と言われていますが、本当でしょうか。
はい、山に近くでは、かなりの確率で本当の時が多いです。
というのも、かさ雲や吊るし雲が現れる時の条件は、
・上空の風が強い時
・ある程度湿った空気が存在する
の2つがあるときで、こういう時は低気圧や台風、前線の接近などの場合が多くなりす。
特にかさ雲よりも吊るし雲のほうが湿った風が入った時にできやすいので、吊るし雲があったほうが雨の確率が高くなります。
いずれにしても、これらの雲は雨が降る前兆として現れることが多くあります。
これは国土交通省のWEBサイトから引用させていただきますが、富士山にかさ雲がかかった後の天気は24時間後までに雨になる確率は
春秋冬が70%
夏は約75%
さらにかさ雲と吊るし雲が同時に現れると80%~85%で雨が降るそうです!
かさ雲、吊るし雲が現れる時間帯は?
雲や霧によっては朝や、日中、夕方など、現れやすい時間帯があるものもありますが、かさ雲、吊るし雲は出やすい時間帯はあまりありません。朝焼けでピンク色の吊るし雲や、夕焼けでオレンジ色の吊るし雲、また、夜間に月明かりに照らされる吊るし雲もあります。
この吊るし雲の存在を知らないと、いきなりこんな雲が現れたら「何かの予兆か?!」と驚いてしまいますよね。
吊るし雲は地震の予兆?
吊るし雲が出ると「地震の予兆ですか?」ともよく聞かれます。
令和の現在ですが、今のところ、地震と雲の関連性を発表している公の機関はありません。
というのも、地震は日本の陸地だけでなく、海外の陸地や海上を含めると、大なり小なりいつでも起こっています。
また、吊るし雲のように変わった形をした雲も、大なり小なり、どこでも発見されています。
大きな地震が起こって、たまたま吊るし雲があった、竜が昇っているような雲があった、一面に真っ赤に輝く雲があった、となると「地震雲だ」と紐づけて考えられることが、昔からあります。
もともと、「地震雲」は、1948年に発生した福井地震を、鍵田忠三郎氏(元奈良市長など)が事前に地震雲で予知して的中させた、と発表されて以来、日本で「地震雲」という名前が広まったようです。
しかし、その後、気象庁は「地震雲は存在しない」という意見を紙面などでも発表していて、現在の気象庁のWEBサイト「地震雲はあるのですか?」のページにも、地震と地震雲の関連はないという内容が掲載されています。
ただ、今後、研究され続け、観測技術も向上するなど、もっともっといろいろなことがわかるようになってくると、100%違うと言えなくなるかもしれませんね?!
吊るし雲とレンズ雲との違いは?
これも良く聞かれますが、吊るし雲とレンズ雲は同じです!
レンズとは学術名「Lenticularis」でラテン語で「小さなヒラ豆」を意味するそうです。
ヒラ豆??
ちょっとイメージがしずらいので、Wikipediaに頼りますと、レンズはこのような形。※Wikipediaより「レンズページ」より引用
これが横向きに広がっているように見えるので「レンズ雲」でしょうか。
また、「レンズ雲」は世界気象機関(WMO)で表記されていますが、吊るし雲は日本だけで使われている言葉のようです。
吊るし雲は天使の雲?悪魔の雲?
たまに海外から届いた大規模な吊るし雲の写真を見るとびっくりすることありますよね。
特に、アメリカなどの大陸で発生する吊るし雲は、かなり大きいですし、形も大きな渦を巻いていて、まるでブラックホールに飲み込まれるかのような迫力で、映画のCGのようです。
ですので世界各国で「天使の雲」とも「悪魔の雲」とも言われています。
これは見た人が決めていいですよね!
吊るし雲を見たら、ラッキーなことがありそうだと思うのか、不吉なことがあると思うのか。
ラッキーなことがありそうだと思えるように今日も前向きにがんばりたいところです。
みなさん、富士山レーダードーム館に行ったことありますか?
私は気象予報士になってかなりの年月がたちましたが、今回初めて行ってきました。
気象に興味がある方は絶対行ったほうがいい!テンションがあがりまくった施設でしたので館内の様子を少し紹介します。(写真掲載許可確認済みです)
富士山レーダー・富士山レーダードーム館とは
富士山レーダーは日本の10大発明とされ、故八木秀次博士らによって開発されました。
まだ日本に大規模なレーダーが少なかった頃、1959年伊勢湾台風で死者行方不明者5,000名という大災害が発生しました。
これを受けて台風の被害を減らすためにも、台風の位置を正確に把握することが社会的急務となっており、気象庁が気象レーダーを設置を促進することとなりました。
そこで選定されたのが富士山です。全方向にわたってレーダーの電波が山岳で遮られることがないという観点で、従来から測候所があった富士山測候所にレーダーを増設することとなりました。
現場の気象条件は過酷であるため、工事は難航し、レーダーの設置を請け負った三菱電機がヘリコプター輸送を行いようやく設置に成功したそうです。
この富士山レーダーのおかげで日本の気象観測の技術は大幅に進化しました。
富士山レーダーは35年間観測を続けた後、気象衛星「ひまわり」などにその道を譲って、1999年にその役目を終えて、今は隠居生活を送っています。
その富士山レーダーを保管しているのが富士山レーダードーム館です。
2022年に展示内容をフルリニューアルして、富士山レーダーの歴史や気象観測に加えて、天気予報や、防災コーナーなどが増えました!
場所は富士吉田の道の駅の隣にあって、富士山や富士五胡周辺の観光がてらに立ち寄れる立地です。
2022年にリニューアルされたとあって、どこもきれい!インスタ映えする!(と、このフォトスポットでそう思うのは予報士だけでしょうか?)
館内の様子
館内は3階建てで、
1階は映画放映のシアターと防災コーナー
2階は気象と富士山コーナー
3階は気象レーダーがあります。
しっかり見ようと思うと所要時間1時間では足らないかも…。でも、観光がてらに立ち寄るのであれば30分でも時間があれば楽しめると思います!
映画放映(シアターコーナー)
入るとすぐに流れている音楽が聞こえてきます。中は小さい映画館のようになっています。
シアターでは10分ごとに上映されている、富士山レーダードーム館の見どころ。
そして、10時、13時、15時に50分かけて上映される~富士山頂9,000人のドラマ~として、建設当時、働く人たちの苦労や、成功までを描いたNHKのプロジェクトXが放映されています。
私は時間的に観られなかったのですが、口コミサイトのトリップアドバイザーなどではこの映画が良かった!という意見が多く、「気象衛星がない時代に富士山レーダーがあることで台風予報に威力を発揮していました。まさに人命を守るためのレーダー。改めて富士山レーダーの建設秘話を知るととても心に響きます」などとコメントがありますね。
見たかった。
防災学習コーナー
防災学習コーナーは子どもにもわかりやすく、イラスト付きだったりクイズがあったり、体験型があったりと内容が濃い!
線状降水帯や、バックビルディング現象などの説明もあって、大人も勉強になります!
こうやって災害をわかりやすく、体験型で勉強できるのって大切ですよね。
台風の仕組みのコーナーでは、アイウォールやスパイラルバンドなんて気象予報士試験レベルの話も!
台風で起こる災害。これもまさに気象予報士試験に問われる内容!
気象と富士山コーナー
ここはまさに気象予報士試験の勉強になることがたくさん!
高層天気図の説明もあるではないか!
過去、最も被害が大きかった台風、伊勢湾台風コーナー
富士山レーダーが設置されるきっかけになった、伊勢湾台風の被害の規模の大きさがわかります。
実際の写真をめくって見られるなど、子どもが興味を持つ工夫がされています
天気図のコーナーも。
関東に雪を降らせる南岸低気圧パターン、急速に発達する低気圧のパターンなどは気象予報士試験でよくでる事例です。
気象衛星やラジオゾンデ、気象レーダー、対流圏、成層圏、中間圏、熱圏などなど、これは学科一般、専門で出題される分野ですよね。
気象予報士を勉強している人は、こういうところに友達や家族と行って「これ、わかる」ってほくそ笑むようになりましょう。
雨量計、風速計、気圧計もいろいろボタンを押して遊べます
お天気のことわざパネルなどもあって、本当に情報が盛りだくさん!
「富士山気象観測のあゆみ」コーナーでは、富士山レーダー設置までの苦難が時系列に書かれていて、ドラマを感じます。
無事にレーダーが稼働した瞬間、「だが、泪は湧いてこなかった」かっこいい~!!
当時の富士山測候所の再現。
当気象予報士アカデミー受講生のYさんから、「暴風が吹き荒れる富士山の過酷な環境下でのミッション、大蔵省と気象庁、製造メーカーの入札を巡る駆け引きが、リアルに描かれていますよ!」とこの本を薦めていただきました。すっかり富士山スイッチが入ったので読んでみようっと。
そして富士山測候所のいま
富士山山頂の寒さ体験が面白い!
富士山レーダードーム館の人気コーナー!富士山頂の寒さが体験できるコーナーです。
2つコースがあります。
①ご来光コース
山頂付近の7月頃の体感 風速10mで体感温度マイナス15℃
②ブリザードコース
山頂付近の3月頃の体感 風速15m
風速1mにつき、体感温度は1度下がりますよね。
私はもちろん②のブリザードコースを選択。
中に入ると、富士山頂を歩く観測隊の映像が流れて、風が吹いてきて、本当に寒い!!
中で風が吹いてくる様子がわかるようにと、自撮りの動画も取ったのですが、寒さと風で顔がすごいことになってさすがにアップは差し控えます。
1分くらい富士山頂の寒さを味わった後、館内に戻ると温かさで体温が戻って体中の血がふわ~と流れる感覚でした。
富士山レーダー・富士山コーナー
富士山の特別な気候では、年間の雪の深さが。
こんなところに観測所を作る工程は本当に大変だったでしょうね…。
富士山でみられる現象コーナー。
そしてこちらが富士山レーダー!
今は観測はしてないですが、クルクル回っている姿を下から仰いでみることができます。
ここからマイクロ波をパルス間隔で射出するんですよね。
そして雨や雪の粒にあたって戻ってきた電波から降水強度などを観測するんですよね。
気象予報士を勉強する人はこのレーダーを見て、試験にはどんな知識が必要なのか、イメージしてみてください。
気象レーダーの変化コーナー。
気象レーダーは年々進化しています。気象予報士試験の専門は過去問が古くて使えないのがリアルにわかります。
階段を上って3階にたどり着くと、富士山ならではの気象現象の紹介が。山岳派が発生するから富士山には吊るし雲やかさ雲が発生しやすいんですよね!
富士山も拝めるナイスビュー!
3階は外に出ることもできます。
ちょうど雲の隙間から富士山が!
気象予報士を目指している人も、そうでない人も、大人の社会見学ができてとても楽しめるので、ぜひ行ってみてください!
富士山レーダードーム館営業情報
※2023年6月現在情報 最新情報は公式HPをご確認ください
住所 | 〒403-0006 山梨県富士吉田市新屋3-7-2 |
電話番号 | 0555-20-0223 |
営業時間 | 【営業時間】 9:00 ~ 17:00 最終入館 16:30 |
休業日 | 火曜日 |
料金 | 【 単館券:個人 】 大 人 630円 小中高生 420円 未就学児 無料 |
ブルーモーメント
「バックビルディング現象」は「線状降水帯」のメカニズムの一つです。 でも、意外とそのしくみを知らない方も多いのではないでしょうか。もうすぐ梅雨を迎える、今だからこそ知っておきたい「バックビルディング現象」について迫ります!
目次
「バックビルディング現象」を引き起こす雲とは?
そもそも「雨雲」ってどんな雲?
「バックビルディング現象」の前に…そもそも雨雲とはどんな雲なのでしょうか?
「今日のお天気はどうかな?」「洗濯物は外干しOK?」
気象庁だけでなく、民間の気象会社からもお天気アプリ等によって、気象に関するさまざまなデータが日々配信されています。
「雨雲レーダー」を見れば、いつ頃、どの場所で、どの程度の雨が降るのか、おおよその見当をつけることもできますよね。
では、この「雨雲」ってどんな雲なのでしょうか?
雲は、できる高度と性状から国際雲分類表で代表的な十種類に分類されており、これを十種雲形といいます。このうち、まとまった雨(降水現象)を降らせるのが、「乱層雲(らんそううん)」と「積乱雲(せきらんうん)」です。
性状とは雲の性格のようなもの。
層状雲(そうじょううん)の代表「乱層雲」はしとしと雨、対流雲(たいりゅううん)の代表「積乱雲」は※ザーザー降りのような雨が特徴です。※雨の強さの表現は気象庁で定義されています。気象庁:雨の強さと降り方
この性格の違いをもたらすのが、雲のできかたの違いです。
左)対流性の雲の代表【積乱雲】 上昇気流の速さは1~10m/s。雲が発達する段階では強い上昇気流により、雨粒のもととなる水滴(降水粒子)がなかなか落下できません。雲内でどんどん成長し、上昇気流でも支えられなくなると、大きな雨粒となって落ちてきます。
右)層状性の雲の代表【乱層雲】 上昇気流の速さは数cm/s~十数cm/s。暖気が寒気の上をゆるやかに昇っていきます。上昇気流も弱いので、雨粒のもととなる水滴が大きくならずに落下してきます。
「積乱雲」について知ろう!
「今日は大気の状態が不安定なので、急な雷雨や突風にご注意ください」
よく天気予報で聞くワードですよね。この「大気の状態が不安定」というのが、積乱雲を発生・発達させる状態です。
では、どのような状態なのかと言うと…
暖かい空気は周囲の空気より軽いため上へ昇り(上昇気流)、冷たい空気は重いので、下へと降りようとする(下降気流)のため、対流が起きやすくなります。簡単にいうと、これが「大気の状態が不安定」という状態です。
実際の気象条件では、寒気が上空に入ったときのほか
・寒冷前線付近で寒気が暖気の下へ強制的にもぐりこむとき
・風が山岳にぶつかって上昇するところ(山岳の強制上昇)
・風が集まるところ(風の収束)
上記のような条件で地表付近の暖気が持ち上げられることで、今日の主役「積乱雲」が発生・発達するのです。
では、「積乱雲」が生まれてから、消えていくまで、どのような”雲生”を送っているのでしょうか。
【まだまだ成長するよ、元気いっぱい発達期】
・雲内のほとんどが上昇気流
・強い上昇気流により、雨粒が地上まで落下できない
・雲内は水滴と過冷却水滴(0℃を下回っても凍らない水)で構成
・雲の頂上(雲頂)の温度が-20℃を下回るころから、氷の結晶(氷晶)が多くなる
【バリバリはたらく最盛期】
・雲内で上昇気流と下降気流が共存
・雲頂の温度が-40℃以下となり、上部はほとんど氷晶に
・氷晶が成長した氷粒子が落下するが、強い上昇気流によって再び上昇
・大きく成長したあられや雹(ひょう)は、強い上昇気流を突き抜けて地上へ落下
・激しく下降する気流(下降気流)が、ときには竜巻のような突風を引き起こす
・強い雨(降水強度:20mm/h以上)となり、雹(ひょう)や落雷をともなう
【”雲生”をふりかえる衰弱期】
・雲内は上昇気流がほぼなくなり、下降気流が占める
・弱い層状性の雨をともなうことがあるが、長続きしない
一つの積乱雲(単一セル、雲の塊のこと)の寿命は30分~1時間程度。また水平方向の広がりは数km~十数kmで、局地的な範囲に限られます。
このため安全な場所で雷雨が過ぎ去るのを待てば、やり過ごせますね。
では、「バックビルディング現象」を引き起こす、積乱雲はどのような構造なのでしょうか?
積乱雲の高層ビル群「バックビルディング現象」
積乱雲が林立する様子から「バックビルディング現象」と呼ばれるこの現象は、「線状降水帯」のメカニズムの一つとされています。
※「線状降水帯」については、次号をお楽しみに!
「線状降水帯」とは
「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)」が列をなし数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、長さ50~300km程度、幅20~50km程度の線状に伸びる強い降水域」と気象庁では定義されています。
出典:予報が難しい現象について (線状降水帯による大雨) | 気象庁 (jma.go.jp)
この「バックビルディング現象」を図解でまとめてみました。
このように雲の世代交代がくり返されることで、局所的な大雨=集中豪雨が長時間続いてしまうのです。線状降水帯は、現在の観測、予報技術では、まだ発生メカニズム等わかっていないことも多く、予報が難しい現象の一つです。
しかし、積乱雲が近づく前兆を事前に知っておくことは、気象災害から身を守ることにつながります。
「積乱雲」から身を守るには?~前兆を知ろう~
”かなとこ(金床)”とは鍛造や板金作業を行う際、加工するものを載せて作業する台のこと。特に発達した積乱雲は、対流圏界面(航空機が飛んでいる高さ、地表から約1万m付近)まで達すると、それ以上は上昇できず水平に広がります。これを「かなとこ雲」と呼びます。こんな雲を見つけたら、要注意!
【黒い雲が近づいてきた!】
積乱雲は背が高く分厚いため、太陽の光をさえぎります。このため積乱雲の底は真っ黒です。こんな雲が近づいてきたら要注意!
【ゴロゴロ…雷の音が聞こえてきた!】
雷は必ずしも、高いところに落ちるとは限りません!雷雲の位置次第で、海面、平野、山岳などところを選ばずに落ちます。屋外にいる場合は、建物(鉄筋コンクリート建築)や、バスや電車などへ避難!
※屋内でも100%安全とは言えません。電気器具、天井、壁から1メートル以上離れるようにしましょう。
【急に冷たい風が吹いてきた!】
冷たい風は積乱雲から吹き出す下降気流です。あられ(直径5mm未満)や雹(ひょう)(直径5mm以上)が降ってくることも!大きな雹(ひょう)はゴルフボール大のものも報告されています。
ドラマ「ブルーモーメント」では、「天気予報は命を守るためにある」と描かれますが、その情報はみなさん自身が活用しなければ意味がありません。
気象情報を正しく知り、前もって備えておくことで、気象災害から身を守りたいですね!
空から差し込む光の帯「天使のはしご」。みなさんも、きっと一度は見たことがあるのではないでしょうか。ドラマ「ブルーモーメント」でも、姉妹をつなぐ思い出のシーンで登場しています。今回はこの「天使のはしご」について、実験つきでご紹介します!
目次
「天使のはしご」はどんな現象?
幻想的な空をもたらす「天使のはしご」。空から差し込む光の帯は、確かに神々しいように感じます。この名称は旧約聖書に由来し、天使が梯子(はしご)を昇り降りしている様子から名づけられたそうです。
この現象の正体は「薄明光線(はくめいこうせん)」や「光芒(こうぼう)」と呼ばれる、光の筋です。大気中のエーロゾル(エアロゾル)が太陽光線(電磁波)を「ミー散乱」し、光の経路が見えるようになる「チンダル現象」で生まれます。
…と、「はて?」となっている読者の方も多いかと思いますので、太字部分の意味をじっくりみていきましょう。
・エーロゾル(エアロゾル)
大気中に浮遊する固体・液体の極めて小さな微粒子で、簡単に言うとチリやほこりのこと。土壌粒子や人間活動による排出粒子(粉塵)、海由来の海塩粒子などサイズも様々です。このエーロゾルがきっかけで雲ができます。雲のできかたはこちら
・ミー散乱
青空や夕焼けのしくみは「レイリー散乱」でしたよね。「レイリー散乱」では、電磁波の波長がぶつかる粒子の半径より非常に大きい(10倍以上)の場合に生じる散乱です。
では、「ミー散乱は?」と言うと、電磁波の波長と散乱を起こす粒子の半径が同程度の場合に起きる散乱です。
しかしながら、電磁波=太陽光線は同じはずなのに、なぜ「レイリー散乱」のように色づいていないのでしょうか?
その理由は、散乱を起こす粒子のサイズの違いです。大気中で「レイリー散乱」を起こすのは、大気中の窒素や酸素の原子や分子、微粒子など。散乱強度は波長に依存するので、短い波長(青や紫)ほど散乱が強くなります。
「ミー散乱」を起こすのは、大気中のエーロゾルや雲粒で窒素。これらの粒子の半径は太陽光線に含まれる、可視光線帯域の波長とほぼ同じ。このため、どの色も同じように散乱します。つまり、ミー散乱の散乱強度は波長の長さに依存しないのです。
太陽の可視光がすべて混ざった色が、黄白色です。具体例をあげると…
三角プリズムに入射する前の光(可視光線)はほぼ白、分光した後は虹色になっています。可視光線のミー散乱が起きると、太陽の色に近い白や薄い黄色となるのです。
空気がかすんで白っぽく見えるのは大気中のエーロゾルによるミー散乱、雲が白く見えるのは雲粒によるものです。
そして、「チンダル現象」については、実験でみていきましょう。
「天使のはしご」をつくってみよう!
では、実際に「天使のはしご」をモデル実験でつくってみたいと思います!
【用意するもの】
・空のペットボトル容器(角型、転がらないもの)
※今回は見やすいよう2Lを使用しています。
・水道水 2L
・牛乳 少量
・計量スプーン
・スマートホンなど強い光がでる光源
・黒い厚紙(ペットボトルと同サイズ程度)
※なくても可ですが、ペットボトルの裏に固定すると光線が見やすくなります)
★安全な室内でテーブルの上で行いましょう。
★器材をセットしたら、電気を消すと観察しやすいです。
1)ペットボトルに水を入れ、しっかりキャップを閉めたら、横に置きます。そしてボトルの底面側からスマートホンで光を当てると…
ペットボトル内の水(水分子)に光が乱反射していますが、光の筋は見えません。
2)次に牛乳を少しだけ入れてみます。2.5cc計量スプーンの半分程度(約1.3cc)の牛乳を入れてみると…
少し白く濁りましたが、まだ光の筋は見えません。さらに牛乳を追加してみましょう。
3)先ほどと同量の牛乳を加えて、約2.5ccになりました。すると…
光の筋がはっきり見えました!これが「チンダル現象」です。では、さらに牛乳を追加するとどうなるでしょうか?
4)牛乳をさらに約2.5ccを加え、約5ccになりました。
まだ光の筋は見えていますが、濁りが多く、見辛くなりました。※牛乳の成分やペットボトルの形状によっても、異なります。
では、なぜこのような現象が起きたのか、ひも解いていきましょう。
まず、光源=太陽の可視光線が必要ですよね。これがスマートホンのライトです。
そして、散乱させる粒子=牛乳が不可欠です。牛乳の成分は主にタンパク質と脂肪(脂肪球)でできています。この脂肪球とタンパク質のサイズは大きく違い、脂肪球の方が非常に大きいのです。この脂肪球がエーロゾルと同じ役目を果たし、ミー散乱を起こしているのです。
ところで、ペットボトルの底からキャップ方向に向かって、光の色が変化しているのにお気づきでしょうか?
底部から入射した光は青白く、だんだん黄色からオレンジ色に変化していきます。これは牛乳のタンパク質の非常に小さな粒子が、「レイリー散乱」を起こしているのです。長い波長である赤ほど遠くまで届き、キャップを赤く染めたのですね。
次に、牛乳の量による色の変化をみてみましょう。
牛乳の量が一番多いときが、オレンジ色が濃くなっていますよね。これを大気に置き換えると、水蒸気の量が多い状態です。なので、湿度が低い秋冬の夕焼けはオレンジ色、夏の夕焼けは赤に近くなるのです。
そして、「チンダル現象」の光の筋をつくるのに欠かせないのが「雲」の存在です。もし雲がなかったら、どうなるでしょうか?
懐中電灯で照らしてみました。これが雲がない状態です。スマートホンの場合、光はスマートホン本体の一点から差し込みますが、この懐中電灯では光を遮るものがありません。このため、光の筋はほぼ現れなかったのです。 ※懐中電灯のタイプによって異なります。
「天使のはしご」に出会いやすい雲
最後に「天使のはしご」に出会うための、コツについてお伝えします。空に「天使のはしご」がかかるには、条件があります。
・厚みがあって、層状の雲が空に広がっていること
・雲と雲のすき間が空いていること
このため、高積雲(こうせきうん)や層積雲(そうせきうん)で出会いやすいと言われています。では、この雲をご紹介しましょう。
高積雲:ひつじ雲とも呼ばれ、雲内の規則的な上昇気流と下降気流がうろこ状の形を生み出します。
層積雲:地表付近に弱い寒気が流入しているときに発生しやすく、梅雨期の関東から東北地方の太平洋側でもよく見られます。
今回は光の魔法「天使のはしご」についてお届けしました。「薄明光線(はくめいこうせん)」というように、薄明の時間帯(少し薄暗いけれど周りは見える時間帯、日の出前や日の入り後)には特に出会いやすいですが、日中の明るい時間帯で出会えることもあります。
全国どこでも見られる現象なので、梅雨の晴れ間にはぜひ探してみてくださいね!
※気象予報士アカデミー受講生Keiさんからも天使のはしごの写真をいただきました
※ほかにもドラマ・漫画の「ブルーモーメント」に登場する気象現象をいろいろ紹介しています!
【参考文献】
・「世界でいちばん素敵な雲の教室」 著:荒木健太郎 三才ブックス
・「光散乱を利用した牛乳の品質検査」 著:東洋大学 理工学部 応用化学科 勝亦 徹
みなさんは「マルチセル」という言葉を聞いたことがありますか?「バックビルディング現象」や「線状降水帯」に比べると、耳なじみがない言葉かも知れません。今回は局地的大雨をもたらす「マルチセル」のしくみに迫ります!
目次
「マルチセル」をつくる積乱雲
「バックビルディング現象」でお話ししたように、大雨をもたらすのは「積乱雲」です。しかし、「マルチセル」の場合、単体の積乱雲ではないのです。一つ一つの積乱雲(単一セル)が組織化されて、大きな積乱雲の塊が生まれます。ちょっと聞いただけでも、怖いですよね。
※セルというのは細胞のことで、一つの積乱雲を指しています。
では、その「マルチセル」のしくみをみていきましょう。積乱雲の一生については詳しくはこちら
一つの積乱雲(単一セル)の最盛期は、雲内に上昇気流と下降気流が共存しています。共存している、と言っても住み分けている訳ではなく、入り乱れている状態です。氷の粒が落下する際に融けたり、雨粒が蒸発することで周囲からどんどん熱を奪っていきます(潜熱吸収)。そして、雨粒やあられなどが、落下しながら、冷たく重い空気を引きずりおろしてくるのです。これが下降気流で、時には突風をもたらします。
この下降気流が地上付近にある暖かく湿った空気にぶつかると、暖かく湿った空気は上空へ持ち上げられてしまいます。もともとあった雲の下降気流のところで新たな雲が生まれ、組織化されていくのです。この様子を生物になぞらえて、雲の自己増殖(じこぞうしょく)や世代交代(せだいこうたい)と呼んでいます。
「バックビルディング現象」と「マルチセル」の違い
次に「バックビルディング現象(バックビルディング型)」と「マルチセル」の違いについて、みていきましょう。
「バックビルディング現象」も「マルチセル(型)」も大雨をもたらす現象ですが、違いがあります。それが雲本体を運ぶ上空の風(中層風)と地上付近の風(下層風)の風向の違いです。
「バックビルディング現象(バックビルディング型)」の場合、雲を運ぶ上空の風(中層風)と地表付近の風(下層風)の風向は同じでした。このため新しい積乱雲は、風上側に生まれていました。
※風向と言うのは、風が吹いてくる方向のことです。
上記は上空からみたマルチセルのイメージ図です。
「マルチセル」の場合、雲を運ぶ上空の風(中層風)と地表付近の風(下層風)の風向が異なります。
・一つの積乱雲(単一セル)は上空の風(中層風)に流される
・進行方向右側よりの地表付近の風(下層風)と雲の下降気流がぶつかるところ=風下側で新しい雲が生まれる
→このため、実際の進行方向よりやや右寄りに移動しているように見える
気象衛星画像でみると、あたかも巨大な積乱雲が移動していくよう。雨が続く時間は、一つの積乱雲が30分~1時間程度であるのに対し、マルチセルが特に大きくなった、マルチセル型巨大雷雨の場合、数時間におよぶこともあります。やはり怖い積乱雲ですよね。
「マルチセル型巨大雷雨」による雹(ひょう)害
では、実際の事例をみていきましょう。コミック「BLUE MOMENT」2巻でも、マルチセル型巨大雷雨による降雹(ひょう)が描かれていますが、今回は2022年6月の事例を取り上げてみます。
2022年6月2日~3日、首都圏の広範囲で降雹が観測されました。夕方のニュースで大きく取り上げられていたので、覚えている方も多いのではないでしょうか?
特に埼玉県では県北部を中心に、降雹等により38億円を超える甚大な農業被害が発生しています。
この被害をもたらした積乱雲はどのように発生したのでしょうか?まず、天気図をみていきましょう。
関東甲信地方は三陸沖にある高気圧(青丸)の後面に入っており、高気圧の縁を回る南南東の風が卓越。日本海北部には高気圧側へ凸になった低圧部(赤破線丸)があります。
では、上空500hPa高層天気図をみてみましょう。-15℃の等温線が関東南部を横切り、ほぼ西風が吹いています。また、日本海西部には気圧の谷(トラフ、青の二重線)が接近しています。
そして12時間後、2日21時の地上天気図です。卓越風向は南風へ変わりました。日本海北部の低圧部は低気圧へと発達、東へ進んでいます。
気圧の谷(トラフ)が-15℃の寒気を運んでいます。また、風向は西北西に変わりました。
地上付近は暖かく湿った空気が南風~南東風で流入し、上空には寒気があったことがわかります。積乱雲が発達する条件が揃っていたのですね。では、気象衛星画像もみていきましょう。
群馬県南部で積乱雲と思われる、雲域(赤破線丸)が発生しました。雲域はやや南東の方向へ進んでいきます。
積乱雲の雲域はさらに南東へ進み、弱まりながら茨城沖へ抜けていきました。
出典:NICT ひまわりリアルタイムWeb
次に雨雲レーダーでもみていきましょう。
17時時点では、群馬県、埼玉県には弱い雨雲しか見られませんが、18時には帯状の強雨域(赤破線丸)が発生しています。
19時でもまだ強雨域があり、南東進しています。20時になると降水が弱まってきました。
出典:日本気象協会 過去の天気
このように急速に積乱雲が発達したのには、上空の寒気や谷の存在に加え、地形性の特性もあると考えられます。
上図は2日夕方に埼玉県北部から群馬県南部に吹いていた風のイメージです。関東平野を吹走してきた南東風は、関東山地へ向かって収束してきます。群馬県前橋市(上の青丸)は関東平野の北端で山地が始まる地点、埼玉県熊谷市(下の青丸)そのすぐ南東側です。
・南東の風で暖かく湿った空気が流入
・関東山地と上空の寒気により暖かく湿った空気の強制上昇が起こり、前橋付近で積乱雲が発生・発達
・組織化された雲域全体は、上空の西風により南東の方角(熊谷方面)へ移動
このように推測され、この積乱雲は「マルチセル型巨大雷雨」だった可能性があります。
最後に、埼玉県熊谷市で観測されたデータを見てみると…
上図は熊谷地方気象台で観測されたデータです。10時から19時まで南~南東、南南東の風が吹いています。天気:黄色マークの部分は雷電(らいでん)、つまり雷が3時間も観測されています。最高気温は14時に29.0℃から19時には18.9℃と、約10℃も気温が下がっています。
雨自体は時間雨量18mmとやや強い雨だったようですが、今回は特に降雹により被害が拡大したようです。
※気象庁 雨の強さと降り方
近年の集中豪雨が起きる背景には、都市部からの排熱がもたらすヒートアイランド現象や温暖化の影響があると言われています。使わない電気はオフにする等の工夫で、無理のないエコライフを心がけたいですね。
※ほかにもドラマ・漫画の「ブルーモーメント」に登場する気象現象をいろいろ紹介しています!
【参考文献】
・「一般気象学(第2版補訂版)」 著:小倉義光 東京大学出版会
・「世界でいちばん素敵な雲の教室」 著:荒木健太郎 三才ブックス
・「埼玉県農業気象災害速報 令和4年6月2日、3日のひょう害」埼玉県・熊谷地方気象台
・「ヒートアイランドってどんな現象」 埼玉県環境科学国際センター
空が青く見えるのはなぜだろう?夕焼けはどうして起きるのだろう?ーそう思ったことはありませんか?青く澄みわたる空、茜色(あかねいろ)に染まる空には理由があります。今回はその色のひみつ、「レイリー散乱(さんらん)」についてお届けします!
目次
世界の空の色
みなさんは空の色をどのように思い浮かべますか?
日本語での「空色」という言葉は平安時代から使われている古い色名(伝統色)で、昼間の晴れた空の色を表しています。英語ではSky blue(スカイブルー)、Cerulean blue(セルリアンブルー)、中国語では天藍(ティエンラン)と言うそうです。色見本で再現すると…
少しずつ色が違います。“空の色”と言っても、住んでいる場所や気候、文化などの違いで様々な色名が生まれたのかも知れませんね。この空の色を作り出すのが「レイリー散乱」です。
空の色のひみつーレイリー散乱とは?
「ブルーモーメントとは 発生時間帯や気象条件、仕組みなどを予報士が解説!」で、光の散乱についてご紹介しました。では、この「光の散乱」について、もう少し詳しくみていきましょう。
「レイリー散乱…はて?」という方が多いかと思いますが、光の散乱の一つなのです。気象予報士を目指す方は必ず覚えましょうね!
この「レイリー散乱」を発見したのは、19世紀の物理学者 レイリー卿(きょう)Lord Rayleigh(本名:ジョン・ウィリアム・ストラット John William Strutt)です。数学を駆使して物理現象を解明しました。
ところで、光とは何でしょうか?光とは電磁波(電波)という波の一種です。電磁波を簡単に説明すると、電気と磁気のエネルギーが波となって空間を伝わっていくものです。
例えば、電子レンジもこの電磁波の一つ、マイクロ波を利用したもの。食品に含まれている水分(水分子)にマイクロ波を当てて、振動させることで、加熱しています。レントゲン写真も、電磁波の一つエックス線を利用。電磁波って、日々お世話になっていますよね。
そして、人間の眼が感じられる、電磁波の波長の範囲は390nm(0.39μm)~770nm(0.77μm)で、これを可視光線と呼んでいます。
太陽光線(電磁波)の波長帯の47%は、この可視光線(可視光帯域)。残りは赤外線(赤外帯域)と紫外線(紫外帯域)です。日中に空が青く見え、夕方は赤く見える現象は、この可視光線が大気を構成する粒子によって、散乱されるからです。
※散乱…電磁波の進行の行く手にある粒子(原子や分子など)に当たり、周囲に広がる二次的な電磁波が生じる現象
太陽光線(電磁波)の波長が、散乱を起こす粒子の半径より非常に大きい(10倍以上)のときに、「レイリー散乱」が発生します。
この可視光線がぶつかる粒子は、大気中の窒素や酸素の原子や分子、微粒子などのこと。では、なぜ空の色の違いが生まれるのでしょうか?それが波長の長さによる違いです。
レイリー散乱における散乱の強さ(散乱強度)は、電磁波の波長の4乗に反比例します。例えば、波長が2とすると、散乱の強さは16分の1。つまり、波長が長くなればなるほど、散乱の強さは弱くなるのです。
上図の左側が短波長(紫や青)、右側が長波長(オレンジや赤)です。これらの波長が粒子にぶつかると…
短波長は粒子にぶつかりやすく、長波長より約6倍も強く散乱されてしまいます。そのため、空が青く見えるのです。一方、朝夕は可視光線が斜めの方向から入射し、大気中を進む距離が長くなります。このため、短波長は先に散乱してしまい、長波長が最後まで残るのです。
このような理由で、空の色の違いが生まれるのですね。詳しい図解はこちら
ここまで地上から空を見てきましたが、宇宙から地球を見たら空はどんな風に見えるのでしょうか?
「空は非常に暗かった。 一方、地球は青みがかっていた」
ロシアの宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンの有名な言葉です。やっぱり青い!地表面の約7割を占める海も、レイリー散乱と赤い光(長波長)の吸収により、青く見えています。
上記は令和6年5月12日 12:00(日本時間)、気象衛星ひまわり8号が撮影した画像です。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「ひまわりリアルタイムWeb」より、いつでも閲覧することができます!
ひまわり8号は平成26年10月7日に打ち上げられ、平成27年7月7日から「ひまわり7号」に代わり正式運用を開始された静止気象衛星です。赤道上空の軌道上で、地球と同じ自転周期で飛んでおり、静止しているように見えるため、静止気象衛星と呼ばれます。
では、少し時間を巻き戻して、5月12日 00:00(日本時間)の画像。日本列島のはるか東、北米大陸が明るく、昼間であることがわかります。この画像を拡大(右)してみると…
この青く光っているのが、大気圏です。厚さは定義によって異なりますが約100km程度。宇宙からみると薄いベールのように見えますが、このベールが宇宙からやってくる有害な放射線から、私たちを守ってくれているのです。そう思うと、大気ってありがたいなぁと思いますよね。
レイリー散乱を用いた気象観測
最後に「レイリー散乱」を用いた気象観測について、ご紹介します。このレイリー散乱を用いた気象観測をしているのが、気象レーダーです。
【気象レーダー観測のしくみ】
・アンテナを回転させながら電磁波(マイクロ波)を射出、半径数百kmの広範囲に存在する降水粒子(雨や雪の粒)を観測する
・降水粒子から後方散乱(反射)して戻ってくる、電磁波の時間から降水粒子までの距離を測る
・戻ってきた電磁波(レーダーエコー)の強さから降水粒子の強さを観測する
散乱の強さ(散乱強度)が、電磁波が入射してくる方向と同じ向きで強く、線に直角な方法で弱くなる性質を利用しています。
また、戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用して、雨や雪の動き=降水域の風を観測することができます。
ドップラー効果の身近な例が救急車のサイレンです。音も波の性質を持っています。このため、聞いている人の前を通りすぎる時は高い音、遠ざかっていく時には低い音に聞こえると思います。このドップラー効果を利用し、雨雲が動いている方向を知ることができるのです。
気象レーダーは令和6年5月13日現在、全国に20か所設置され日本のほぼ全域をカバー。リアルタイムの「雨雲の動き(ナウキャスト)」のほか、降水短時間予報、降水ナウキャストのような予報の作成にも利用されています。
気象レーダーの歴史については、ぜひこちらもご覧ください!
「ブルーモーメント」がみられる穏やかな朝。そんな日々に感謝しながら、空を見上げたいですね。
※ほかにもドラマ・漫画の「ブルーモーメント」に登場する気象現象をいろいろ紹介しています!
【参考文献】
・「色の名前」 監修 近江源太郎、構成・文 ネイチャー・プロ編集室
みなさんは「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」という言葉を聞いたことがありますか?
毎年のように全国のどこかで、この言葉を聞くようになりましたが、「はて?」という方も多いのではないでしょうか。梅雨を迎える前に知っておきたい「線状降水帯」について、実際の事例で深堀りします!
目次
「線状降水帯」とは?
「線状の 帯となりぬる 積乱雲」
今回は俳句からはじめてみました。発達した積乱雲が次々と連なるのが「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」です。そのメカニズムの一つ、「バックビルディング現象」について前回特集しました。
では、この「線状降水帯」について気象庁では、どのように定義されているのでしょうか?
「線状降水帯」とは
【次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域】と定義されています。
この長さは最長300km程度。この300kmの目安として、東京を起点にすると直線距離で北は宮城県仙台市付近、西は三重県亀山市付近になります。温帯低気圧の大きさ2,000km程度に比べると短いですが、結構長いですよね。
台風による直接的な大雨を除き、集中豪雨の多くがこの線状降水帯によるものであることが、近年の研究でわかってきています。
「線状降水帯」っていつ発生するの?
梅雨末期の集中豪雨
さて、線状降水帯の発生時期はいつ頃なのでしょうか?
気象庁気象研究所の統計によると、特に線状降水帯の発生が多い時期は、東日本では9月:台風の時期、西日本では6月から7月:梅雨期が指摘されています。しかし、線状降水帯は、条件さえ揃えば日本のどこで起こっても不思議ではありません。
まず、梅雨期の集中豪雨を知るために、梅雨のプロセスについてみていきましょう。※台風についてはまた別途特集します
日本列島を横切る梅雨前線(停滞前線)。簡単に言うと、”前線”は暖かい空気と冷たい空気がぶつかるところです。
東日本にお住まいの方は梅雨期の雨について、”しとしと雨”をイメージする方が多いと思います。しかし、西日本の梅雨は”大雨、集中豪雨”なのです。この雨の降り方の違いをもたらしているのが、梅雨前線の性質の違いです。では、詳しくみていきましょう。
【東日本の梅雨】
前線の北側にはオホーツク海高気圧、南側に太平洋高気圧があります。オホーツク海高気圧から吹き出す冷たく湿った気流(北東気流)、太平洋高気圧を回る気流(縁辺流)の間にできるのが、東日本の梅雨前線です。一般的には前線の北側で層状性のしとしと雨が降ります。温帯低気圧に伴う温暖前線や寒冷前線に比べて南北の温度差が小さく、つりあった状態になるのです。まるで、力士の取り組みのようですね。
【西日本の梅雨】
九州の西・東シナ海を更に南へ辿ると、南シナ海を経て、インド洋へつながります。このインド洋からやってくる暖かく湿った気流が、南西モンスーン(季節風)です。この南西モンスーンと太平洋高気圧を回る縁辺流が、西日本付近で合流(収束)します。これらの気流は暖かい海上を通ってくるので、たっぷり水蒸気を含んでいます。これが大雨のもとです!
そして、前線の北側には大陸由来の暖かく乾いた空気があります。この異なる空気の境目でできるのが、西日本の梅雨前線なのです。東日本の前線とは異なり、水蒸気量の違いがこの前線を形成しており、主に前線の南側でザーザー降りのような対流性の雨をもたらします。
※対流性の雲と層状性の雲のできかたはこちら
「令和2年(2020年)7月豪雨」の事例
では、梅雨末期に発生した「令和2年(2020年)7月豪雨」の事例でみていきましょう。
日本付近に停滞した前線の影響で、暖かく湿った空気が継続して流れ込み、各地で大雨をもたらし、人的被害・物的被害が発生しました。
【気象庁発表の気象概況抜粋】
・7 月3日から8日にかけて、梅雨前線が華中から九州付近を通って東日本にのびてほとんど停滞した。
・前線の活動が非常に活発で、西日本や東日本で大雨となり、特に九州では4日から7日は記録的な大雨となった。
・岐阜県周辺では6日から激しい雨が断続的に降り、7日から8日にかけて記録的な大雨となった。
・気象庁は、熊本県、鹿児島県、福岡県、佐賀県、長崎県、岐阜県、長野県の7県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒をよびかけた。
出典:気象庁 令和2年7月豪雨
7県という広範囲で大雨特別警報(警戒レベル5「緊急安全確保」)が発表されています。
気象庁気象研究所によると、九州で顕著な大雨となった7月3~8日にかけて、線状降水帯が9事例も発生していたとの事。熊本県の球磨川(くまがわ)では大規模な氾濫が発生し、人吉市では21名の方が亡くなり、負傷者17名という甚大な被害をもたらしました。被災されたみなさまに心よりお悔やみを申し上げます。
ここからは、実際の地上天気図と雨雲レーダーをみていきます。
(左側)地上天気図、(右側)雨雲レーダー(出典:日本気象協会 雨雲レーダー) ※★(星)マークは、熊本県人吉市を示しています。
【7月3日 21:00】九州の西に前線上の低気圧があり、前線南側では南西モンスーンと太平洋高気圧の縁辺流が合流。
【7月3日 21:00】前線上の低気圧が東に進んでいます。東西にのびる帯状の発達した雨雲がかかり続けていますね。
では、上空の状態はどのようになっていたのでしょうか。まずは850hPa高層天気図、1500m付近をみてみましょう。
前線上の低気圧(赤丸)に向かって、前線の目安(緑色)北側では寒気が流入(水色)。前線南側では南西モンスーン(肌色)と太平洋高気圧の縁辺流(オレンジ)が収束しています。
次に、500hPa高層天気図、5500m付近をみてみましょう。
上空の気圧の谷(トラフ)が山陰~四国の西にみられます。低気圧中心(赤丸)のすぐ西側にトラフが迫り、発達が示唆されますね。
前線上の低気圧と気圧の谷(トラフ)、前線南側での風の収束、九州山地での強制上昇等、大雨となる条件が揃っていたことがわかりました。
最後に、熊本県人吉市で観測された降水量データをみてみましょう。
7月3日~4日の2日間の降水量データです。7月4日午前2時には時間雨量70mmを超える、非常に激しい雨※が降っていました。
※非常に激しい雨:1時間雨量で50mm以上80mm未満 出典:気象庁 雨の強さと降り方
この際発生していた線状降水帯は東西280kmとこれまでで最大規模で、継続時間も13時間と長く、広範囲で大雨をもたらしました。
この結果、人吉市周辺では甚大な浸水被害が発生しました。
「線状降水帯」から身を守るには?
ドラマ「ブルーモーメント」では、「SDM(特別災害対策本部)」のみなさんが気象災害に立ち向かう姿が描かれていますが、防災の基本は「自分の身は自分で守ること」ーそのために知っておきたい知識を最後にお伝えします!
・「線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ」をチェック!
令和4年6月1日から「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準を満たすような線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合に、半日程度前から、気象情報において、「線状降水帯」というキーワードを使って呼びかけられています。さらに、令和6年5月よりこれまでより最大30分程度前倒しして発表する運用が開始されます。
線状降水帯が発生している場合、気象庁「雨雲の動き」(雨雲レーダー)にも表示されます。
また、令和6年4月26日には海洋気象観測船 新「凌風丸」が出港し、線状降水帯のもととなる海上の水蒸気を観測することで、線状降水帯のメカニズムの解明や発生予測の精度向上が期待されています。
・気象情報やキキクル(危険度分布)を活用しよう!
「気象庁 警報・注意報」を開くと、どの地域で警報や注意報が発表されているのかをリアルタイムで知ることができます。この発表基準は二次細分区域となっており、市町村(東京特別区は区)を原則とされています。
また、「キキクル(危険度分布)」では、土砂災害・浸水害・洪水害の危機が迫っていることを知ることができます。
これらの防災気象情報と市町村の対応、住民行動をまとめた一覧表もチェックしておきましょう!
・自分の住んでいる地域を知ろう!
みなさんは自分が住んでいる地域や職場がある地域が、地形的にどんな場所なのか、考えたことはありますか?
地形的な特性や潜んでいる危険(ハザード)については、普段なかなか意識しにくいですよね。でも、地域を知っておくことは、防災・減災にも役立ちます。
下記のような「ハザードマップ」が市町村により作成されています。この「ハザードマップ」を見ながら、実際に地域を歩いてみたり、自治体で指定されている避難場所まで行ってみるのも良いかも知れません。
出典:ハザードマップポータルサイト(2024年5月6日利用)
日本列島は四季が豊かと言われますが、それだけ季節の変化が激しいということ。
「今、線状降水帯が発生したらどうするか?」「自宅にいる時あるいは職場にいる時、どこに避難するべきか?」
梅雨シーズンを迎える前に、ぜひご家族や周りの方と考える時間をつくってくださいね!
※ほかにもドラマ・漫画の「ブルーモーメント」に登場する気象現象をいろいろ紹介しています!
【参考文献】
・予報が難しい現象について (線状降水帯による大雨) 気象庁
・気象業務はいま2022 トピックス2線状降水帯による大雨災害の被害軽減に向けて 気象庁
・令和2年度気象研究所研究成果発表会 令和2年7月豪雨の特徴ー球磨川流域に記録的大雨をもたらした線状降水帯の構造と発生過程
益子渉, 廣川康隆, 荒木健太郎(気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部)
・令和2年7月豪雨 球磨川水害伝承記~後代に残す記録~ 国土交通省
・令和2年7月豪雨 人吉市災害記録・検証誌 熊本県人吉市
・令和2年7月豪雨に関する情報 国土交通省国土地理院
ブルーモーメントとは、夜明け前や夕焼け後のわずかな時間に、辺り一面が青い光に照らされる現象や、その時間帯のことを指します。
え?待って。
夜明け前や、夕方は空がオレンジ色じゃない?ブルーではないのでは?と思われるかもしれませんが、オレンジ色に移行するまでの、ほんの数分~十数分だけ深い濃い青色に包まれる時間帯があります。
これが一日の中で限りある時間しか見られないブルーモーメントと言われる空です。
ブルーモーメントが見られる時間はごくわずか
ブルーモーメントは日の出前、もしくは日の入り後に見ることができます。 朝は東側、夕方は西側に空が広がっていれば、どこでも見ることが可能ですし、季節も問いません。日本だと5分から長くて15分程度見られます。
ブルーモーメントは北欧で生まれた言葉だと言われており、北極や北欧など高い緯度の地域では日本よりもう少し長く、30分ほど表れます。
太陽が地平線のぎりぎりにある時間帯ですので、深い青色に加えて、うっすらと太陽のオレンジ色が差し込んでいることもあり、とても幻想的な時間です。
時間の流れと空の色変化
ブルーモーメントは夜空、青空、オレンジ色の「はざま」に現れる一瞬の濃いブルーの空です。一日で数分しか見られないので貴重な時間帯です。
日の出 | 夜空 | ブルーモーメント | オレンジ(朝焼け) | 青空 |
日の入り | 青空 | オレンジ(夕焼け) | ブルーモーメント | 夜空 |
数分現れて、それ以上たつと日の入り後だと空が暗くなり、日の出後だと空が明るくなってきます。
ブルーモーメントが現れる時間帯は「薄明」とも言われる時間帯です。
※薄明は「少し薄暗いけれど周りは見える時間帯」を指します。
ブルーモーメントの仕組み 光の散乱
それではなぜブルーモーメントの空は深く、濃い青色になるのか。これは光の散乱が関係してきます。
太陽の光は地球に届くまでに「空気の層」を通過し、空気中の酸素や窒素の分子に当たって光が散らばります。
その散らばった光の色が多いほど私たちの目に映りやすくなります。
しかし、その色はいつも同じではありません。なぜならば、太陽は一日中動いているため、地球との距離が変わります。
距離が変わると、届く波長も変わるため、散乱する光の色も変わります。
波長とは「波の長さ」で、波長が短い・長いという表現をします。
距離が近いと波長が短くなり、距離が多いと波長が長くなります。
ですので、私たちが見ている空の色は太陽と地球との距離によって変わります。
日中は青い色の光が散乱しやすい距離になっていて、空が水色や青に見えます。
朝焼けや夕焼けは太陽が地平線に近いところにあるので、日中よりも地球との距離が離れます。
そうなると、波長が長くなってきて、それに反応する赤い色が散乱して朝焼けや夕焼けはオレンジや赤く見えます。
では、ブルーモーメントの時間帯はというと、太陽が地平線のぎりぎりのとこにあって、太陽から直進する光は見えないものの、太陽の光が空の高いところにあたり、この場所にある散乱しやすい濃い青色が見えやすくなります。
日中の空が薄い青や水色になるのは、日中は青以外にも緑や黄色、オレンジ、赤などの色の光があり、これらも一緒に散乱されることにより光が混ざるため、白っぽく明るい水色に見えます。
一方で、ブルーモーメントはまじりっけがない青色だけが目に映るのです。
※気象予報士を勉強している人は「大気の放射」のレイリー散乱、ミー散乱を復習しましょう!空が青く見えるのはレイリー散乱ですよね!
タイミングが合うと、空だけでなく、山や高い建物も全てが濃い青色に包まれます。いつもよりも空が広く見えたりしますので、幻想的な空に出会うことができます。
ブルーモーメントが見られやすい気象条件
①晴れていること
薄曇りや雲が多少出ていても見ることはできますが、雲が厚かったり雨や雪が降ったりしている時は、太陽の光が届かないためブルーモーメントを見ることはできません。
②水蒸気が少ない事
空気中にチリや水蒸気が多くなると、それらが光を散乱させるため、青色がぼやけて白っぽく見えます。ですので春や秋よりも、比較的乾燥していて、気温が低い秋や冬が綺麗な濃い青色のブルーモーメントを見ることができます。
また、ブルーモーメントは雲の有無や湿度でその青色の濃さが変わります。日の入りよりも日の出の時間帯のほうが濃いブルーになりやすいです。
ブルーモーメントが見られる気象条件はさほど厳しくはありません。季節としても、見られやすい季節はありますが、NGな季節はありませんので、日の入り・日の出時間は空を見上げてみて、ブルーモーメントを見つけてください!
4月スタートフジテレビドラマ「ブルーモーメント」についてはこちら
気象予報士アカデミー受講生からの「ブルーモーメント写真集」はこちら
みなさん、空に彩りをそえてくれる「彩雲(さいうん)」を見たことがありますか?
4月24日(水)スタートのフジテレビ系新ドラマ「ブルーモーメント」原作に登場します。今回はその「彩雲」のひみつに迫ります!
1.「彩雲」とは
彩雲(さいうん)はその名のとおり、鮮やかに空を彩る雲で、瑞雲(ずいうん)や慶雲(けいうん)、景雲(けいうん)、紫雲(しうん)とも呼ばれ、古くから吉兆の前触れ、しるしとされてきました。
確かにカラフルな彩雲に出会えたら「今日はなんだか良いことがありそう!」という気持ちになれるかも。
また、彩雲は吉祥模様(きっしょうもよう)として、古来よりきものや帯の柄にも取り入れられきました。
【吉祥模様】
めでたいこと、縁起のよいこと、幸福を願う心に合った文様のこと。本来は中国風のものであるが、日本風のものも加えられ、平安時代以来つづいている。瑞雲、松竹梅、鶴、亀、菊、蝶、あおい、ほうおうなどその数も多く、また、それ等を組合わせたり、丸文などに配置したものがある。
※出典:現代きもの用語辞典 本吉春三郎編 婦人画報社 より抜粋
そういえば、有名な龍神が守るボール(秘宝)を探す、冒険活劇アニメの主人公も、こんな金色の雲に乗っていたような…
科学技術の進んだ現代では、気象衛星をはじめ様々な観測機器や、スーパーコンピュータの登場によって、天気予報の精度は飛躍的に向上したと言われています。
しかし、このような技術ががまだ存在しなかった時代、農業や航海をはじめ、「空を読む」技術は日々の生活に欠かせないものであったのではないでしょうか。
人々は毎日空を見上げて、日々の安寧を祈っていたのかも知れませんね。
2.どうやって彩雲はできるの?
雲を構成しているのは、小さな小さな水滴(雲粒)たちで、微小水滴や微小氷晶(氷の結晶)のこと。
この雲粒(うんりゅう)の半径は約0.01mm前後と言われています。と言われても、はて?ですよね。
ちなみに、人間の髪の毛は半径約0.05mmなので、雲粒は髪の毛1本の太さよりも、小さな小さな粒なのですね。
この小さな粒たちがたくさん集まって、雲が構成されています。
でも、カラフルに輝く彩雲と違って、私たちがイメージする雲は一般的に白や灰色ですよね。
彩雲は雲そのものが光り輝いているようにみえますが、実は光の回析現象によるもの。「光の回析」とは、光の波(波長)が障害物にあたるとき、その背後に波が回り込む現象です。
簡単に言うと、雲粒に太陽の光(主に可視光線)が回り込み、その度合いが光の波長によって異なるため、おきている光学現象なのです。
雲の縁は雲粒がどんどん蒸発していくのでサイズが小さく、中央部とくらべると雲粒の大きさが異なります。
・光の波長が長い(赤):障害物の背後に回り込む角度が大きくなる
・光の波長が短い(紫や青):障害物へのは回り込みが浅くなる
波長の長さの違いに加え、雲粒のサイズが不揃いのため、色の並び方が不規則になり、グラデーションのように見えるのです。
とは言っても、やはり不思議ですし、神秘的な現象ですよね。
3.「彩雲」をさがしてみよう!
ここまで読んでいただいたみなさん、そろそろ「彩雲」が見たくなってきたのではないでしょうか!?
とは言え「どこか空がきれいな場所に行かなければと見えないのじゃない?」と思われるかも知れません。そんな心配はご無用!
都会であっも、空が見える場所で条件さえ揃えば、簡単に出会うことができますよ。
水滴でできた雲(水雲)が、見かけ上太陽の近くにかかるとき、彩雲は現れてくれます。
主に
・巻積雲(けんせきうん)
・高積雲(こうせきうん)
・積雲(せきうん) など
水滴でできた雲(水雲)で出会いやすいといえます。こんな雲たちをきっとどこかで、見たことがあるはず…
巻積雲:うろこ雲やいわし雲とも呼ばれますよね。雲の海原を泳ぐイワシたち
高積雲:ひつじ雲とも呼ばれ、秋の季語にもなっています。のんびり放牧中のひつじたちをパシャリ
積雲:もくもくとした姿から、わた雲とも。私のとっておきハート型積雲です
ちょっと理科の授業を思い出していただきたいのですが、水(液体)は0℃まで下がると氷(固体)になりますよね。
そんなの当たり前だよ~、と思われるかも知れませんが、あら不思議。氷点下でも凍らない水があるのです。
このような水を「過冷却水滴(かれいきゃくすいてき)」と呼びます。
また、頑固に凍らなかった過冷却水滴も、-40度を下回ると凍結してしまうと言われています。
たとえば、地上から高度約3,000m付近に浮かぶ雲があるとします。みなさまご存じ、富士山の標高3,776mよりは少し下の高さですね。
地上が気温15度だと仮定し、地上から、高度3,000mまで空気を持ち上げてみましょう。
1,000mでは約6.5度気温が下がるので、理論上は気温は-4.5度まで下がります。
※国際標準大気 気温減率6.5度/1,000mで計算しています。
山中湖からの富士山:(写真左側)富士山の斜面を上昇して生まれた水雲たち。寒い朝だったなぁ…
氷点下にあるはずなのに、凍らずに水の状態で浮かんでいる雲もあるのですね。
このような雲を水雲と呼びますが、彩雲が見られるのは、主に薄く広がった水雲です。
雲の見分け方ポイント
・水雲:輪郭がくっきり白く、ある程度厚みがある
・氷晶雲(ひょうしょううん):氷の粒(氷晶)でできた雲で、白く透明感がある
※過冷却水滴と氷晶がまじった雲も存在します。また、氷晶雲でも彩雲が見られることもあるようです。
雲が存在する高度は、季節や気圧配置によっても変わってきますが、太陽が巻積雲、高積雲、積雲の近くを見かけ上通過するときに出会える確率が高くなります。
おっと、太陽を直接見ると眼を痛める恐れがあり、大変危険です!雲や空を観察するときは必ずサングラスを着用してくださいね。
4.まとめ
ところで、新ドラマ「ブルーモーメント」で出口夏希さん演じるヒロイン「雲田 彩」という名前。
”彩雲”が入っていることに、気づかれたでしょうか。気がついた方、もう気象沼にハマってきているかも!?
空をはじめ、自然は時に牙をむき、猛威をふるいます。どんなに科学技術が進歩しても、人間が自然をコントロールすることは叶いません。
ドラマの原作「BLUE MOMENT」では「天気予報が存在する、たったひとつの意味ーそれは、命を守るため」というセリフが登場します。
ヒロインの名前に”彩雲”が入っているのは、穏やかに彩雲を眺められる日々が続いてほしい、という作者の願いなのかも知れませんね。
空を見ていると、一つとして同じ形の雲はありません。空を見上げていると、その時の大気の状態や湿り具合、風が吹いてくる方向や速さ、前線の接近など多くのメッセージを雲が伝えてくれます。
時にはこのように、風でたなびく彩雲も見られますよ
「彩雲」に出会うには、ちょっとしたコツとタイミングが必要ですが、たまにはのんびりと空を見上げてはいかがでしょうか。
みなさんは「表層雪崩(ひょうそうなだれ)」という言葉を聞いたことはありますか?あまり雪の降らない地域にお住まいの方は「はて?」となるかも知れません。特に厳冬期に発生する表層雪崩ですが、南岸低気圧とも深いつながりがあるのです。今回はその表層雪崩についてズームイン!
1.「表層雪崩」その前に~日本の冬~
(左)新潟県湯沢町の雪景色 (右)谷川連峰(三国山脈)
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」
川端康成氏が書かれた小説『雪国』の冒頭部分は、あまりにも有名です。
この物語の舞台は新潟県湯沢町と言われています。「国境の長いトンネル」というのは、JR上越線清水トンネルのこと。群馬県みなかみ町から新潟県湯沢町へ抜ける全長9.7kmのトンネルが貫くのは、谷川連峰。太平洋側は雪が降っていなかったのに、トンネルを抜けると一面の銀世界。驚いている主人公の姿が目に浮かびます。
ところで、「南岸低気圧」と日本海側での大雪はまったく異なるプロセスによるもの。天気予報でよく聞く冬型の気圧配置(日本列島を基準にして西側が高気圧、東側が低気圧)。本当にそうなっているのか!?実際に天気図をみてみましょう。
(左)2022年12月18日 12:00(日本時間)の地上天気図 出典:気象庁ホームページ 過去の天気図
(右)2022年12月18日 12:30(日本時間)気象衛星ひまわりトゥルーカラー再現画像 出典:気象庁ホームページ
確かに大陸に高気圧、北海道の東に低気圧がありますね。そして、大陸から吹き出す北西風に沿って、雪雲(筋状雲)が発生しています。
では、この雪雲たちはどのようにして生まれているのでしょうか?
【冬型の気圧配置で雪雲が生まれるしくみ】
1)日本付近は大陸でつくられた、冷たく乾いた北西の季節風が流れ込んでくる。
2)暖かい海流が流れる日本海で、たくさん水蒸気を補給し、暖められることで雪雲(筋状雲)が発生。
3)少しずつ発達しながら※脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)にぶつかり、高度をあげて大雪を降らせる。
4)雪を降らせて乾燥した気流は山を越えて、太平洋側へ。太平洋側の地方では乾燥した晴天となりやすい。
おおまかには、このようなしくみで雪雲が生まれているのです。
※気象予報士を目指されている方は、山雪型&里雪型の違いもチェックしてくださいね!
この日本海側と太平洋側の気候の違いをつくっているのが日本の背骨とも言われる、脊梁山脈(せきりょうさんみゃく)。日本列島の中央を縦断し、分水嶺(山を隔てて水系が二つ以上にわかれる場所)となっている山脈です。
そして、このような冬型の気圧配置が何日間も続くことで、(主に)日本海側は「豪雪地帯」となるのです。
ちなみに、「豪雪地帯」と指定されている場所を見てみると…
豪雪地帯は日本の国土の約51%!日本はこんなに雪国だったのですね。
2.「表層雪崩」ってどんな現象?
2.1そもそも「雪崩」とは
そもそも「雪崩」とはどんな現象なのでしょうか?
雪崩とは
「斜面上にある雪や氷の全部、または一部が肉眼で識別できる速さで流れ落ちる現象」(日本雪氷学会「雪と氷の辞典」)のこと。
え、肉眼で識別できる速さ?と思った方。そうなのです。斜面に積もった雪は目にはわからないほど、ゆっくり動いているのです。
表層雪崩のスピードは、何と時速100~200kmにもなります! ※全層雪崩は時速40km~80km
時速200kmを乗り物にたとえると…新幹線が該当します。とてつもない速さですよね…
2.2「表層(ひょうそう)雪崩」のメカニズム
雪崩は”すべり面”の違いによって、「表層(ひょうそう)雪崩」と「全層(ぜんそう)雪崩」の大きく2つのタイプに分類されます。
発生する時期も異なり、
・表層雪崩:低気温で降雪が続く1月から2月の厳冬期
・全層雪崩:気温が上昇する春先の融雪期
雪は積もっていくと密度が大きくなり、固くしまった雪になっていきます。この古い雪の層の上に、新しい雪が積もり、異なる雪質の層ができあがります。このような場所で、新雪の部分(表層)が雪崩(なだ)れるのが、「表層雪崩」です。
(左)異なる雪質が積み重なった層 (右)雪崩によって堆積した雪「デブリ」
デブリは漫画「BLUE MOMENT」第2巻でも登場しています。
【表層雪崩が発生しやすい条件】
・気温が低く、すでにかなりの積雪がある上に、短期間に多量の降雪があったとき
・急斜面、特に雪庇(せっぴ)や吹きだまりができている斜面 ※雪庇(せっぴ):山の尾根からの雪の張り出し
・0度以下の気温が続き、吹雪や強風がともなうとき
このような条件&斜面が30度程度の場所で発生しやすいと言われています。
2.3「表層雪崩」と「南岸低気圧」
では、「南岸低気圧」による表層雪崩の発生した事例をみていきましょう。
2017年3月27日 午前8時43分、栃木県那須町の那須温泉ファミリースキー場付近の山岳域において表層雪崩が発生し、高校生ら8名が犠牲となりました。亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
「那須」は関東地方の栃木県北部に位置し、那須連山での登山をはじめ、天皇・皇族の別荘地である御用邸に代表される、温泉のある避暑地として人気のエリアです。しかし、冬季の様相はまったく異なります。「豪雪地帯」に指定されているほど、雪の多い地域なのです。
気象研究所によると、「那須で雪が降る気圧配置パターンは、西高東低の気圧配置が63%、低気圧が30%であり、いずれも降雪時間が長いほど大雪になるという特徴がみられる」そうです。では、この実際の天気図をみてみましょう。
(左)2017年3月26日 21時地上天気図 (右)2017年3月27日 9時地上天気図 那須連山の位置をみどり三角で、風向を青三角で示します。
26日21時:日本の南を進んできた南岸低気圧に向かって、那須では北北西の風が吹いていました。
27日9時 :この低気圧は※閉塞段階に入り、日本の東へ抜けつつありますが、新たな低気圧が千葉県の東に発生。
※閉塞段階:温暖前線(赤線)に寒冷前線(青線)が追いついた状態のこと。低気圧の中心付近まで寒気が侵入していることを示します。
実際の地上観測データで比べてみると…
(左)2017年3月26日:降雪も積雪も観測がありませんでした。
(右)2017年3月27日:午前2時に雪が降り始め、10時まで続いています。積雪量が急激に増えていますね。
今回の表層雪崩は、閉塞段階の南岸低気圧とその西側で発達した低気圧が関東の南東海上を通過しており、これら二つの雲が一体化した雲システムが那須に大雪をもたらしました。この影響で急激に積雪量が増え、表層雪崩が発生する一因になったようです。
3.雪とともに~雪のめぐみ~
前回「南岸低気圧」と2回にわたって、大雪とその気象災害についてみてきました。
その一方、雪のめぐみを私たちは利用してきました。大雪がもたらす豊富な雪融け水は、田畑を潤し、水力発電にも利用されています。
そして、冬の貴重な観光資源にもなり、良質なパウダースノーを求めて国内外から多くのスキーヤーが訪れます。
近年、温暖化の影響で降雪量が減り、営業開始が遅れるスキー場やダムの貯水量減少など、さまざまな影響が出はじめています。
雪のめぐみに感謝しつつ、天気予報を活用して、安全に雪とつきあっていきたいですね。
※ほかにもドラマ・漫画の「ブルーモーメント」に登場する気象現象をいろいろ紹介しています!
【参考文献】
・雪崩発生のメカニズム 防災科学研究所 雪氷防災研究センター
・低気圧による降雪が原因の那須岳表層雪崩 現地調査結果と新たな情報の検討
雪氷防災研究部門 主任研究員(兼)気象災害軽減イノベーションセンター センター長補佐・研究推進室長 中村 一樹
あまり雪の降ることのない、首都圏にも大雪をもたらす「南岸低気圧」。2月5日の大雪では各方面に大きな影響が出たのを覚えている方も多いのではないでしょうか。気象予報士試験でも頻出の南岸低気圧について、ご紹介します!
1.「南岸低気圧」とは?
西日本と東日本の太平洋側に雪をもたらす「南岸低気圧」。本州の南側沿岸部を通る低気圧という意味で、「南岸低気圧」といった呼び方をされます。
♪「東京でみる雪はこれが最後ね」と 【歌「なごり雪」(伊勢正三 作詞・作曲)より】
季節外れの雪=春先の雪として歌われている雪も、きっと南岸低気圧による雪なのでしょうね。
雪の東京駅
しかしながら、情緒を楽しむどころではなく、南岸低気圧は時に大雪をもたらし、首都圏では大混乱を引き起こすことがあります。
今年(2024年)の2月5日~6日に通過した南岸低気圧では、大雪の影響で首都高速道路で53時間の通行止めが行われました。
通行止めとなった首都高速道路
このような「南岸低気圧」の特徴として、気象庁でも「予報が難しい現象(太平洋側の大雪)」と位置づけられています。
では、なぜ予報が難しいのでしょうか?今回はこの2月5日~6日の南岸低気圧をもとに検証してみたいと思います。
2.雪それとも雨?予報担当者泣かせの低気圧
2.1 南岸低気圧のコース
雪か雨かを決める要因として、従来より南岸低気圧の進むコースが用いられてきました。伊豆諸島・八丈島(東京・竹芝より約290km)より北側を通るコースでは「雨」、南側を通るコースでは「雪」になりやすいと言われてきました。
低気圧は進んでいく方向へ、暖かく湿った空気を運び、そして低気圧の後ろ側では、冷たく乾いた空気がおりてきます。この暖かい空気と冷たい空気がぶつかるところが、前線です。
一般に前線の北側で雲が広がりますが、八丈島の北側を通った場合、低気圧から暖かく湿った空気が入り雨になりやすいのです。
八丈島の北側を通るコースのイメージ図:暖かく湿った空気が入り雨 (地図:国土地理院 地理院地図GSI Maps)
また、八丈島の南を通るコースでは、低気圧に向かっておりてくる冷たく乾いた空気の影響で雪になるというわけです。
八丈島の南側を通るコースのイメージ図:低気圧北側の冷たく乾いた空気の影響で雪 (地図:国土地理院 地理院地図GSI Maps)
そして、低気圧のコースが陸地から離れすぎていると雨雲がかからず、陸地では雨も雪も降らないことになります。
では、2024年2月5日~6日の南岸低気圧はどうだったのでしょうか?
※以下の天気図には、わかりやすくするために八丈島の位置を黄色のマルで示しています。
2024年2月5日 18時の天気図:低気圧の中心(黄色マル)は八丈島の北西方向にあります。(出典:気象庁HP「過去の天気図」)
2024年2月5日 21時の天気図:低気圧の中心(黄色マル)は八丈島のすぐ北側を通過しています。(出典:気象庁HP「過去の天気図」)
八丈島の北側コースを通ったなら、コース的には雨のはず…。しかしながら、実際は大雪警報が発表されるほどの雪となりました。
このように、近年の研究で雪になるのは、低気圧のコースだけでは決め手とならず、ほかの要因もあることがわかってきました。
2.2 上空の気温
日本で降る雨の多くは、上空で氷の結晶となってから、落ちてくる途中で融けて雨となったもの。
関東地方平野部での雪の目安とされるのは、上空1500m付近の気温が-4℃。しかし、地表付近の気温が高ければ、落ちてくる途中で融けてしまうので雪にはならず、雨になってしまいます。南岸低気圧は暖かく湿った空気を運んでくるので、地表付近は氷点下にはなりにくいのですね。
地表付近に暖かい空気があれば、雨になってしまいます。※落ちてくる雨粒の形は、丸ではなく空気抵抗でおまんじゅう型です。
地表付近で雪として降ってくるためには、地表付近も低い気温である必要があります。
2.3 大雪の立役者 滞留寒気の存在
関東平野は日本で最大の平野で、北側は日光連山、西側に箱根山という地形。この山地が空気の通り道をブロックするのです。
この地形と雨などの影響で、関東平野の内陸部に冷たい空気の層ができるのですが、この冷たい空気の層が大雪の立役者。
まず、はじめに低気圧の接近で雨雲が内陸部までかかると、上空では雪になって降りはじめます。雪は落下しながら、融けて雨に。
雪(固体)は、雨(液体)になるときに周囲から熱を奪います。夏の暑い日に打ち水をすると涼しくなりますよね。これと同じ原理です。
打ち水
そして、本格的に雨が降り始めると、雨自体が冷やす効果で冷たい空気の層=滞留寒気(ルビ:たいりゅうかんき)が完成するのです。
冷たい空気は重いので、関東山地を超えることができず、地表付近に溜まっていきます。この冷たい空気の層の厚さは数百メートル程度。
背が高い積乱雲が到達する高さは約1万メートルなので、数百メートルは地面からほんの少しの高さですよね。
この冷たい空気の層が、北~北西の風で内陸部(関東地方北部)から関東地方南部へと運ばれてくるのです。
滞留寒気が関東地方南部に流れこむイメージ図 (地図:国土地理院 地理院地図GSI Maps)
すると、関東地方南部でも地表付近の気温が下がり、雪が融けずに降ってくるというわけなのです。
【ちょっとレベルアップ:実際の高層天気図&観測データを読んでみよう!】
2024年2月5日 21時(日本時間)の高層天気図です。(出典:気象の専門家向け資料集)
気象予報の現場では、このような高層天気図も使います。
【上図】500hPa:高度約5500m付近の天気図です。水色のラインが偏西風が強い場所(強風軸)、赤丸が地上低気圧の位置を示しています。
低気圧の真上に強風軸がきているので、閉塞をはじめていると推測されます。
【下図】850hPa:高度約1500m付近の気温、700hPa:高度約3000m付近の上昇流域(斜線部分)、下降流域(白色部分)を示しています。
等温線は3℃ごとにひかれているので、目安で-3℃線を水色にしています。
低気圧の進行方向の前面で暖気移流&上昇流域、後面で寒気移流&下降流域がはっきり表れていますね。
2024年2月5日 東京の観測データです。(出典:気象庁過去の気象データ検索)
地上で実際に観測された気象データの抜粋です。2月5日14時には、風向が北北西に変わり、15時から雪が降り始めたことがわかります。やはり北~北西の風で冷たい空気(滞留寒気)が関東地方南部におりてきていたのですね!
ただ、このように雪となるかは、地表付近の空気が乾燥していること、雨雲のかかり方など、さまざまな条件がそろう必要があり、気象庁の予報官でも予報が難しい現象なのですね。
3.南岸低気圧による気象災害
南岸低気圧は暖かい海上でできる低気圧のため、大量の水蒸気を連れてきます。
この水蒸気が雪や雨の元となるのですが、南岸低気圧で降る雪は0℃前後と雪が降る気温としては高めなのです。
このため、雪に含まれている水分が多く、べたっとした重い雪です。このような雪を「湿雪(ルビ:しっせつ)」と言います。
水分が少なければ、さらさらの乾いた雪(乾雪)=パウダースノーとなります。
雪だるまなどの雪遊びには持ってこいの湿雪ですが…
この湿雪、水分が多いので電線等にくっつてしまうことがあります。雪の重みで電線が切れる、ショートするなどで停電を発生させるような気象災害にもつながるのです。2024年2月5日~6日の大雪の影響では、首都圏で約3170戸が停電しています。
また、湿雪は融けやすいのも特徴です。低気圧が日本の東へ抜けて、雲がなくなると翌朝は再び氷点下まで下がることも。朝に「ブルーモーメント」が見えるときは、このような放射冷却が強いときです。
すると、水が再び凍って氷となり、路面がアイスバーン状態に。車のスリップ事故にもつながります。
車を運転される方はハンドルを取られてヒヤリとした経験があるかも
普段雪が降らない地域に住んでいる方にとっては、慣れない雪ですべって転倒したり、ケガにもつながる侮れない雪なのです。
今度「南岸低気圧」というワードを天気予報などで耳にしたら、こまめに情報をチェックの上、時間に余裕をもって雪に備えたいですね!
学科一般
「絶対温度」は摂氏(せっし)0℃を273K とするものです これ、シャルルの法則に関連があります むちゃくちゃ雑に説明すると、圧力一定として気体を冷やすと 摂氏マイナス273℃で、気体の分子の活動がなくなる(理論上)という意味で、このマイナス273℃を「0K」=絶対0度と定めたわけです。
私たちが普通使う温度は摂氏(せっし)で この絶対温度と互換性があります 摂氏0℃=273K。10℃だったら、273Kに10を足した283Kになるのです。
気象予報士試験で出てくる計算で温度を使うときは 絶対温度を使うことがほとんどです(物理とかもそうですね) (一方で、物理とほとんど関係ない計算では摂氏をつかうこともたまにあります 今後出てくるフェーン現象など) 予報士試験では摂氏の温度も絶対温度も両方出てきますから その使い分けも意識しながら勉強していきましょう!
寒気と暖気の境界線です。前線の南側が基本的に暖かく、北側が冷たいですよね 多くの場合、発達の過程で、低気圧は前線を伴います。温暖前線 :低気圧の前面で寒気の上を暖気が上昇していきます。 寒冷前線 :高気圧の後面で暖気があるところに寒気が潜り込みます (*なんでもそうですが、登るほうが下るよりしんどいですよねなので、暖気はゆっくり登り、寒気の下降は早いです…)
ちょっと考えてみましょう
ある飽和していない空気があって
ある部分を切り取ると水分が4つ入っているとしましょう
ここで
先ほどと同体積の空気塊を
(同体積ですから同じように水分が4つずつ入っているとします)
2つチョイスして
片方は温め、片方を冷やしたとします
冷やした方は体積が小さくなります
飽和ですが凝結させないこととして
水分は4つぎりぎり保持したままにしましょう
ここで、
・冷やして小さくなった空気塊
・もともとの空気塊
・温めて大きくなった空気塊
を比べます
それぞれ水分4つを含み
均等に配置されているとします
一部を取り出すのはめんどくさいので
一番小さい空気塊(ギリギリ水分4つ分)の体積を基準にしましょう
・もともとの空気塊
・温めて大きくなった空気塊
それぞれ、一番小さい空気塊と同じだけの体積を取り出して比べましょう
・冷たい空気塊 水分4つがパンパン
・もともとの空気塊 水分2つか、2つ半
・温めて大きい空気塊 水分1つか1つ半
これでわかりますね
冷たい空気は密度が大きい=含まれている水分が多い=重い
その次にもともとの空気
暖かい空気は密度が小さく=含まれている水分が少ない=軽い
このように
密度を考えるときは体積を共通にしてあげて考えてあげると
わかりやすくなりますね
まず、春と秋を説明する前に夏と冬の説明から
夏は「夏の太平洋高気圧」が日本列島を覆って支配します
晴れて暑い日が続きますね
逆に冬は気温のめっちゃ低い「シベリア高気圧」が支配するため冬は寒いのです
特に冬型の気圧配置になったときは
縦縞の等圧線に沿って北西風によって寒気が入ってきて、
日本海側を中心に雪を降らせます
夏と冬の中間に「春」と「秋」があるわけですが、
言ってみれば、春と秋は
夏の横綱である太平洋高気圧と
冬の横綱であるシベリア高気圧が
日本の上空で拮抗、がっぷり四つに組んでいる状態です
気象学的に言えば、
夏の暖かい空気と冬の冷たい空気の境目が日本付近にあります
日本より北の方では寒気が優勢
日本より南の方では暖気が優勢ということです
さて、地球というのは素晴らしくて
私達が地球上で住みやすくするために、温度調節をしてくれています
赤道付近に太陽のエネルギーが集中しやすいので熱くなります
一方北極や南極に近い方は太陽のエネルギーがあまりないので寒いです
で、赤道との温度差が生まれます
その温度差を
大気や海流などの動きで混ぜることによって、
地球上をできるだけ同じような気温にしようとしてるわけです
最近のわかりやすい例で言えば「サーキュレーター」
あるいは、お風呂を入れて数時間放っておけば
上の方が熱くて、下のほうがぬるく冷たくなるのですが
それを風呂おけで混ぜるようなイメージですね
そしてもう一つ温度調節をしてくれるものがあります
それが「低気圧」です
日本列島は、春や秋には
北と南で温度差ができやすいのですが、
その暖かい空気と冷たい空気の境目に「前線」ができます
その境目の温度差が大きくなると
低気圧が発生して、暖気を北に、寒気を南に流して混ぜることによって
「温度差」を解消してくれるんです
その仕事をした「低気圧」が東に遠ざかったあと
「高気圧」がやってくるイメージで考えてください
で、高気圧がやってくると南の方に熱が溜まりやすくなるので
また日本付近を境に温度差が生まれる
するとその温度差を解消するために低気圧が発生してやってくる…
春と秋はその繰り返しなのです
Q< 温度風>
高度間の地衡風の鉛直シアで,実際に吹いている風ではない。
(北半球では)温度風ベクトルの右側は暖気,左側は寒域となる。
<温度移流>
左図
この温度風に挟まれた,三角形内部の熱エネルギー(暖気)が 高圧から低圧へ吸い出されて,実際に移動しているという理解で良いのでしょうか?温度風は吹いていない風なのに,熱の移動が起こるのかな?と疑問を感じました。
A温度風ー異なる高度間の地衡風の鉛直シア風の吹き方は地衡風に似ている。
地衡風ー高度を低い方を左に見て等高度線(等圧線)に平行に吹く
温度風ー高度・温度の低い方を左に見て等高度線(等温線)に平行に吹く
→なので、 (北半球では)温度風ベクトルの右側は暖気,左側は寒域となります。また、温度風自体は実際に吹いているわけではないのですが 風のベクトルで表すことができます。
温度移流についてですが、シンプルに考えましょう 詳細は添付した資料を見ていただきたいのですが、 温度風を考えたときに 暖気移流は、「高度が違う2つの風のベクトル」が それぞれ両方とも、暖気域側から寒気域側に向けてまたいで吹いています 寒気移流は、「高度が違う2つの風のベクトル」が それぞれ両方とも、寒気域側から暖気域側に向けてまたいで吹いています (注:温度風は、暖気域と低温域の間、等温線に平行に吹きます) 単純に暖かい方から寒い方、寒い方から暖かい方に吹いているだけのことです 図をみてしっかり確認してみてください。
蒸気霧=蒸発霧、滑昇霧=上昇霧 です。たしかにテキストによって言い方が異なりますよね。
気象予報士の試験では横方向が「水平」。そして地上から宇宙にかけての方向などを「鉛直(えんちょく)」という言葉を使います。
平らな面に並行な状況を「水平」と言います。
高気圧、低気圧や台風などの気象現象の大きさ(スケール)を「台風の水平スケールは1,000km」みたいな感じで使います。
鉛直の意味は「糸に重りを垂らした時の糸の方向。つまりは重力」になります。
暖かい空気が上に上り、冷たい空気が下降する「対流」という現象がこのあとたくさん出てきますが、この上下の運動や現象の状況を
「鉛直」方向の運動と言ったりもします。
飽和混合比とは、水蒸気分圧が飽和水蒸気圧に達して、水蒸気が飽和したときの混合比の
ことです。簡単に言うと、湿潤空気が飽和している時の混合比が飽和混合比です。
1 ㎏の乾燥空気に対して何gの水蒸気を含むことができるかを示します。
式で表すと
混合比=水蒸気質量[g]/乾燥空気質量[㎏]ですが、
飽和混合比=飽和水蒸気質量[g]/乾燥空気質量[㎏]となります。
近似式では、
混合比=0.622×(水蒸気の分圧/湿潤空気塊の圧力)
飽和混合比=0.622×(飽和水蒸気の分圧/湿潤空気塊の圧力)
気温が同じなら・・・
気圧が高い方が、飽和混合比は低くなる。
気圧が低い方が、飽和混合比は高くなる。
気圧が同じなら・・・
気温が高い方が、飽和混合比は高くなる。
気温が低い方が、飽和混合比は低くなる。
さらに詳しい内容は、エマグラムを学ぶときに説明します。エマグラムで考えたほうが分かりやすいと思います。
学科専門
ゾンデ観測については「静力学平衡」と「気体の状態方程式」を加味した「層厚」の式をつかって計算します
気圧、気温、湿度のデータから高度を出しますが、GPSでゾンデの高度が追跡できますので、さきほどとは逆のプロセスで「気圧」を割り出すわけです。
まず…
バイアスとは、「偏り(かたより)」だったり「誤差」という意味です
さて
観測値をいろいろな方程式をつかって解析し
予報にする「数値予報」において、さまざまな「バイアス(誤差)」が発生します
その「バイアス(誤差)には
・地形データの粗さ
・大気の性質である「カオス」
・系統的誤差
以上3つがあります
さて「数値予報」ですが
・計算によるデータ(数字)の羅列であること
・「誤差」を含むため、そのまんまでは使えない
それを補正し、私達がみる天気予報に翻訳(データ出力)するために
いろいろな統計手法を使います
その補正のやり方の主なものが2つ
・カルマンフィルター
・ニューラルネットワーク
カルマンフィルターは
「数値予報の予想値」を参考に、「実況値」との間に統計的関係を見出し
その式に数値予報のデータを入れることで天気予報に翻訳します
式に用いる系数を直近の観測値で随時更新するという学習能力が付いたので比較的短い期間で予報が安定します
その翻訳の過程で、地形データによるものなど一部のバイアス(誤差)を修正できるのです
数値予報モデルの
局地モデル(LFM)
メソモデル(MSM)
全球モデル(GSM)ですが
メソモデルと全球モデルについては見ることができます
有名なのはsupercweatherです。
パソコン版では右下にメニューがあって
局地(LFM)
詳細(メソモデルMSM)
広域(全球モデルGSM)に対応しています
気象ドップラーレーダーとウインドプロファイラですね。
両方とも電波飛ばして観測するわけですから「兄弟」「いとこ」みたいな関係です
どう違うかと言うと
レーダーはパラボラをくるくる回しながら電波を、水平〜やや少し上に向けて飛ばして、降水強度や降水粒子の動きを観測します
降水粒子の動き次第で周波数が変わるので(これがドップラー効果ですね)
それで風向風速も観測できるわけです
白い丸いドームの中にこんなパラボラが入っています
一方ウインドプロファイラは電波を上に向けて飛ばします
気象レーダーと違うのは「風の流れ」を直接観測できること
大気中の風の乱れなどによって散乱されて戻ってくる電波を受信・処理することで、
上空の風向・風速を測定します。(5本の電波の発射で立体的な風の動きがわかるそうですこれも周波数の違いで測定できます ドップラー効果ですね)
また降水があるときは雨粒の動きによって風の流れがわかるので
同じく風向風速がわかるわけです
☆1 右側の強風軸には、気圧の谷もある。 ☆2 左側の凸の部分では「強風軸の北側の暗域が少ないので強風軸はなく、気圧の谷のみである。」という解釈でよろしいでしょうか?
まず、復習も兼ねて…
上空の高い所には「偏西風」が吹いています
高緯度の気温が低いのと
低緯度の気温が高いところの温度差が原因で吹きます
その一番強いところが「強風軸」(=ジェット気流)になります
その強風軸は赤道と平行に「まっすぐ」吹いたり
くねくねと蛇行したりします
なぜ蛇行するかと言うと
低緯度は太陽があたるので気温が高くなり
高緯度は太陽のエネルギーが少なくて気温が低くなります
その差が大きくなると「不安定」になるので
その温度差を解消するためにくねくね「蛇行」して
高緯度の冷たい空気を低緯度側の暖かい方へ
低緯度の暖かい空気を高緯度の寒い方へ流して、混ぜてあげて
温度差をなくすわけです
お風呂にはいって風呂の底と風呂の上で温度差があるときに
手をバタバタさせて混ぜると思うんですが、
あの「バタバタ」が蛇行です
強風軸は
上空の「気圧の谷=トラフ」(上空の低気圧)と
上空の「気圧の尾根=リッジ」(上空の高気圧)とも対応しています
くねくねの蛇行で
凹んでいるのが気圧の谷
とんがってるのが気圧の尾根です
さて、水蒸気画像の「暗域」をつかって
「強風軸」の(だいたい)の解析ができるということを習いました
黄色い線で描いたのが(だいたいの)強風軸です
ジェット気流は地球を一周するので、ながーいです
気圧の谷のところも暗域がありますので
当然そこにも「強風軸」あります!!
ただ、右側よりも暗域がはっきりしていないので
正確な場所かどうかは保証できないです
また右側のは
凹んで上空の流れから切り離されそうです
これが「寒冷渦」になったりします
実技試験では
上空の天気図などを見せながら
ある範囲を決めて強風軸を書かせます
おそらく問題になるのはわかりやすい右側のほうかなとは思います
実技
「気圧の『鞍部(あんぶ)』」は
高気圧と高気圧の間の中途半端なところです
馬にまたがる時に座る「鞍(くら)」を思い出せばいいですかね
広く見れば大きな高気圧におおわれていますが
細かく見ると高気圧と高気圧の間で中途半端
これが「鞍部」といえます
この状態は春とか秋とかの天気が安定して穏やかな日が続くときの
「帯状の高気圧」におおわれた際にできやすいです
ちょうど今月4日にわかりやすい天気図となっていました
高圧部を色付けしています
日本列島の東西に高気圧があり
西日本がちょうど「鞍部」になっています
また渤海の直ぐ西の大陸にある高気圧と
黄海の高気圧の間にも「鞍部」がありますね
日本列島を東西に切って断面図を作ってみましたが
「鞍部」がよくわかります
天気予報では「鞍部」を無視することがほとんどです
でも鞍部にかかると
やはり天気の崩れがなくっても薄雲が広がりやすくなったりします
試験では「鞍部」と書かせる問題は知らないな…
もちろん知っていれば便利です
またこういった鞍部の知識があると
「実技試験」で有利です
添付の天気図で
西日本にかかる鞍部の南
等圧線が盛り上がっていて、
気圧の谷のようになっています
鞍部があるときはそれを意識しながら等圧線を書いたりすると
加点されます
JPCZは、冬の日本海で寒気の吹き出しに伴って形成される水平スケールが1,000km程度の収束帯のことで、この収束帯に伴う帯状の雲域を「帯状雲」と呼びます。強い冬型の気圧配置や上空の寒気が流れ込む時に、この収束帯付近で対流雲が組織的に発達し、日本海側の地域では局地的に大雪となることがあります。
JPCZが発生する要因としては、朝鮮半島北部に位置する長白山脈(最高峰:白頭山2,744m)の存在が大きく影響しています。冬型の気圧配置が強まると、大陸から冷たい風が日本海に流れ込みますが、この冷たい風は、長白山脈によって、いったん二分されます。そして、その風下である日本海で再び合流し、収束帯(雪雲が発達しやすいライン)が形成され、雪雲が発達しやすくなります。この領域が南下し陸地にかかると、その場所では大雪となります。
JPCZの上陸地点は、気圧配置に対応して東西に移動するため、決まった位置というのはなく、東北南部から山陰までの広い範囲に影響を及ぼします。また、寒気が非常に強い場合は、風上の山地を超えてJPCZが流入することがあり、太平洋側でも大雪になることがあります。
このように言うと、等圧線が混み合う山雪型のほうがJPCZが多く発生しそうですが、山雪型の場合は、等圧線が南北にのびるため、風向きは北西~北になることが多いです。そうなると、長白山脈で分流した風が収束する場所が朝鮮半島であったり、朝鮮半島のすぐ東の海上になるため、十分な潜熱や顕熱の供給を受けることができず、JPCZが形成されにくいです。
そもそも、JPCZは下層にできる気圧の谷なので、日本海に気圧の谷ができやすい里雪型のほうが発生頻度は多くなります。
なので、端的にまとめると、山雪型でもJPCZが発生しますが、頻度は圧倒的に里雪型のときのほうが多くなります。
起きやすいのは下層と上・中層の風の鉛直シアが大きいときです
季節から言うと春から夏にかけてが多いようです
日本ではあまり発生しないですが
北米でのスーパーセル型の竜巻はよくニュースで見かけますよね
切離低気圧とは、等高度線の流れから切り離され、閉じた等高度線で表示された低気圧で、
寒冷低気圧とも呼ばれることもあります
切離低気圧は上空の偏西風の蛇行が大きくなる過程で
(蛇行が激しくなりすぎて)切り離されて取り残された低気圧です
なので、上空の天気図ではあきらかにわかりますが
地上の低気圧では「現れない」というよりは、
・「表現されないこともある」
・「表現されたとしても
地上天気図上では切離低気圧かどうかわからない」
というのがきちんとした正解だと思います
その理由ですが
暖気と寒気で構成される“温帯低気圧”とちがって、
切離低気圧は偏西風の蛇行から切り離されてできるので
・寒気でできています
・また一番寒気が強いのは上空です
・ただ、寒気でできているがゆえに
密度が大きく「層厚」が小さいです
→よって上層よりも下層に行くに従って、低気圧が不明瞭になるのです
なので、上空で渦を巻いても、確かに地上天気図では現れないときもあります
ただ寒気が非常に強い場合は地上低気圧として表現されるときがあります
ただし寒気と暖気の境である前線は絶対描かれず
「ぽつん」と出てきます
こういうときが、予報士の腕の見せ所になります